中卒で公務員になれる?目指せる職種やポイントを解説

中卒者が社会的に安定した職業を目指すため、意識されることが多い職業のひとつに公務員があります。 この記事では、中卒の人が公務員になれるかどうかについて解説し、具体的にどのような職種を目指せるかや、そのポイントを説明します。

中卒で公務員になれる?

公務員は収入が安定していて、福利厚生も充実しているため、学生の就職先として根強い人気があります。

「高校や大学を卒業していないと、公務員にはなれない」と思われがちですが、一部の職種を除き、学歴は不問です。

そのため、中卒でも公務員になることができます。

公務員の種類

公務員は大きく分けて国家公務員と地方公務員の2種類に分類されます。

国家公務員は中央省庁や国の機関で働き、政策の立案や行政の運営、特定分野の専門職などに従事します。代表的な職種には、総務省や警察庁、法務省などの職員があります。

一方、地方公務員は都道府県や市町村の自治体で働き、地域住民に直接サービスを提供する役割を担います。役所の窓口業務や福祉サービス、教育関連の職種など、多岐にわたる業務を担当します。

職種によって、受けるべき公務員試験も異なるため、よく確認するようにしましょう。

中卒から目指せる公務員

公務員になるには、公務員採用試験を受ける必要があります。

国家公務員採用試験には、総合職試験、一般職試験、専門職試験があり、それぞれ大卒程度、高卒程度と分かれています。

■国家公務員の採用試験、受験資格

分類 試験内容の目安 受験資格
総合職 院卒 30歳未満で大学院修了、大学院修了見込み
大卒程度 21~29歳
※大学卒業、卒業見込みなら21歳未満で受験可
一般職 大卒程度 21~29歳
※大学、短大、高専の卒業、卒業見込みなら21歳未満で受験可
高卒程度 高校卒業見込み、卒業後2年以内
中学卒業後2年以上5年未満※中卒でも受験可
社会人
(係員級)
20歳以上40歳未満
※高卒程度試験の受験資格者を除く
専門職 大卒程度試験 試験によって受験資格が異なる
高卒程度試験 試験によって受験資格が異なる

高卒でも大卒程度の試験を受けることは可能ですし、中卒でも高卒程度の試験を受けることはできます。

大卒程度、高卒程度という分類は、それくらいの能力が求められるという、試験の難易度の目安と考えましょう。

例えば、専門職試験の難易度は高卒程度ですが、合格し採用されれば、中卒でも税務職員、皇宮護衛官、刑務官、入国警備官として働くことができます。

また、地方公務員(東京都の場合)の採用試験と受験資格は下表の通りです。

■東京都職員の採用試験、受験資格

分類 試験内容の目安 受験資格
I類A 大学院卒程度 24~31歳
I類B 大卒程度 22~29歳
※試験区分(職種)によっては要資格・免許
「獣医」「薬剤」は24歳~29歳で要免許
II類 短大卒程度 20~25歳
※試験区分(職種)によっては要資格・免許(取得見込みを含む)
III類 高卒程度 18~21歳

国家公務員の場合も、地方公務員の場合も、年齢要件はありますが、学歴は問われないことがほとんどです。

したがって、相応の学力があり、年齢要件を満たしていれば、中卒からでも公務員を目指すことができます。

なお、中卒から目指せる公務員の種類をまとめると、以下の通りです。

  • 国家公務員の一般職
  • 地方公務員の事務職・技術職
  • 自衛官
  • 警察官
  • 消防士

中卒から公務員になるメリット

中卒から公務員になることには多くのメリットがあります。

中でも特に重要な2つのポイントについて解説します。

安定した職業

公務員は収入が安定した職業として知られています。特に中卒者にとって、この安定性は大きな魅力です。

公務員は景気の変動に左右されにくく、長期にわたって安定した収入を得ることができます。

雇用が守られるため、将来に対する不安なく働き続けることができ、そのため生活設計を立てやすくなります。

さらに、定期的な昇給やボーナス制度があるため、給与が安定しているだけでなく、徐々に増えていくことも期待できます。

また、公務員は一般的に福利厚生が充実しており、健康保険や年金などの社会保障も充実しています。

退職金や年金などの老後の備えも安心です。働き盛りの期間だけでなく、定年後の生活も安定しているため、長期的な視点で見た場合にも極めて魅力的な選択肢となります。

社会的信頼の高さ

公務員は社会的に高い信頼を得られる職業です。

公務員として働くことで、多くの人々からの信頼を集めることができるでしょう。

特に、中卒者にとっては学歴によるハンディキャップを補う重要な要素となります。公務員としての経験を通じて、自分自身の能力や信頼性を証明することができます。

また、公務員の職務は社会の安定と発展に貢献する内容が多く、そのために社会的使命感を感じながら働くことができます。

例えば、行政サービスの提供や公共の安全を守る役割など、社会の基盤を支える重要な役割を担うことになります。

これにより、自分の仕事が社会に対して直接的な貢献をしているという満足感を得ることができるでしょう。

中卒から公務員になるデメリット

中卒から公務員を目指す場合、いくつかのデメリットがあります。

高収入は期待できない

中卒から公務員になるデメリットのひとつは、高収入は期待できない点です。

公務員の初任給は学歴や役職により異なりますが、中卒の場合は大卒に比べて給料が低い傾向があります。実際の給料は地域や職種によって異なりますが、大卒と比較すると月収や年収に差が出ることが多いです。

また、公務員には昇進制度がありますが、中卒では昇進のチャンスが限られることがあります。特に管理職や専門職への昇進は学歴が重視されることがあり、その際に収入の差がさらに広がることも考えられます。

体力が必要な場合もある

特定の職種では、体力が重要となる場合があります。例えば、自衛官や消防士、警察官などの職種では日々の業務や訓練に体力が求められます。

また、業務自体も体力を消費する場合があり、特に災害時や緊急対応が求められる職種では長時間の勤務や夜間の出動が日常的となることもあります。このような状況に対応するためには、日頃からの健康管理や体力維持が欠かせません。

中卒で公務員を目指す際には、自分の体力や健康状態をよく理解し、適切な職種を選ぶことが大切です。

公務員試験の合格倍率

国家公務員一般職試験(高卒者試験)の実施状況は、下表の通りです。

年度 申込者数(A) 1次試験受験者数(B) 最終合格者数(C) 倍率(A/C) 実質倍率(B/C)
2024
(令和6)
9,681人 8,362人 3,132人 3.1倍 2.7倍
2023(令和5) 9,889人 8,459人 3,407人 3.0倍 2.5倍
2022(令和4) 1万1,191人 9,624人 3,333人 3.5倍 2.9倍

出典:人事院「国家公務員採用一般試験(高卒者試験)区分別実施状況」(2022年度~2024年度)

また、地方公務員(東京都)のⅢ類(高卒程度)採用試験の状況は、下表の通りです。

年度 申込者数(A) 1次試験受験者数(B) 最終合格者数(C) 倍率(A/C) 実質倍率(B/C)
2024
(令和6)
851人 667人 217人 3.9倍 3.1倍
2023(令和5) 1,084人 778人 190人 5.7倍 4.1倍
2022(令和4) 1,244人 917人 229人 5.4倍 4.0倍

出典:東京都「職員採用試験(選考)実施状況」(令和4年度~6年度)

年によって差があるものの、国家公務委員試験より地方公務員試験の方が、倍率が高いことがわかります。

地方公務員試験の採用状況は、自治体によって異なるため、各自治体のWebサイト等で確認してください。

中卒から公務員を目指すためのポイント

中卒から公務員を目指すためには、以下の3つのポイントを押さえておきましょう。

年齢制限を確認する

中卒から公務員を目指す際に最初に確認すべきポイントは、年齢制限についてです。

公務員試験は学歴による制限はほとんどありませんが、年齢による制限があります。例えば、国家公務員一般職の大卒程度試験の場合、21~29歳という年齢制限があります。

自身が受験できる年齢かを確認しましょう。

ただし、特定の条件を満たすことで、年齢制限が緩和される場合もあるため、公務員試験の実施要項をよく確認するようにしましょう。

公務員試験の準備をする

公務員試験に合格するためには、しっかりとした準備が必要です。

国家公務員、地方公務員、どちらの試験でも「一般知識」と「一般知能」の問題が出題されます。一般知識では、高校で学習する内容が出題されるため、高校の学習内容を理解しておく必要があります。

高卒認定試験を受ける

公務員試験に合格するためには、どちらにせよ「高卒程度の学力」が必要になります。

そのため、高卒認定試験を受けることは、公務員試験の準備にもなるため、とても有効です。

高卒認定試験に合格すれば、専門学校や大学の受験資格も得ることができます。そのため、大学に進学し、国家公務員の総合職を目指すという道も開けます。

高卒認定試験の合格は、公務員への道を大きく広げるステップとなるでしょう。

なお、高卒程度の学力を得るためには、通信制高校へ通うという選択肢もあります。

通信制高校については、こちらの記事「通信制高校とは?カリキュラムや全日制との違いをわかりやすく解説!」も参考にしてください。

よくある質問

中卒から公務員を目指す際の、よくある質問をまとめました。

Q.中卒の公務員の給料はいくら?

A.国家公務員の給与は、毎年俸給表で定められています。

内閣人事局「国家公務員の給与 令和7年版」によると、最も低い俸給は、月18万3,500円です。

また、総務省「令和5年地方公務員給与の実態」によると、地方公務員一般職(高校卒)の1年目の平均給料月額は、15万7,534円です。

Q.公務員が学歴不問なのはなぜ?

A.公務員は、公共性・公平性が求められるため、採用の際に学歴を評価の参考にすることが禁止されています。

ただし、職種によっては大学を卒業することが必須な場合もあるため注意が必要です。

例えば、教師になりたい場合は、大学で教職課程を修了し、教員資格認定試験に合格する必要があります。

Q.中卒で公務員のゴミ収集員になれる?

A.ゴミ収集員は地方自治体が運営する職種であり、学歴不問で募集を行っている場合があります。

ただし、自治体によっては民間企業に委託している場合もあります。自治体によって異なるため、各自治体に確認してください。

まとめ

中卒から公務員を目指すことは十分可能です。

公務員といってもさまざまな職種があり、国家公務員の一般職や地方公務員の事務職・技術職、自衛官、警察官、消防士などがあります。

公務員試験は、学歴による制限はありませんが、年齢による制限があるため、注意が必要です。

また、いずれの職種も、高卒程度の学力は必要となるため、しっかりと準備をするようにしましょう。