高校中退、中卒の就職。公務員や正社員になれる?

高校を中退してしまうと、最終学歴は中卒です。希望する進路にもよりますが、中学を卒業しただけでは、将来の進路が狭まってしまう可能性があります。 例えば、就職を希望する場合に、中卒では不利になってしまうことが多いのです。この記事では、中卒者の就職の現状と、就ける職業の幅を増やすためには、どうすれば良いのか、高校中退では公務員になるのは難しいのかを説明します

高校中退、中卒でも公務員になれる

公務員は収入が安定していて、福利厚生も充実しています。そのため、学生の就職先として根強い人気があります。「高校や大学を卒業していないと、公務員にはなれない」と思われがちですが、実は一部の部署を除き、学歴は不問です。高校中退で、中卒でも公務員への道は開けているのです。

ただし、公務員になるには、国家公務員採用試験を受ける必要があります。国家公務員採用試験には、総合職試験、一般職試験、専門職試験があり、それぞれ大卒程度、高卒程度と分かれています。

しかし、高卒でも大卒程度の試験を受けることは可能ですし、中卒でも高卒程度の試験を受けることはできます。また、試験を受けるための費用がかからず、誰でも公務員採用試験にチャレンジできるのです。大卒程度、高卒程度という分類は、それくらいの能力が求められることと、試験の難易度の目安と考えましょう

例えば、専門職試験の難易度は高卒程度ですが、中卒でも合格し採用されれば、税務職員、皇宮護衛官、刑務官、入国警備官として働くことができます。ただ、公務員は就職希望者が多いため、競争率も高くなっています。そういった点も踏まえると、高校中退、中卒から公務員になるのは難易度が高いといって良いでしょう。

■国家公務員の採用試験、受験資格

分類 試験内容の目安 受験資格
総合職 院卒者試験 30歳未満で大学院修了、大学院修了見込み
大卒程度試験 21歳~29歳
※大学卒業、卒業見込みなら21歳未満で受験可
一般職 大卒程度試験 21歳~29歳
※大学、短大、高専の卒業、卒業見込みなら21歳未満で受験可
高卒者試験 高校卒業見込み、卒業後2年以内
※中学卒業後2年以上5年未満で受験可
社会人試験
(係員級)
20歳以上40歳未満
※高卒者試験の受験資格者を除く
専門職 大卒程度試験 試験によって受験資格が異なる
高卒程度試験 試験によって受験資格が異なる

■東京都職員の採用試験、受験資格

分類 試験内容の目安 受験資格
I類A 大学院卒程度 24歳~31歳
I類B 大卒程度 22歳~29歳
※試験区分(職種)によっては要資格・免許
「獣医」「薬剤」は24歳~29歳で要免許
II類 短大卒程度 20歳~25歳
※試験区分(職種)によっては要資格・免許(取得見込みを含む)
III類 高卒程度 18歳~21歳

高校中退、中卒からの進路

高校中退、中卒からの進路は具体的にどのようなものがあるのか、それぞれ詳しく見ていきましょう。

就職をする

中卒でも、資格や専門知識、技術を持っていると、就職で有利に働きます。とはいえ、高校中退で中卒の場合、資格を取得しているというケースは少ないでしょう。

まずは学歴や経験不問で働ける場所を探し、働きながら将来に役立つ資格を取得するのがおすすめです。

専修学校へ通う

専門学校への進学には高校卒業資格が必要ですが、専修学校であれば高校卒業資格は必要ありません。中卒でも進学できますし、3年制の大学入学資格付与指定校(※)であれば、その先の大学に進むことも可能です。

修了者に大学入学資格が認められる専修学校高等課程の一覧

高卒認定を取得する

文部科学省が主催している高卒認定試験(大検)は、合格すると高校卒業と同じ学力があると認められたことになります。

高卒認定試験は数科目あり、すべてに合格しなくてはいけませんが、一度に合格する必要はありません。そのため、自分のペースで進めていくことができます。ただし、合格してもあくまでも高校卒業と同じ学力があることが認められただけで、学歴自体は高卒にはならず中卒になります。

通信制高校で学ぶ

「高卒以上の学歴を持っていること」を採用の条件に挙げている企業も多いため、高校をやり直すのもひとつの方法です。「勉強が苦手」「高校中退後、ブランクがあって自信がない」という人におすすめなのが通信制高校です。入学試験は書類選考と面接が基本で、入学しやすくなっています。

さらに、通信制高校は単位制を導入しているため、必要な単位数を修得すれば卒業することができます。留年がないので、勉強ができなくてもう1年同じ学年をやり直すこともありません。少しずつ自分のペースで勉強を進めて卒業を目指すことができます。

また、以前に在籍していた高校で修得した単位を引き継げるので、卒業に必要な単位数を修得するまでかかる時間を短縮することができます。ただし、学年制の高校では、単位修得のタイミングが学年修了時のため、高校1年で中退してしまっている場合、修得している単位はありません。

通信制高校には「中学時代、不登校でほとんど通っていなかった」という人や、「高校を中退してしまった」という人も多く在籍しており、年齢層や経歴もさまざまです。そのため、周りとの違いを気にして通う必要はありません。

通信制高校がどんな雰囲気なのか興味を持ったら、まずは学校の資料を請求することから始めてみてはいかがでしょうか。ズバット 通信制高校比較では、通学エリアや学びたいことから学校を検索し、気になった学校の資料請求ができます。「自分に合った学校が分からない」という場合は簡単な質問に答えるだけで自分に合う学校タイプを診断してくれる「通信制高校診断」もあるので、まずは診断をして自分に合う学校を探してみましょう。

高校中退や中卒は就職のとき不利になる?

アルバイトなどで生計を立てるフリーターは、収入や立場が不安定です。将来のことを考えると、やはり正社員として就職したいものです。しかし、高校中退だと、企業の採用担当者に「仕事が長続きしないのでは?」「上司や同僚とうまく人間関係が築けないのでは?」と色眼鏡で見られてしまうことがあります。また、応募資格として「高卒」を挙げている企業だと、応募すらできません。

厚生労働省が公表した「令和4年度『高校・中学新卒者のハローワーク求人に係る求人・求職・内定状況』取りまとめ」(学校やハローワークからの職業紹介を希望した生徒が対象)によると、高卒者の就職内定率が99.3%に対して、中卒者は86.8%と高卒者よりも低くいです。

■学歴別新卒者の求人・求職・就職内定状況(令和4年度)

  高校新卒者 中学新卒者
就職内定率 99.3% 86.8%
就職内定者数 12万6,000人 316人
求人数 44万4,000人 1,077人
求職者数 12万7,000人 364人
求人倍率 3.49倍 2.96倍

※厚生労働省『令和4年度「高校・中学新卒者のハローワーク求人に係る求人・求職・内定状況」取りまとめ

まとめ

ハローワークや求人サイトで「最終学歴が中卒でも可能」な就職先を探すと、件数が極端に少なくなります。また、就けるおもな職種は建設業、製造業、小売業、介護職と高卒者と比べると、職業の選択肢も少なくなってしまうのです。

高卒の学歴を得られるのは全日制や定時制の高校だけではありません。自分のスタイルに合った通信制高校で学び、高卒の学歴を得ることが可能です。 もう一度、高校に入り直すという選択肢も考えてみてはいかがでしょうか。