中学は不登校でも卒業できる?将来や進路、高校に向けて勉強するには?

子どもが不登校になった場合、学校に行かないこと以外にさまざまな心配が生じます。その中の一つとしてあげられるのが、進級や卒業、進路といった問題です。 特に、中学校を不登校で欠席し続けている場合、卒業できるのか、卒業できたとしても高校進学ができるのか、などについて心配している保護者の方も多いことでしょう。 ここでは中学生の不登校に焦点を合わせ、不登校でも卒業や高校進学ができるのか、できるのであればどのようにすればよいのか、などについてご説明していきます。

中学生の不登校の特徴と対応

「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査(令和元年度)」によると、中学生全体の3.9%、実に25~26人に1人が不登校であり、小学校の0.8%(約125人に1人)に比べると大幅に増加するという結果が報告されています。

なぜ、小学生から中学生になると不登校が増加するのでしょうか。ここではまず、中学生の不登校の特徴と、その対応についてご紹介します。

中学生の不登校の特徴

中学生の不登校にはどのような特徴があるのでしょうか。小学生の不登校との違いや、不登校になりやすいと考えられる子どもの特徴などについてみていきましょう。

小学生の不登校との違い

小学生の不登校の場合、家や親からの別離不安や学校での集団生活になじめないなど、原因を推察できるケースが比較的多いです。しかし、中学に進学すると、定期テストや塾通い、部活動など生活環境が大きく変化し、それに伴い人間関係も複雑化します。

また、思春期や第二次性徴といった心身の変化と、環境や人間関係の変化とが相まってしまうことで、よりストレスを溜め込みやすくなってしまうと言えるでしょう。

環境や人間関係の複雑な変化だけでなく、心身の変化によるストレスも加わるため、小学校の不登校よりも中学の不登校の方が、原因や背景が複雑であると考えられます。

不登校になりやすい中学生の特徴

不登校になりやすい中学生の特徴として、次のようなものがあげられます。

  • 感受性が強く複雑な人間関係によるストレスを溜め込みやすい
  • プライドが高く成績などで比較されることがストレスになりやすい
  • 気が弱く環境の変化や複雑な人間関係に疲れやすい

感受性が強すぎると、小学校からの環境の変化や自身の心身の変化などに敏感に反応してしまい、ストレスを溜め込んで不登校になってしまうと考えられます。

また、プライドが高すぎる子どもにとって、テストや部活動の成績によって常に比較される環境に身を置くことは大変なストレスであり、自尊感情を下げることになりかねないと言えるでしょう。

不登校の中学生への対応

不登校の中学生への具体的な対応として、次のようなものがあげられます。

  • 叱ったり脅したりして学校に行かせようとしない
  • 不登校が悪いことのように扱わない
  • 原因を無理に追究しない
  • 子どもの気持ちを尊重する
  • 子どもが安心できる居場所を作る

不登校の中学生への対応として大切なことは、子どもの意思や感情を無視して無理やり学校に行かせようとしたり、不登校をしていることに罪悪感を持たせたりしないことです。

「不登校=悪いこと」といった認識を植えつけてしまうと、子どもの自尊感情を傷つけてしまうことになり、さらに問題が悪化する恐れが生じます。

特に、思春期で心身が不安定になっている中学生の不登校への対応においては、いかに子どもの自尊感情を損なわないようにするかということが大切です。

中学生の不登校の進路や将来

中学生の不登校で、多くの保護者の方が心配されているのが、将来の進路や進学についてではないでしょうか。

ここでは、不登校でも卒業できるのか、進路や将来についてどのように考えていけばよいのかなどについてご説明していきます。

不登校でも中学校卒業は可能

結論から述べると、中学で不登校であっても卒業することは可能です。

小・中学校の「義務教育」とは、子どもが通学しなければならないという「義務」ではなく、子どもを学校に通わせなければならないという親の「義務」であるため、子ども自身が通わなくても問題になりません。

中学は高校と違って、出席日数は卒業するための必要条件ではないため、出席日数にかかわらず卒業できます

不登校でも高校に進学できる

不登校でも高校を受験して進学することは可能ですが、出席日数が少ないと「調査書(内申書)」作成が難しくなるため、選択肢は狭まってしまいます。

特に、公立高校の場合は調査書が重視される傾向にあるため、受験できても合格することは難しいかもしれません。

しかし、通信制高校や定時制高校では、成績や出席日数などよりも本人のやる気や学習意欲を重視する場合があるので、中学で不登校であっても受け入れてもらいやすいと言えるでしょう。

公立高校などの調査書が必要な学校に進学を希望するならば、保健室や指導室などに登校し出席日数を得て、定期テストを受けることで評価してもらえる場合があるので、学校に相談してみるとよいでしょう。

不登校の中学生の勉強方法

先に述べた通り、不登校であっても中学を卒業したり高校に進学したりすることは可能ですが、そのために必要な学力は身につけておく必要があります。

ここでは、不登校の中学生の具体的な勉強方法についてご紹介していきます。

家庭学習

学校に登校することが難しいだけでなく、家から出ることも難しいような場合は、家庭学習で勉強を続けるのがおすすめです。

教科書や参考書だけで勉強することもできますが、わからないところなどがそのままになってしまいがちです。子どもの状態や必要に応じて、オンライン家庭教師や通信教育などを活用するとよいでしょう。

塾やフリースクールに通う

登校が難しくても、学校以外の場所に通うことができるのであれば、フリースクールや塾の利用がおすすめです。決まった日時に家から出て勉強をすることで、学力だけでなく生活リズムを整えることもできます。

塾であれば集団指導や個別指導、衛星授業などを選ぶことが可能です。また、フリースクールであれば学習面だけでなく、進路相談やカウンセリングを行っているところもあるので、子どもの希望や目的に合わせて選ぶとよいでしょう。

適応指導教室

適応指導教室は、不登校の小中学生のための公的な教育機関です。各自治体の教育委員会による公立の機関なので、民間の塾やフリースクールとは異なり費用をかけずに学習することができるという特徴があります。

しかし、適応指導教室は学校に再び通えるようになることを目標にしているため、学校に通うこと自体がつらい子どもには向いていない場合があるので注意が必要です。

中学生の不登校の進路や将来の相談先

最後に、不登校の子どもの進路や将来についての相談先をご紹介します。

不登校支援センター

不登校支援センターは、全国に7つの支部があり、学習支援医療機関と提携したカウンセリングなど、不登校に関するさまざまなことを相談することができます。また、医療機関とも提携しているので小中高別の対応策を相談することができ、初回の相談は無料です。

不登校の親の会

不登校の子どもを持つ親同士の経験の共有や交流の場として、活動している会の総称が「親の会」です。

全国展開している大規模な会やNPO、ボランティアによる小規模なものまでさまざまな会があります。セミナーや相談会、学習会などを開催していることもあるので、会の雰囲気などをつかみたい場合は参加してみるとよいでしょう。

各自治体の教育支援センター

教育支援センターは、都道府県や市区町村の教育委員会が運営していることが多い公的な支援機関です。

おもに、小・中学生の不登校についての相談や学習指導などを行っています。義務教育でない高校生には対応していない所が多いので、相談前に確認することをおすすめします。

中学生の不登校でも進学や将来を悲観しないことが大切

中学生の不登校の場合、将来の進路を決めたり高校進学が控えていたりするため、不安も大きいことでしょう。しかし、中学生で不登校であっても卒業することは可能ですし、進学できる高校もあるので、必要以上に心配をしたり悲観したりしないことが大切です。

むしろ、無理やり学校に行かせるようなことはせず、子どもの意思を尊重して居場所を作ってあげることのほうが大切です。また、進学を希望している場合は、子どもの状態に応じた勉強できる環境を整えてあげるとよいでしょう。

どのように勉強を続けさせればよいのかがわからない場合は、不登校の支援センターや不登校の親の会などに相談してみたり参加してみたりすることをおすすめします。