中学生が学校に行きたくない理由とは?保護者がサポートできること

中学生の子供から突然「学校に行きたくない」といわれれば、戸惑わない保護者はいないでしょう。子供にとって学校は日常の一部。「行きたくない」にはよほどの理由があり、保護者に助けを求めているとも考えられます。 この記事では、中学生が「学校に行きたくない」と訴える理由と、保護者の対応における注意点とできることを解説します。

「学校に行きたくない」は子供からのサイン

孤独

保護者にとって子供の「学校に行きたくない」の言葉は、喜ばしいことではないはずです。しかしそれは子供にとっても同じで、できればいいたくなかったのではないでしょうか。そう考えれば、これは子供からの「緊急サイン」だといえます。

きっと子供にとっても勇気が必要だったでしょう。そんなサインを、保護者は次のようなことを前提で、受け取る必要があります。

環境と自身の変化に対応できないことがある

中学生になると、これまでの小学校とはさまざまな点で変わります。教科ごとに変わる先生、授業の内容や難しさ、部活動では先輩後輩を含めた人間関係など、変化はあまりに多いといえるでしょう。

さらに思春期を迎えることで、自身の体や心に変化が現れます。何かと保護者に反発したり、急に怒り出したり、これまでとはまったく違う様子に戸惑うかもしれません。しかし、実は子供自身にとってもそれは同じです。

むしろこの変化に、自分だけで対応できない方が普通といってよいでしょう。考えてもどうすればいいのかわからず、それでも「自分でなんとかしないと」と焦り、かえって悩みが深くなってしまうこともあります。子供なりにそれほど真剣に悩んでいるのです。

大人にとってはほんの短い間の悩みかもしれません。しかし子供にとっては大変深刻で、放置すると体調や感情をうまくコントロールできず、成績や人間関係に影響する可能性があります。

直接の理由は一人ひとりまったく違う

中学生は一人ひとり異なる状況で暮らしています。いくら同じクラスの中学生とはいっても、「学校に行きたくない」と訴える理由はまったく違うといってよいでしょう。悩みの原因も違うので、ただ「学校に行きたくない」という訴えにも「こうすればいい」といった一律の対処法などありません

共通しているのは、

  • ・何か心を乱す悩みごとや困りごとがある(家族にいえない場合もある)
  • ・なんとかして解消したい(でも不安、うまくいかない……などでさらに深く悩む)

のふたつくらいでしょう。

これほど真剣に悩むのは、中学生が大人になるために成長しようとしているためとも考えられます。保護者としては、子供と一緒にこの難局をうまく乗り切るため、サポートすることが重要です。

中学生の「学校に行きたくない」理由の種類

疲れた学生

中学生の「学校に行きたくない」理由は一人ひとり違いますが、大別することは可能です。中学生ならではの大きな「変化」にまつわるものが多く、ときには保護者も気づかないこともあります。

ここでは学校に行きたくない中学生の理由の種類を3つ挙げて、それぞれ解説します。理由はこのうち「どれか1つ」とは限りません。理由を探るための3つの視点だと考えてみましょう。

人間関係の変化にうまく対応できない

中学生になると、行動範囲や交友範囲が広くなります。その中で人間関係が変化し、友達同士でも、以前は仲が良かったのに同じグループに入れなかったり、孤立してしまったりする場合もあるでしょう。また部活動などを通じてこれまで知らなかった人間関係や礼儀、ルールに直面するでしょう。急な変化に子供が戸惑うのも当然です。

今はスマートフォンの普及でネットを介したコミュニケーションがあるので、自宅でも学校の人間関係から完全に解放されず疲れてしまう場合もあるでしょう。

このような人間関係の変化に試行錯誤しながらも対応することは、まだ未成熟な中学生にとって大変なことです。疲れ果ててしまい「ちょっと休ませて」という意味で学校に行きたくないと訴えても仕方ないかもしれません。

授業のペースについていけない

小学校では原則としてすべての科目を担任の先生が教えますが、中学校では教科ごとに先生が変わる教科担任制なので、科目によって先生が違い授業の進むペースや教え方も異なります。授業についていけない、内容が理解できないといったことは起こりやすいでしょう。

またおおむね授業の進むペースが小学校よりも中学校の方が早く、内容も難しくなるため、より高い集中力が必要です。小学校と同じペースや集中度では、ついていけないこともあるでしょう。

また数学や英語のように、前の授業内容が理解できていないと、次の内容が理解できないという科目もあります。わかるところまで戻って復習できればいいのですが、そもそもペースが早いので復習の時間まで確保するのは困難でしょう。

親子・きょうだい関係が変化した

例えば弟や妹がいて、中学生になった途端保護者から「年上だからガマンしなさい」「自分でなんとかしなさい」といわれるようになったら、戸惑うのも当然です。理屈ではわかっていても、どこか寂しい、悲しい気持ちになることもあるでしょう。

そうでなくても、何かにつけてきょうだいと比べられ、態度が厳しすぎたり、無関心だったりなど家族間のコミュニケーションに問題があれば、やはり精神的に疲れてしまうかもしれません。

学校も大変なのに、家庭でも心が休まらなければ、疲れ果ててしまうのも当然です。このような状態が続くと、最悪うつ病を発症することもあります。

「学校に行きたくない」に対応するポイント

ネットサーフィン

子供に学校に行きたくないといわれれば、戸惑わない保護者はいないでしょう。しかし勇気を出して「行きたくない」といえた子供の気持ちをしっかり受け止めるためにも、心構えは知っておきたいものです。

ここでは、学校に行きたくないといわれたときでも戸惑わず、しっかり子供に寄り添うための対応のポイントを解説します。

行きたくないことをネガティブにとらえない

「子供は学校に行くのが当たり前」と信じ込んでいれば、学校行きたくない子供を「ズル休み」「怠け者」と責めることになってしまいます。子供の立場になってみれば、まさにそう思われると考えるからこそ「学校に行きたくない」といえず、我慢してしまうのです。

保護者は、子供の訴えに対して「相応の理由があるはずだ」「自分だけではどうしようもないから勇気を持って言えたのだ」と考え、真摯に受け止める必要があります。

例えば「疲れているならゆっくり休むといい」「一緒に考えたいので話して欲しい」などと伝えて、子供に寄り添う態度を示しましょう。子供にとって、それはきっと大きな拠り所になるはずです。

理由が自分でもわからないことはある

大人はよく子供に対して「なぜそんなことをしたのか」と問い詰めがちです。しかし大人でさえ、何もかも事前にはっきりと理由づけて行動しているとはいえないのに、どうして子供が明確に答えられるでしょうか。

思春期を迎えたばかりの中学生です。まだまだ精神的にも未成熟なのですから、理由がはっきりわからないこともあるでしょう。「学校に行きたくない」ことも同じです。むしろ、冷静に考えることができないほど疲れ果てていたり、混乱したりしているのかもしれません。

そんなときはまずエネルギーを回復するためにゆっくり休むと良いでしょう。心が落ち着いて冷静になれば、理由もはっきりするかもしれません。焦らず、時間をかけて解決できる場合もあるはずです。

学校に行かないことで将来への不安は増える

学校に行かないでゆっくり休めば、疲れが癒やされ、高ぶった気持ちも落ち着くでしょう。しかし注意したいのは、それと同時に将来に対する不安が増えてしまうことです。

学校に行かないことにより、学習の機会が減り、学力が落ちることもありえます。また、出席日数が足らず進学へ影響する場合もあるでしょう。

しかし、ただ学校に行けばいいとは限りません。学校に行けるようになっても、しばらくすればまた同じように疲れ果ててしまうかもしれませんし、次はもっと深刻な状況になってしまう可能性さえあります。

それは、漠然とかもしれませんが、子供もわかっています。だからこそこれまで不安に耐えて我慢し、「学校に行きたくない」といわなかったのです。保護者は子供のこんな不安も、しっかり受け止める必要があります。

学校に行きたくない中学生に「できること」がある

頑張る学生

真剣に悩み、学校行きたくないと思う中学生だからこそ、学校に行かない時間を大切にし、自分にとってより有意義なことに使うことが大切です。しかし「なんでもいいから」「手当たり次第に」行動するのはおすすめできません。

ここでは、学校に行かない間、中学生がやっておくと良いおすすめの行動を、理由を添えて5つ紹介します。

ゆっくり休息する

「冷静に考えることができない」「体が疲れている」などと感じたら、まずは心身が回復するまで思う存分、ゆっくり休むことをおすすめします。1日中横になって何もしなかったり、昼夜逆転したりするかもしれませんが、それでも心にゆとりができるまで無理をする必要はありません。

むしろ休まずに疲れが残ったまま焦って行動すると、逆効果になってしまう恐れがあります。

家族と話すことで自分と向き合う

もし心に余裕があれば、今自分が思うことを家族に正直に話してみましょう。うまく話せなかったり、途中でわからなくなったりするかもしれませんが、それでも構いません。話すことはつらさを軽減したり、気持ちを落ち着けたりすることもできます。

家族に向かって話しているのに、いつからか自分と向き合っているように感じるかもしれません。それは、自分を冷静に見つめている証拠です。ゆっくり落ち着いて、しっかり向き合ってこれまでの出来事や考えを整理しましょう。

わかるところから勉強を進める

授業内容がよくわからず、わかるところまで戻って復習したいなら、この機会に思う存分勉強するのもよいでしょう。将来進学するにしても就職するにしても、勉強してついた学力はきっと役立ちます。

学校からもらった教科書や問題集、プリントなどの教材はたくさんあるはずです。もしそれ以上前の段階まで戻りたければ、新しく問題集や参考書を用意しましょう。

通信制高校への進学を目指す

人間関係が原因で将来が不安なら、通信制高校への進学を目指すのも良い方法です。通信制高校は、全日制の高校とはカリキュラムや学習方針が違う学校も多くあります。中には週1日や月2日だけの登校で、あとはテスト結果で成績が決まるという学校もあります。

そのため現在、体調が不安定で学校に行けない人には、出席日数が少ないと進級・進学が難しい全日制の高校より、通信制高校の方がおすすめです。

最近では個別学習できる通信制高校も増えてきました。必要に応じて中学生の習う単元を復習するなど、しっかり学力がつくカリキュラムも充実した学校もあります。そんな高校なら、学力に不安があっても進学や就職の具体的な道が見えてくるはずです。

ほかにどんな通信制高校があるか、自分の進路に合う学校をぜひ探してみましょう。

必要なら家族と別の相談先を探すことも

どうしても気持ちを打ち明けられる人がいなければ、家族とは別の次のような相談先に助けを求めるという方法もあります。

  • スクールカウンセラー:学校にいる生徒からの相談を受けてくれる専門家   
  • 教育相談センター:都道府県など自治体が運営し、直接訪問や電話、メールで相談できる
  • ひきこもり地域支援センター:都道府県や指定都市に設置された、ひきこもりに特化した相談窓口で、臨床心理士や社会福祉士などの専門家に相談できる
  • 子供の人権110番:不登校やいじめ、親からの虐待など子供が関係する様々な問題を解決するための相談窓口

相談先を変えるだけで、意外なほど冷静に考えがまとまるときもあります。身近に相談相手がいなくても、このような相談先があることは覚えておきましょう。

「学校に行きたくない」に対して保護者ができること

ハート

保護者は子供が大切だからこそ、「勇気を持って欲しい」「負けないで欲しい」と思うものです。しかしときにはその激励が、子供にとって苦痛になることを知る必要があるでしょう。ここでは子供の「学校に行きたくない」に対して保護者ができることを3つ紹介します。

感情的に叱ったり責めたりしない

子供は保護者とは世代が違うことは、接するときの前提として頭にいれておきましょう。自分が中学生だったときとは、社会の状況はまったく違います。子供に「自分が中学生だった頃は……」などといっても理解できず、かえって反発を招くことにもなりかねません。

ましてや感情的に精神論を唱え、叱ったり責めたりするのは避けたいものです。子供が勇気を出していったにもかかわらず「やっぱりわかってもらえない」と事態を悪化させてしまう可能性さえあります。

話をするより「聞く」に徹する

子供にとって保護者の言葉は、保護者が思う以上に「重い」と意識することも大切です。保護者はなにげなくアドバイスしたことも、子供が「命令」のように受け取り、プレッシャーとなって子供を苦しめてしまうこともあり得ます。

子供が話せないときは話せるまで待ち、話し始めたら保護者の考えを挟まず、じっくり「聞くに徹する」ことが大切です。適度にあいづちを打ち「ちゃんと聞いてるよ」と示すとより話しやすくなります。

保護者からも意見を言いたくなりますが、まずは子供の悩みや考えを聞くことが重要なのです。

将来に必要な情報はあらかじめ調べておく

子供がこれからどうすることができるか、進学や就職について保護者の願いや思惑もあるでしょう。もちろん子供自身でも調べられるかもしれませんが、情報の探し方やどこに尋ねるべきかは保護者の方がずっとわかっているはずです。子供の将来にまつわる情報は、保護者も積極的に集めておきましょう

例えば進級や進学のことなら学校の先生に、通信制高校への進学なら直接それぞれの学校に尋ねることができます。より具体的な進学に必要な要件や、費用に関係する情報ほど重要です。

子供の将来に必要な情報は、できる限り調べておきましょう。

中学生の「学校に行きたくない」にしっかり向き合おう

面談

保護者にとって中学生は、まだまだ子供かもしれません。しかし子供は子供なりに、さまざまなことを真剣に考え悩んでいます。「学校に行きたくない」という言葉も、安易に「ズル休み」「怠け者」などと片付けてしまわず、真剣な訴えとしてしっかり向き合いたいものです。

子供との対話を重ねることで、お互いにできることや将来の希望を見出すことができます。保護者はそれをしっかりサポートし、子供と一緒に「学校に行きたくない」に向き合って、将来を切り開いていきましょう。