不登校でもテストを受けた方がいい?高校受験との関係と受ける方法

中学生の不登校で、保護者が抱く大きな不安の要素のひとつが「高校進学をどうするか」です。成績をつけてもらうには授業はともかくテストぐらいは受けた方がいいのでは、と感じる保護者も多いでしょう。 この記事では、不登校の中学生とテストの関係、テストを受ける方法や注意すべきポイントについて解説します。

中学生がテストを受けなかったらどうなる?

まず知っておくべきことは、テストを受けなかったら子供は将来どうなるのか、とりわけ高校受験にどう影響するのかということです。

そこから、テストを受ける具体的な意義がわかってきます。まずはテストを受けないことが及ぼす影響を知り、じっくり話し合うときに必要な情報として、しっかり把握しておきましょう。

中学校は卒業できる

結論から言うと、中学校は入学していれば1日も登校していなくても卒業はできます。というのも、出席日数は中学校での進級や卒業のための必須条件ではないからです。

なかには「義務教育だから卒業できる」という方もいますが、ここでいう義務とは「子供を学校に通えるようにする保護者の義務」なので、子供が「学校に行く義務」ではありません。

出席日数の少ない子供の進級や卒業の判断は、中学校の校長が判断します。学校はむしろ、さまざまな事情があっても進級・卒業させずにおくことは子供の将来にとって大きなマイナスであると考えるため、不登校を理由に卒業できないことはまずありません

進学できる高校の選択肢が少なくなる

卒業は問題ないとすれば、不登校で次に心配になるのは「高校に進学できるか」です。現在は公立・私立を問わず通信制を設ける高校も増えてきました。なかには入学にあたり中学での成績が一切審査されない学校もありますが、多くの学校では成績も審査の対象となります。

審査されるのはテスト結果だけではありませんが、テストは成績を示す大きな要因です。テストを受けないでいると成績がつかず、進学できる高校の選択肢が狭まる上、高校以降の進学にも少なからず影響は出ます。より具体的に挙げられる問題点は、次の2つです。

自分の正確な学力レベルがわからなくなる

テストを受けずにいると、勉強していてもいなくても自分がどのくらいの学力を備えているかはわかりません。どれくらい優れているのか、また学力が不足しているのか、得意な科目な何か、将来どんな道に進めるかといったことを、証明する根拠がないことになります。

直近でいうと、子供がどの高校の学力レベルに合っているかがわからないことは大きな問題です。進学したい学校を選ぶにも、自分の正確な学力レベルを知る必要があります。定期テストや模擬テストは、進学目標を定めるための重要な道標でもあるのです。

テスト結果は高校入試の選考項目だから

現在の中学校では、次のような観点で授業の様子や課題、活動、テストなどを元に成績がつけられます。

  • ・個別の知識や技能
  • ・思考力や判断力、表現力など
  • ・学びに対する姿勢や人間性など

テストの結果は成績の1項目にすぎませんが、高校によっては選考項目としてかなり重視される場合もあります。不登校で授業を受けておらず、課題も提出していなければ、成績の元になるのはテストに限られるはずです。

少しでも高校進学の選択肢を増やしたい、可能性を上げたいのであれば、テストを受けること、テストのために勉強してより良い成績を得ることは、かなり重要なことだといえます。

テストを受けたくない気持ちに配慮する

保護者が子供の将来を心配して、いくら「テストを受けた方がいい」「テストでいい点をとった方がいい」と言っても、子供にも子供の言い分があるはずです。

これは「学校に行った方がいい」ことと同じように、むしろ子供にとってはわかり切ったことなのかもしれません。テストを受けるようになるためには、そんな「テストを受けたくない」という気持ちにも寄り添う必要があります。

テストを受けたくない3つの理由

子供には子供の社会があり、その社会での立場があります。不登校でいる現状でテスト受けると、子供は次のような不安を抱くのも当然といえるでしょう。

  • ・受けたところでいい点は取れず、それを友達に知られたら恥ずかしい
  • ・テストだけ受けにきたと言われる
  • ・テストを受けるために学校に行き、普段会わない先生や同級生に会いたくない

保護者にとっては、子供の将来の不安に比べれば些細なことかもしれません。しかし、子供にとっては大問題です。まずは理由の是非ではなく、このような理由があるということを受け止め、これからどうすると良いかを一緒に考える必要があります。

結果より受けたという事実が重要

見方を変えると、これまで受けていなかったテストを「受ける」ことは大きな前進といえます。たとえテストがいい点数でなかったとしても、これで成績がつくことは間違いないからです。

点数が思わしくなくても、結果が出たことで自分の学力が明確になります。結果は、これから勉強をどうするかという課題に対する確かな道標です。

テストを受けるという行動をきっかけにして、何かを「始めたい」と感じるかもしれません。それが勉強や、あるジャンルの研究、技術の習得などのいずれにしても、現在の不登校の状態を改善する第一歩になる可能性があります。

保護者は、テストの結果より「テストを受けた」という行動が大切であり、行動を通して得られたことが重要だということを伝えると良いでしょう。

「テストを受ければいい」はNG

いくらテストを受けることが大切とはいえ「テストを受けさえすればいいから」といった考え方で誘導すると、逆効果になる場合があります。

子供が「テストを受けさえすれば勉強しなくてもいい」「テストでいい点が取れれば学校に行かなくてもいい」という誤ったメッセージとして受け取られる可能性があり、明らかに保護者の意図ではないはずだからです。

子供が明確に「テストを受けない」ことを表明しているのであれば、無理に受けさせるのは苦痛なだけです。そのときは、今はまだテストを受ける時期ではないと考え、次の機会までしっかり寄り添い続けるようにしましょう。

不登校でテストを受けるときのポイント

無理にテストを受けさせることは、子供の今後にとってあまり良いこととはいえません。所詮、誰かに「させられた」行動であって、子供自身が「自発的に行動」したわけではないからです。

そう考えると、むしろテストを受けるという行動より先に、子供が自分からテストを「受けよう」と思えることが必要であるといえます。ここでは、子供がテストを受けるための気持ちの上での準備について考えてみましょう。

勉強嫌いであれば勉強に慣れることから

勉強が好きでたまらないという子供は稀です。ましてや不登校で授業さえ受けていない子供にとっては、テストを受けること自体が非常に高いハードルであり、そのための勉強もまた同じだといえます。

こんな子供には、まず勉強に対するアレルギーを取り除くことが大切です。いきなり勉強するのではなく、子供の「好きなもの」から始めましょう。

例えば「自動車が好き」であれば、次のような展開が考えられます。

  • ・自動車が好き

  • ・特に好きな外国の自動車がある

  • ・その外国メーカーはどんな自動車を作ってきたのか:歴史的背景や地の利、国民性がどう影響しているかを考えてみる

  • ・そのメーカー独自の技術がどのようにして生まれたのか:他社の自動車との仕組みの違いと、自動車の一般的なメカニズムを調べる

  • ・自動車全般、外国メーカー、メーカーの経営者などの書籍や動画、Webサイトを調べるなどして情報を集める

  • ・日本メーカーとの違い:なぜ違いがあるのかを考えてみる

注意が必要なのは、あくまで子供の「好き」から自然に展開し、慌てて勉強につなげてしまわないことです。展開を通じて「調べること」のおもしろさや「得られた情報」から感じたことと、さらに興味を持ったことに広がるワクワク感が得られるでしょう。

保護者は子供に、勉強にはそんな楽しさがあることを、自身が楽しむことで伝えることが大切です。

テストを受ける科目を絞る

勉強へのアレルギーが薄れてきたら、次は「テストを受ける」ことが目標です。

テストを受けると聞けば、好きなものも嫌いなものも含めた「全科目」受けなければならないと考えがちですが、必ずしも全科目である必要はありません。科目を絞ることで、テストへの抵抗感を最小限にできる上、次のような経験値を得ることもできます。

  • ・テストの場の雰囲気を知る(テストに慣れる)
  • ・科目は少なくても、勉強からテストを受けるまでの流れがわかる

一度テストを受けたからといって、その後もテストが受けられるようになるとは限りません。しかし、経験を積んでいくことは、着実に不登校の状態や勉強に対する認識が変わることにつながります。まずはこの流れを「スタートする」ことが重要なのです。

テスト後のスケジュールを工夫する

テストは、受けた後も重要です。テストを受けることで自分が「ゴール」に達したかのように感じると、テストが終われば勉強から遠ざかってしまうことになりかねません。テスト後はやる気や緊張感が継続するようスケジュールを工夫しましょう。

テストの後は、何かしらのイベントを予定しておくのがおすすめです。例えば映画を見たり、前から気になっていたスイーツを食べたりして「テストの打ち上げ」をすれば、また明日からの英気を養うことになるはずです。

このときのイベントは、テストを受けると決めたときに子供と一緒に決めておくと、勉強のモチベーションにもなります。子供と一緒に、楽しみながら考えてみましょう。

その後の勉強は、まず好きな科目や気になる科目から始めるのもよい方法です。テストで気になったところをもう一度振り返ることで、勉強が「させられる」ものではなく「気になるから自発的にする」ものになり、きっと自信につながるでしょう。

テストを受けるためのサポート

テストを受けること自体は、明らかに子供の課題です。しかし、だからといって子供にすべてを任せてしまうのではなく、保護者はそんな子供をしっかり支えなければなりません。

たとえ勉強を教えることはできなくても、子供の勉強する環境や、精神面のサポートはできるはずです。ここでは、不登校の子供がテストを受けるために保護者ができることを考えてみましょう。

勉強のあとはリラックスすることが大切

自宅にしろ、塾やフリースクールなど別の場所にしろ、子供が勉強することは緊張感が伴う疲れやすい行動です。大人でも長時間仕事をし続ければ集中力が低下し、効率も悪くなることを考えれば、子供も勉強後は休憩して、リラックスすることが大切だとわかります。

気持ちの切り替えには場所を変えるのが効果的といわれますが、例えば勉強は必ず机で、勉強以外では机につかないといったルール作りも有効です。

勉強ばかりするだけが子供のためとは限りません。将来を考えれば、オンとオフを上手く切り替え、効果的に勉強するという能力を育てるほうがより有意義だといえます。

テストを受ける場所の下見をしておく

不登校の子供がテストを受ける場所は、希望によって教室以外に設けられる場合もあります。とはいえ長期間学校に来ていない場合は、テストを受けるという緊張に加えて、慣れない場所に行くという緊張があり、本来の実力が発揮できないかもしれません。

緊張の解消には、テストを受ける場所を「下見」すると良いでしょう。テスト直前だけでなく、週に1度など保護者と一緒に時間を設けて下見しておくと、当日だけ行くよりも緊張感は和らぎやすくなるはずです。

下見には、徐々に増す緊張感がモチベーションをアップさせる効果も期待できます。保護者も一緒に緊張感を感じながら体験してみましょう。

テスト結果で保護者が慌てないよう注意

どんなに勉強していても、結果が期待通りにいかない場合もあるものです。子供が懸命に勉強し、備えていても同様で、むしろ懸命なほど思わしくない結果を目にすれば落ち込んだり慌てたりするのは当然だといえるでしょう。

例えば、テスト勉強がスケジュール通りに進まなかったり、テストの当日体調を崩し受けられなかったり途中で退席してしまったりといったことがあり得ることは、保護者なら理解できるはずです。

子供が失敗に落胆していても、保護者はそれを慌てずにしっかり受け止め、子供と一緒に「次はどうするといいだろう」「何かできることはないかな」など前向きでいることが必要です。

そんなときこそ、もっと不安に感じている子供をしっかり支えるためにも、保護者は慌てないよう注意しましょう。

不登校でテストを受ける方法をさがす

不登校の子供の多くは、教室には近づくことを好みません。ましてや独特の緊張感が満ちているテストとなればなおさらです。そのため、テストは次のように教室以外で受けることをおすすめします。

  • ・別室で受ける:図書室や保健室、生徒指導室など
  • ・別日・別時間に受ける:生徒のいない休日や放課後など
  • ・フリースクールや適応指導教室など別の場所で受ける

ただし、これらすべてから選べるとは限りません。まずは学校へ相談し、どのような方法があるかを尋ねてみましょう。このとき、子供が学校指定の方法では受けたくなければ、無理に受けるのはおすすめしません。

再度学校に相談するなどして、別の方法を模索するようにしましょう。