通信制高校の卒業まで何年かかる?卒業要件と進路も詳しく解説!

通信制高校は、柔軟な学習スタイルを提供することから、さまざまな事情を抱える人の学びの場として人気が高まっています。 通信制高校を卒業するためには3つの要件を満たす必要があります。また、単位取得のためには、レポートの提出やスクーリングへの参加、単位認定試験への合格などが求められます。 この記事では通信制高校卒業までに何年かかるかについて、転入・編入の場合もあわせて解説します。また卒業後の進路についても紹介するので、通信制高校選びの参考にしてください。

通信制高校の卒業要件とは

通信制高校を卒業するためには、以下の3つの要件を満たす必要があります。

  • 3年以上の在籍
  • 74単位以上の取得
  • 30単位時間以上の特別活動

3年以上の在籍

通信制高校を卒業するためには、最低3年以上在籍する必要があります。全日制高校から転入や編入をした場合は、前の高校の在籍期間が含まれる場合があります

仮に2年間で74単位を取得したとしても、3年以上の在籍は必須であるため卒業することはできません。

74単位以上の取得

通信制高校を卒業するには、74単位以上を取得する必要があります。これは、最短3年間で合計74単位取得すればいいということです。

一般的には、通信制高校で1年間に取得できる単位上限数は35単位前後とされていますが、条件は学校によって異なるので、希望の学校に確認しましょう。

通信制高校に転入・編入した場合、前の高校で取得した単位が引き継がれるケースがあります。ただし、引き継がれるのは前年度に取得した単位のみです。例えば、2年生で転入した場合、引き継がれるのは1年生で取得した単位のみです。

なお、単位を取得するには、レポートの提出・スクーリングへの参加・単位認定試験の合格が必要となります。

30単位時間以上の特別活動

特別活動とは、一般的な教科以外の学習活動のことです。ホームルームや入学式、文化祭、体育祭、修学旅行などが該当します。集団活動を通して協調性や社会性を養うことを目的とした活動です。

通信制高校では一般的に、スクーリングの一環として特別活動の時間を確保している学校が多く、映画鑑賞や芸術鑑賞などを特別活動として実施している場合もあります。

学校によって特別活動の内容や参加方法が異なるため、どのような活動を設定しているか、無理なく参加できるかも確認することが大切です。

なお、「30単位時間」とは「30時間」ではありません。1単位時間は50分として計算するため、「30単位時間」は「25時間(1,500分)」になります。

卒業するために必要な単位を取得する方法

ここでは、通信制高校を卒業するために必要な単位を取得する方法を3つ紹介します。

  • レポート提出
  • スクーリング
  • 単位制認定試験

レポート提出

通信制高校では、単位を取得するために定期的なレポートの提出が必要です。全日制高校と違って毎日登校するわけではないため、学習の進度や理解度を図るためにも欠かせないものです。

レポートの内容は学校によってさまざまですが、小テスト形式や学習内容の要約が多いです。教科書を読みながら回答できるため、難易度は高くありません。レポートを提出しなければ単位が取得できないため、提出期限を守り、計画的に提出することが大切です。

提出方法も学校によって異なり、オンライン、郵送、学校に直接持参するなどの方法があります。先生から添削をしてもらった後はすぐに復習し、わからないところは質問するなど、学習内容を確実に習得していくことが大切です。

スクーリング

対面で教師から面接指導を受けることをスクーリングと言います。スクーリングの頻度は学校ごとに異なっており、規定の参加日数や時間を満たさなければ、卒業できません。

スクーリング会場は学校に限らず、大学や専門学校が会場の場合もあります。スクーリングの方法や日数もさまざまで、週1ペースでの登校や年1回の集中合宿への参加など多様です。

スクーリングは、普段は自宅で学ぶ生徒たちにとっては、ほかの生徒や先生と直接交流ができる貴重な機会です。

どうしても人と会うのが苦手な場合には、スクーリングの回数が少ない学校や少人数型の学校もあるので、学校選びの際に確認するとよいでしょう。

単位認定試験

単位認定試験は、単位を取得するための最終試験です。通常は年2回または年度末に1回、実施されます。試験を受けるためには、規定数のレポートの提出とスクーリングへの参加が必須です。

試験はレポートの内容を元に出題されるケースが多いです。難易度は高くないですが、不合格の場合、再テストとなります。レポートの学習内容をしっかり復習しておきましょう。

通信制高校の卒業率は?

文部科学省の調査によると、令和5年度の通信制高校の卒業率は、公立では94.2%、私立では96.6%です。全日制高校と比較しても、大きな違いはありません。

多くの生徒が卒業している現状を踏まえると、通信制高校の教育環境が整っているとも考えられるでしょう。

通信制高校の卒業は難しい?

結論から言うと、通信制高校を卒業するのは、それほど難しいことはありません。しかし、中には「卒業が難しい」と感じる人もいるかもしれません。

通信制高校の卒業が難しいと感じる理由は、以下の通りです。

  • 自己管理能力が求められる
  • 学校生活になじめない
  • 経済的な負担や健康上の問題がある

自己管理能力が求められる

通信制高校は、基本的に自宅での学習が中心です。毎日通学してカリキュラムに沿った授業を受けるのではなく、自分で学習スケジュールを立てて進めていく必要があります。

レポートの提出を後回しにして期日に間に合わなかったり、溜め込んでしまったために学習意欲を失ってしまうこともあるでしょう。このように、通信制高校では自己管理能力が求められます。

そのため、自己管理が苦手な人にとっては、卒業が難しいと感じるかもしれません。

学校生活になじめない

通信制高校には、人付き合いや、集団に属するのが苦手といった悩みを抱えている生徒もいます。そのため、学校の雰囲気になじめないこともあるでしょう。

通信制高校は基本的には自宅学習ですが、スクーリングの際には集団学習に参加する必要があります。スクーリングへの参加に苦手意識を持っている場合、卒業が難しいと感じることもあるでしょう。

経済的な負担や健康上の問題がある

令和5年度文部科学省の調査によると、通信制高校を経済的な理由で中退した割合は4.1%でした。 また、病気やけがなど健康上の問題で中退した割合は7.4%です。

通信制高校には、経済的な悩みや、健康上の悩みを抱えている生徒もいます。自身の学習意欲は高くても、経済的、健康上の理由で卒業ができない場合もあります。

通信制高校の卒業までに何年かかる?

通信制高校は、通常、卒業までに3年の在籍が必要です。しかし、転入や編入の場合、必要な年数が異なります。

新入学の場合

新入学とは、一般的に、高校1年の4月に入学することです。通信制高校では、入学時期を4月と10月に設定している場合があり、どちらも新入学になります。

新入学の場合は、卒業要件を満たせば、最短で3年で卒業できます。1年で履修できる単位数の上限を多く設定している学校もありますが、「3年以上の在籍」という卒業要件があるため、3年未満で単位を取得しても卒業はできません。

一方、単位の取得ペースが遅く、3年で規定の74単位が取得できなければ、4年以上かかってしまうこともあります。

転入した場合

転入とは、前の学校から次の学校に転校することです。転入した場合、前の高校での在籍期間と前年度に取得した単位が引き継がれるケースがあります。

例えば、高校2年生になるタイミングで転入し1年次に30単位取得していた場合、引き継がれるのは1年間の在籍期間と30単位です。残りの44単位分を2年次・3年次に取得すれば、最短2年で卒業できます。

ただし、転入の時期には注意が必要です。例えば、2年次の9月に転入した場合、引き継がれる単位は1年次に取得した単位のみになります。転入時期によっては単位取得が間に合わず、卒業までに想定以上の時間がかかる場合があるので、転入時期はよく考えて決めましょう。

編入した場合

編入とは、高校を一度中退して、ほかの高校へ改めて入学することです。編入した場合は転入同様、前の高校での在籍期間と前年度に取得した単位が引き継がれるケースがあります。

ただし、中退してから編入するまでに空白期間が生じるため、その空白期間も含めて卒業までに3年以上かかることになります。

また、編入できる時期は4月か10月に限定している学校が多いです。特に公立の場合、4月のみ編入可能のため、最初の高校に入学してから通信制高校を卒業するまでに4年以上かかってしまうケースもあります。

なお、通信制高校への編入については、通信制高校への編入と転入の違いを解説!注意点から判断ポイントまで紹介も参考にしてください。

卒業までの単位修得スケジュール

通信制高校は、74単位の修得、30単位時間の特別活動、3年以上の在籍の条件を満たせば、卒業できます。単位制なので、学年制の学校のように1年間に定められた単位数を習得する必要はなく、自分のペースで学習を進めて卒業を目指すことができます。

一方で、卒業までの単位取得の計画を自分で組み立てるのが通信制高校の特徴です。学校に相談することもできますが、おおまかな計画は自分で立てなくてはいけません。卒業後の進路や高校生活など、さまざまな要素を検討し、自分なりに計画してみましょう。

上手く自己管理ができないと、3年で卒業するつもりが、4年以上かかってしまうことがあります。目標をしっかりと見据えて、単位修得のスケジュールを立てることが大切です。

ここでは、卒業までの単位習得プランについて目的別に分けて紹介します。

学校とプライベートを両立したい

3年で74単位以上を修得するには、1年で約25単位の修得が必要です。

1単位を修得するのに35単位時間(1単位時間は50分)の学習が必要で、トータルでは約29時間かかります。25単位になると約725時間かかり、これを365日で割ると1日あたり約2時間の学習が必要な計算になります。

1年で25単位なら1日2時間勉強すればよいため、、プライベートの時間もたっぷりととれるくらいのペースといえるでしょう。

アルバイトをしたり、受験勉強をしたりと時間の使い方は自由です。全日制高校に通っていては、得られないような体験をすることもできるはずです。

学校とプライベートの両立

大学受験を最優先したい

大学受験を目標に、早い段階で卒業に必要な単位を修得するプランです。通信制高校の学習内容では不安がある、難関大学を狙いたい、という人は、3年次に受験勉強の時間を大きく割くため、74単位を早めに修得するようにしましょう。

ただし、大学受験のモチベーションを保ち続けるため、無理しすぎないことも大切です。詰め込みすぎたと思ったら、学習のペースを落としましょう。大学受験向けのコースがある通信制高校なら、そういったコースを選択するのもひとつの方法です。

大学受験を最優先

じっくり卒業を目指したい

病気やケガでまとまった学習時間が取れない人や、仕事をしていて1日の学習時間が少なくなる人は、3年間での卒業にこだわらないことも大切です。通信制高校には留年がないので、時間をかけて卒業を目指す人もいます。

卒業までの期間を長めに考えて、じっくりと卒業できるプランを立てましょう。慣れてきたら、修得する単位の数を徐々に増やすこともできます。

じっくり卒業を目指す

通信制高校をスムーズに卒業するためのポイント

通信制高校を無理なく卒業するためには、計画的に学習を進めていくことが大切です。通信制高校卒業を目指す上で特に大切なポイントを2つ紹介します。

生活リズムを整える

通信制高校は、自宅での学習が中心となるため、自主的に学習を進めていく必要があります。効率良く学習するためには、午前中は学習の時間にあてるなど一日のスケジュールを立て、規則正しい生活を送ることが大切です。

全日制高校のように毎朝決まった時間に起きて通学する必要がないため、生活リズムが乱れて学習時間を確保できないケースもあります。そのため、生活リズムを整えることが通信制高校での学習をスムーズに進めるための第一歩です。

計画的に単位を取得する

通信制高校は自分でスケジュールを立て、卒業に必要な単位を取得していくことが求められます。全日制高校と違って学年ごとに取得する単位が決まっているわけではないので、マイペースで学べる反面、計画的に単位を取得しないと卒業時期が延びてしまいます。

1年間に取得する目標単位数を設定し、計画的に単位を取得していきましょう。

自分だけでは難しいと感じる場合は、学習面や生活面のフォローをしてくれるサポート校を併用するのもおすすめです。

通信制高校卒業後の進路は?

文部科学省「令和6年度 学校基本調査」によると、通信制高校卒業後の進路は以下の通りでした。

  • 大学進学:26.5%
  • 専門学校進学:22.3%
  • 就職:20.1%
  • その他:31.1%

大学進学の割合が一番高く、ついで専門学校進学、就職の順です。およそ半分の生徒が進学を選び、2割の生徒が就職を選んでいます。

通信制高校は、各進路に対応したさまざまな特色の学校があるため、どのような進路を選ぶかで選択すべき高校も異なります。

大学進学を目指すなら大学進学コースのある学校を、専門学校進学を希望するなら提携校のある学校を選ぶのがおすすめです。

また、就職を考えている場合は、資格取得を目指せる学校を選ぶことで将来の仕事に役立つスキルを身につけることも可能です。

このように、どの進路を目指すかによって選ぶべき通信制高校やコースも異なるので、自分の目標に合った学校を選びましょう。

大学進学に力を入れている通信制高校では、受験に精通している講師による個別指導やサポートが受けられます。苦手科目を克服するカリキュラムや、志望校に必要な科目のみに特化したカリキュラムを組んでくれる学校もあります。

通信制高校から大学進学を検討している人は、通信制高校から大学進学は不利?おすすめの通信制高校5選も紹介をあわせてご覧ください。

まとめ

通信制高校を卒業するためには、「74単位の取得」「3年以上の在籍」「特別活動への参加」の3つの要件を満たす必要があります。卒業率は全日制と同程度で、卒業することは決して難しいわけではありません。

通信制高校に転入・編入をする場合は、単位を引き継げる可能性があります。スムーズに単位の引き継ぎができるように、タイミングに注意が必要です。

ズバット通信制高校比較の通信制高校診断を利用すれば、多数の通信制高校の資料を無料で一括請求できます。いくつかの質問に答えるだけで、自分に合ったタイプの高校がわかります。