HSCが不登校の原因になる?親が取るべき対処法をご紹介

HSCの子供は刺激に対して敏感で、学校で過度にストレスを感じることがあります。ストレスが極限まで溜まると、急に学校に行かなくなる子も少なくありません。そこで今回は、HSCの子供が不登校になる原因や親が取るべき対処法をご紹介します。

HSCとは「ひといちばい敏感な子供」

HSCは「Highly Sensitive Child」の略称で、生まれながらして感受性が強く刺激に敏感な気質を持つ子供のことです。人が大勢集まる場所や騒音が苦手だったり、他者への共感力が非常に高かったりするため、学校生活でも環境や友達にうまく馴染めないといった問題を抱える子供も少なくありません。

ただ勘違いしてはいけないのは、HSCは病気ではないということです。その子が生まれながらにして持っている気質であるため、特別な治療が必要なわけではありません。また「自分のせいだ」「育て方が悪かった」など自分自身を責める親もいますが、遺伝や育て方に起因するものでもありません。

日本でHSCの気質を持つ人は、5人に1人の割合で存在すると言われています。HSCの気質を持つ人口は多くはありませんが、決して珍しいことではありません。子供がHSCであることにネガティブな感情を抱く人もいますが、その気質を持っている子供は決して少なくないということを理解しておきましょう。

HSCと発達障害の違い

HSCと発達障害を混同している人も多いですが、このふたつは脳機能に違いがあります。発達障害とは生まれつきの脳機能障害により、幼児の頃から情報の処理方法や物事への理解の仕方、感じ方に特徴がある状態のことです。発達障害には自閉症や知的障害、スペクトラム障害などが含まれます。

一方HSCは脳機能に障害があるわけではなく、感受性が豊かで敏感な気質を持つ子供のことです。敏感なゆえに起こる不快や不安、怖さを感じても言葉でうまく伝えられず、突然泣いたり暴れたりするといった気持ちの表し方をします。HSCと発達障害を同じ意味で捉えている人も多いですが、異なる特徴があるので混同しないようにしましょう。

HSCの特徴

HSCは米国の心理学者、エレイン・N・アーロン氏によって提唱された名称です。アーロン氏はHSCを「ひといちばい敏感な子供」と定義しており、HSCの気質を持つ子供には「DOES」と呼ばれる特徴があると発表しています。

  • Depth of processing
  • ・easily Overstimulated
  • Emotional responsiveness
  • ・empathy and sensitive to Subtle stimuli

Depth of processing」は観察力や洞察力が鋭く、周りの空気を敏感に察知できる能力のことです。自分で得た情報を徹底的に処理してから行動に移すため、慎重になりやすい特徴があります。

「easily Overstimulated」は光や音、痛み、臭い、肌触り、気温など外的要因から受ける刺激が人一倍強い能力のことです。細かいところにも気がつくため刺激が多い場所で長居できません。

Emotional responsiveness」は感情的な反応に強いことです。ボジティブな感情とネガティブな感情のどちらにも強い反応を示します。共感力も高いため、例えば、近くで人が泣いていると自分も悲しい気持ちになってしまいます。

「empathy and sensitive to Subtle stimuli」は人のちょっとした変化を敏感に察知する能力のことです。その場の空気や気配、雰囲気などから人の気持ちの機微を察知することができます。

HSCの子供への適切な接し方5つのポイント

HSCの子供は環境の変化や周りの人の気持ちに敏感に察知するため、少しのことでもストレスを感じやすいと言われています。とはいえHSCの子供にどのように接すればいいか、悩む人も多いでしょう。HSCの子供に接するときに押さえておきたいポイントは、次のようなものがあります。

  • HSCの正確な情報を得る
  • 子供の状態を見守る
  • 感情的に子供を叱らない
  • 味方であることを伝える
  • 子供の感性を否定しない

親の接し方で子供の気持ちが楽になり、気持ちも前向きになれることもあります。決して焦らず、子供のペースに寄り添うことを意識しましょう。

1.HSCの正確な情報を得る

子供がHSCの可能性がある場合、まずは正確な情報を得ることから始めましょう。自分自身がHSCへの理解を深めることで、何が正しい情報かをきちんと判断することができます。HSCに関する正しい情報を得たい場合、インターネットで検索したり友達に聞いたりするのはあまりおすすめしません。

相談相手によっては、アドバイスのつもりが親や子供を追い詰めたり不安を煽ったりするような言葉を投げかけられてしまう場合もあります。インターネットも手軽に情報を得られますが、どこまで真実かわからない情報が発信されていることも多いです。正確な情報を得るためにも、HSC専門家に相談しましょう。

2.子供の状態を見守る

HSCの子供は普段通り過ごしているように見えても、日々刺激される不安や恐怖、不快な気持ちと戦っています。特にHSCは共感力が高く人一倍敏感な気質を持っているため、「親に迷惑をかけたくない」といった気持ちでいることも多いです。本心では親に助けを求めたくても、その気持ちをグッと堪えて過ごしていることも珍しくありません。

「元気そうだから大丈夫」「毎日学校に行っているから」といって安心せずに、子供のSOSに気づいてあげることが求められます。子供のSOSに気づくには、HSCの特徴をしっかり理解することと、自分の子供にはどういった傾向があるのか日頃から行動や様子を観察し、見守ってあげることが大切です。

3.感情的に子供を叱らない

子供の態度や行動に一貫性がないからといって、感情的に叱るのは良くありません。HSCの子供は日によって気持ちにムラがあることが多く、勉強に身が入らなかったり怒りっぽくなったりすることがあります。親からすると躾として「子供をきちんと叱らないといけない」と考える人も多いはずです。

ただ日によって気持ちにムラがあるのは、HSCの子供の気質です。すぐに叱るのではなく少し様子を見てあげるのが良いでしょう。次の日にはまた勉強するようになったり、機嫌が直ったりすることも多いです。

子供を叱りすぎると「自分はダメな人間だ」と自己肯定感が下がり、何もやる気が起こらない状態になることもあります。このような状態になるのを避けるためにも、子供をむやみやたらに叱るのではなく見守ることを優先しましょう。

4.味方であることを伝える

HSCの子供はあらゆる場所で刺激を受けており、不安や恐怖、不快なことに悩まされています。特に多くの生徒が集まる学校では、集団行動の中で苦手なことに直面することも多いです。その度に自分自身を責めてしまい、自己肯定感が下がってしまうことがあります。人と話すことすら嫌になり、学校で孤立することもあるでしょう。

このような場面で親にできることは、見守ってあげることはもちろんのこと、味方であることをしっかり伝えてあげることです。近くに味方でいてくれる存在がいるとわかれば、子供は安心して過ごせます。学校で嫌なことがあっても「自分には味方がいる」と心を強く持てるでしょう。日々の生活の中で味方であることを子供に伝え続けることが大切です。

5.子供の感性を否定しない

HSCの子供はひとつの物事に対して深く考えてしまう傾向があります。例えば周りの子供が「ルールだから」と軽く流せることも、HSCの子供は気になって仕方なくなります。

周囲の子供と違う考え方や行動をするたび、親としては「周りの子と合わせるように!」と口を挟みたくなることもあるかもしれません。しかし自分の子供が周りの子と異なる考え方や行動をとるのは、HSC特有の感性を持っているからです。

子供の感性を全面的に否定するのではなく、「いろいろな考え方があるね」などと認めてあげましょう。HSCの子供はどうしても人と異なる感性を否定されたりバカにされたりされがちです。親が子供の感性を認めてあげれば、「自分はこれでいいんだ!」と自己肯定感が上がります。自分に自信が湧き、新しいことにも挑戦するようになるでしょう。

HSCが不登校の原因になることがある

多くの生徒が集まる学校は、HSCの子供にとってストレスを感じやすい環境です。同級生が先生に叱られていると自分も叱られているように感じたり、大声を張り上げる同級生の声に不快感を感じたりするなど日々刺激を受けています。

小学校や中学校、高校生になると定期的にクラス替えや席替えも行われます。新しい環境に敏感に反応してしまうHSCの子供には、苦痛に感じることもあるでしょう。

このようにHSCの子供にとって学校は、不安・不快・ストレスを感じやすい場所であることは間違いありません。あまりにも精神的に負担の大きい問題が起こると、「もう学校に行きたくない!」と言い始めることも考えられます。

一度学校を離れると家にいることの居心地の良さに気づくため、さらに学校に行かない期間が長くなることもあるかもしれません。子供のHSCが不登校の原因になる場合があることを理解しておきましょう。

HSCの子供が不登校を乗り越えるために

HSCの子供が不登校になったら、どのように対処すればいいかわからない人も多いでしょう。HSCの子供が不登校を乗り越えるために親ができることには、次のようなものがあります。

  • 無理に学校に行かせない
  • 周りの子供と比較しない
  • 子供とスキンシップをとる
  • 学校にHSCの情報共有する

親が焦りを感じると、HSCの子供はその感情も敏感に察知してしまいます。決して焦らず、子供が不登校を乗り越えられるように接してあげましょう。

1.無理に学校に行かせない

「学校に行きたくない!」と言っている子供を無理やり学校に行かせるのは、得策ではありません。「親を心配させたくない」といった気持ちが強い子供が、それでも学校を拒否するのはSOSのサインです。

子供が学校に行きたくない理由が必ずあるはずなので、自分から悩み事を話すまで少し様子をみるのが良いでしょう。自宅で子供が悩み事を話しやすい環境を整えてあげれば、自分から学校に行きたくない理由を話してくれるかもしれません。無理に登校させると、親を敵対視する可能性もあるので注意しましょう。

2.周りの子供と比較しない

すべての子供に対して言えることですが、周りの子供と自分の子供を比較するのは避けましょう。特にHSCの子供が普段から周りと異なる考え方や行動を取りがちなので、本人も周囲と違うことは十分理解しているはずです。

このような状況で「あの子はできるのに、なんでできないの?」などプレッシャーをかけるような言葉をかけてしまうと、そのストレスでさらに学校に行きたくなくなります。周りの子と異なる考え方や行動を取るのは、HSCの気質です。HSCの子供の独特な性質を理解して、認めてあげることが大切です。

3.子供とスキンシップをとる

子供とスキンシップを取ることも、親子の大事なコミュニケーションのひとつです。1日1回で良いので、子供をギュッと抱きしめてあげましょう。親から抱きしめられると、子供は「自分はここに居てもいいんだ!」と安心感を感じるようになります。

子供の味方であることを言葉でしっかり伝えることも大切ですが、それに加えてスキンシップを取るように心がけましょう。子供の自己肯定感が向上して、また学校に行けるようになるかもしれません。

4.学校にHSCの情報共有する

HSCの子供にとって学校生活は刺激が多い場所なので、日々つらい状況にある子供もいるでしょう。この場合は、事前に学校や担任の先生にHSCの情報を共有しておくことが重要です。

特にHSCは心理的な概念であるため、正しく理解している学校の先生は少ないかもしれません。事前に伝えておけば、子供は学校に理解者がいると感じて学校に行くハードルが下がる可能性があります。

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焦らず、子供の気持ちを尊重しよう!

HSCの子供は、音や光、痛み、人の気持ちなど刺激に対して敏感に反応する特性があります。特に学校は多くの生徒が集まって集団生活するため、学校生活に居心地の悪さを感じることも多いです。

HSCの子供は親に心配をかけたくないと頑張って学校に通う子もいますが、自分で対処しきれなくなると不登校に繋がることも考えられます。親が焦りを感じると、子供は敏感に察知してしまいます。決して焦らず子供の気持ちに寄り添いながら、親としてできることを試してみましょう。