「無気力タイプ」不登校の状態例と対応のポイントは?保護者の対応の注意点
公開日:2021年08月05日 更新日:2021年08月05日
子供が不登校になれば、保護者であれば心配するのは当然のことでしょう。中でも無気力タイプの不登校の場合は、何をするにも積極性がなく、子供らしい明るさや情熱があまり感じられず、余計に不安に感じるかもしれません。 無気力タイプの不登校にはほかとは異なる特徴や注意点があります。進行の時期によって対応を適切に変化させるのも有効ですが、そのためにはまず保護者が無気力タイプの不登校をよく理解することが重要です。 この記事では、「無気力タイプ」の不登校の特徴と対処法を解説します。今、子供がどんな状態にあるのか、どうすると良いのか考える参考にしてください。
- 無気力タイプの不登校の特徴
- 元気がなくなり無気力化する『前駆期』
- 家族とも距離ができる『進行期』
- 独立心が見えてくる『休息期』
- 意欲的に取り組む姿勢が現れる『回復期』
- 無気力タイプへの対応の注意点
- 無気力タイプの不登校に適切に対応しよう
無気力タイプの不登校の特徴
無気力タイプの不登校は、文字通り何に対しても「無気力」な状態にある不登校です。10代に多い好奇心や興味からくる「やってみよう」「調べてみよう」といったような意欲が乏しく、問いかけにもはっきりと答えることはあまりありません。
ここではこういった意欲の乏しさ以外の部分について、無気力タイプの不登校の特徴を紹介します。
まじめで落ち着いた子供に多い
無気力タイプの子供はもともとまじめで基礎学力があり、休日には友達と遊ぶなど気持ちの上では落ち着いているという特徴があります。特にこれといった不登校の原因が見当たりませんが、学校に行く意欲や学校への不安もありません。まさに「ただなんとなく学校へ行かない」という無気力な状態です。
原因として考えられるのは「自分の存在価値がわからない」「自信がない」「努力してもムダではないか」といった不安や悩みです。本来のまじめさからか一度不安を感じてしまうと解消できず、やがて「自分は保護者や他人から必要とされていないのではないか」といった大きな不安に発展する場合もあります。
主体性を持って行動することが少ない
自分から学校に行こうとすることはありませんが、保護者や友達が「学校に行こう」と促せば学校に行くことがあるという「主体性のなさ」も特徴です。主体的に「学校に行こう」「勉強しよう」「友達に会いに行こう」と行動することは少なく、他者からの働きかけに応じるように行動を決める傾向があります。
はっきりした原因が見当たらない場合が多い
学校に行かない原因がはっきりと見当たらないことも特徴です。多くの場合、身体的な症状があるわけでもなく学力や人間関係などにも「明確な原因」が見当たりません。本人が漠然とした「将来の不安」「将来の自立への恐れ」を感じる様子はあっても、はっきりした原因まで突き止められない状態です。
原因が本人にもわからないので、保護者もどう対応すればいいか分からなくても当然といえます。しかし無気力タイプは進行時期によって共通する特徴があり、それを参考にして慎重に観察することで適切な対応方法がみえてきます。
元気がなくなり無気力化する『前駆期』
普段通りの生活を送っていたのに、だんだんと無気力化して学校に行かなくなる初めの時期が「前駆期」です。
「めんどくさい」がよく出る
「先生が嫌いだ」「学校が面白くない」といった不平不満は多くの子供が感じますが、それに対して理由や原因を懸命に訴えるのではなく、むしろ力が抜けて「だるい」「めんどくさい」が口癖になるのは無気力化の前兆といえます。
学校に行かない時間はテレビを見たりゲームをしたりと好きなことをしながら過ごし、友達が誘ってくれば学校に行ったり、学校の先生が来ると応対したりと特に「閉じこもる」様子は見られません。
学校に行かない理由を尋ねると毎回違う、的を射ない回答をすることから、保護者は「怠けているのではないか」と考えがちです。
深入りせずしっかり接することが大切
前駆期は一見怠けているだけのように見えますが、そうではない可能性があること前提に接することが大切です。本人も明確に説明できないことが多いので、保護者が論理的に追求すればかえって追い詰められ、不安が大きくなりかねません。しかし、放っておかれるとさらに無気力になる可能性もあります。
この時期は、学校に行かないことを責めたり、理由を追求したりすることは避け、適度に寄り添い、努めて「いつでも話を聞くよ」という態度を示しましょう。学校を休むことを認め、子供の関心のある話をしたり、「ほっといてほしい」と言われたら深入りせず「気が向いたらいつでも話してね」としっかりと接点を持ち続けることが大切です。
家族とも距離ができる『進行期』
進行期になると、学校へ行かない理由を伝えることを避け、「学校には行かない」と宣言することがあります。また、だんだんと周囲とのやりとりが少なくなり、1人で悩む時間が長くなるのが特徴です。
昼夜が逆転し表情が暗くなる
この時期は学校に行かないことが普通になっていき、生活リズムが崩れてきます。一日中ネットやスマホを見たり、ゲームで疲れ果てたら眠るという生活で昼夜が逆転し、家族とも生活リズムが合いません。そのため次第に顔を合わせたり言葉を交わしたりすることも少なくなり、1人で思い悩むことが多くなってきます。
当然友達とも会う機会は減り、本人もほとんど外出せず部屋に閉じこもりがちになります。保護者の不安も徐々に増してきますが、保護者には子供の気持ちに寄り添い、身近な大人として子供のそばに寄り添い続けることが大切です。
普通の会話を取り戻すことを目指す
進行期では子供との接点が少なくなります。しかし、だからこそこの時期は、保護者が少ない接点を丁寧にとらえ根気よく接しながら「普通の会話」を取り戻すことが重要です。命令するような関わりはやめ、本人の意図を尊重しながらも折を見て話しかけるなど接点をつくるよう努めましょう。
会話では学校や進路といった子供を刺激する話題は避け、本人が興味のある関心事を中心に会話するようにしましょう。不安や悩みから人生そのものに行き詰まりを感じていることが多いので、「自分の人生だから」と突き放すのは長期化する恐れがあるので避けるべきです。
また高校生の場合は出席日数と単位が進級の条件になるため、学校の先生に進級条件の詳細と教科ごとの出欠状況を確認しておきましょう。
独立心が見えてくる『休息期』
家族との会話が戻り、以前より落ち着いて過ごせるようになるのが休息期です。以前のように家族と一緒に過ごせる程度に生活リズムが改善し、自然に笑顔が出るなど表情も明るくなってきます。
進級など具体的に将来を気にする
友達に誘われると一緒に出かけて時間を過ごしたり、自宅に先生が来ても嫌がらずに話ができたりするようになってくるのが休息期です。発表会や体育大会などの行事に誘われると前向きに考える姿勢を見せます。
精神的に落ち着くことで生まれるのは、冷静に考える余裕です。不登校の期間によって学習がどれくらい遅れているか、どうすれば取り戻せるかといったことをネットなどを使って自分で調べたり、将来どんな進路の可能性があるか興味を持ったりとこれまでなかったような変化が見られます。
意欲が行動につながるよう援助する
本人が自分なりに考えた末、急に「アルバイトをやりたい」などと言い出せば、大人としてはあまり現実的ではないとっぴなアイデアと思うかもしれません。しかしこんなとき保護者はこのアイデアを尊重し、そこに至ったエピソードなどをじっくり聞くことが大切です。
そうすることで本人が今大切に思っていることや不安に感じていること、意欲を持っていることを知ることができます。どんな形にせよ意欲が生まれるということは、無気力から抜けだせているということです。
保護者はこの意欲をうまく行動につながるよう有効な手段を一緒に考え、望めば共に行動するつもりであることを伝えてしっかり寄り添いましょう。
意欲的に取り組む姿勢が現れる『回復期』
家族や友達、学校の先生など多くの人と関わりを通じて次第に自分の進路ややりたいことが明確になってくるのが回復期です。不安や悩みは以前より少なくなり、夜しっかり眠ることができるので生活のリズムも改善します。
自分を客観的にとらえることができる
現在や将来についてのさまざまな情報から自分をより客観的にとらえることができ、以前のような漠然とした不安や悩みは徐々に解消してきます。中には誰にも相談せず1人で復学や進路、アルバイトなどを決めて、事後報告する場合もあるようです。
またこの時期になると、周りに対して不登校だった理由を説明できるようになる場合もあります。それだけ周りの状況を理解でき、自分を客観的に捉えている現れであるといえるでしょう。
本人の課題や目標を認め自立を援助する
本人が自主的に、意欲的に目標を持つことは、自立にとって非常に有意義です。保護者は子供にとってよい目標を一緒に考え、日々の努力を認めて励まし、しっかり寄り添いましょう。
学校に戻りたいという様子が見られたら、友達や学校の先生などに呼びかけてもらえるようお願いするとスムーズです。欠席日数などによって進級が難しい場合は、転校や復学などいくつかの選択肢も含めて考える必要があります。学力の遅れを取り戻すなら、本人の希望を聞いて塾や家庭教師など現実を見据えた適切な方法を選択するとよいでしょう。
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無気力タイプへの対応の注意点
ここからは不登校、特に無気力タイプの子供への対応で、注意が必要なポイントを解説します。
保護者と子の気持ちの温度差に注意する
保護者は子供の幸せを、誰よりも願う大人のはずです。しかし時にそれが高じて、子供を「怠けている」と断定して責めたり、自分の中の常識を押し付けたりしてしまうことがあります。しかし大人には大人の経験に基づく見方がありますが、子供にはまだそれだけの経験がありません。保護者の言っていることの真意が理解できず、より混乱してしまう可能性さえあります。
無気力タイプであっても子供は子供なりに深刻な悩みを持っており、その内容や程度を外から見分けるのは至難の業です。大切なのは大人の現実的な見識を持ちながら、今の子供の気持ちに寄り添い、一緒にどうすればいいか考え、援助することだといえます。保護者が先に感情的になってしまわないよう、冷静でいることが大切です。
頭ごなしに否定してもわかり合えない
不登校の子供は、自分なりに現実や将来について悩んでいます。ただ大人と比べれば知識や経験は少ないので、時には非現実的なことを言い出すこともあるでしょう。しかしだからといってそれを頭ごなしに否定しても仕方ありません。
もし保護者が頭ごなしに否定したら、わかりあうどころか「やっぱり自分はダメだ」と子供はさらに無気力になってしまう可能性があります。保護者は、子供の考えがどれほど非現実的と思えてもしっかり向き合うことが大切なのです。
この態度こそ、子供に「しっかり寄り添っているよ」と示すことであり、子供にとっての励みになります。一般論や常識にとらわれるのではなく、まずは子供がどう思っているのかを受け入れるよう努めましょう。
無気力タイプの不登校に適切に対応しよう
無気力タイプの不登校では、明確な理由がわからず身体症状もないことから単に「怠けている」ととらえがちで、学校に行くことを強制したり、学校に行かないことを責めたりと、子供の気持ちにそぐわない対応をしてしまう傾向にあります。
無気力タイプへは、進行時期によって異なる特徴に応じた適切な対応が求められます。子供の心の状態に合わせた、深入りしない、放置しないという「ちょうどいい」接し方が大切です。また「子供との気持ちの温度差に注意する」「頭ごなしに否定しない」ということには注意しなくてはなりません。
子供が不安や悩みの解消について最も頼りにしているのは保護者です。まずは不登校であることを認めてしっかり子供と向き合い、大人としてしっかり落ち着いて接するよう努めましょう。
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