高校を留年しても自分に合った進路は拓ける!高校の留年の基準と実情

高校を留年しそうだとわかったら誰もが不安に感じます。そうなったときこれからどのような進路が選べるのでしょうか。この記事では、高校における留年の基準と現状、留年のデメリットとメリットを解説し、留年したあとに選べる進路の選択肢を紹介します。

高校における留年の基準と現状

ここでは、高校での進級基準から留年となってしまう要件を示し、実際に留年する高校生がどれくらいいるのかという現状を紹介します。

本来高校は義務教育以上のことを学びたい人のための学校です。どのような理由があるにせよ、基準を満たさなければ留年することになります。留年しない、つまり進級するカギとなる一般的な基準を見てみましょう。

進級に必要な基準

高校で進級・卒業するには、各学年で必要な単位の取得が必須です。単位は「履修すべき科目をきちんと習得したという証明」と考えるとよいでしょう。

単位を取得するには、前提となる普段の生活における素行に問題がないことと、成績や授業への出席が一定レベル以上である必要があります。ここでは、これら進級に必要な基準について解説します。

基準以上の成績を取る

1つめの基準は「成績」です。なかでも大きな影響を与えるのは定期テストの点数でしょう。基準に満たない点数を取ると「赤点」とされ、補修授業や追試験などを通して学び直す必要があります。

原則として成績に影響するのは定期テストだけで、学外で受ける模擬試験は影響しません。これは模擬試験が大学受験などを前提に、その時点での学力を確認するための試験だからです。

学校によっては、成績に次のような基準を設けている場合もあります。

  • 通知表の成績:「1が1つでもあったら留年」「評定の合計が10未満なら留年」など
  • 提出物の提出状況や授業での態度

このように進級のための成績の基準は学校によってさまざまです。「留年してしまうのではないか?」と不安であれば、まずは学校にこの基準を確認すると良いでしょう。

授業への出席

授業への出席日数を満たしていることは、進級・卒業の要件の1つです。ただし全体の出席日数で判断されたり科目ごとの出席日数で判断されたりと、基準は学校によって異なります。

多くの全日制高校では出席すべき日数の「3分の1」を基準としていますが、より厳しい基準では「4分の1」としている学校もあるようです。欠席日数には、病気やケガでの入院や、何らかの理由で受けた停学処分の日数も含まれます。

科目ごとの出席で判断される場合は、より注意が必要です。例えば「ある日早退したため数学の授業は受けたが物理の授業は受けていない」場合は、物理の欠席がカウントされます。

授業への出席についても進級の基準は学校によって異なります

学校内外での素行に問題がない

学校内外での素行は、成績や出席日数とは異なる基準です。次のような素行の問題は、進級できないばかりか退学などより厳しい措置が下されることもあるので注意が必要です。

  • ・万引きなどの窃盗
  • ・喫煙や飲酒など
  • ・自転車を含む交通事故や危険運転など

素行に問題があっても挽回するチャンスがある場合もありますが、理由を問わず即留年となることもあります。普段からこのような行動は慎むべきでしょう。

留年しないよう救済措置のある学校も多い

高校の進級基準は義務教育より厳しいです。その一方で、ほとんどの学校は次のような何らかの救済措置を設けています。進級基準に達しないおそれがあるとわかった時点で学校から何らかの形で注意を促し、救済措置を提示するのが一般的です。

  • 成績(定期テストの赤点)の救済措置:追試験・補習・レポート提出 など
  • 出席日数:放課後や夏休みなどの長期休暇中の補習 など

救済措置についても習得の程度や態度は重要です。安易に「追試験や補習を受ければいい」などと考えず、真剣に取り組む必要があります。

全日制高校で留年するのは全体の0.3%程度

文部科学省による「令和元年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導状の諸課題に関する調査」によると、令和元年度(2019年度)に留年した高校生は10,719人で、全高校生の0.3%程度でした。割合を見れば少ないように感じるかもしれませんが、1万人を超えていることを考えれば少なくないと言えるでしょう。

誰もが順調に思うような人生を歩むわけではありません。高校の進級・卒業がうまくいかないとしても、それはたまたま人生の「うまくいかない時期」が今だったというだけです。

留年しても人生は続きます。大切なのは「これからどうしたいのか」です。感情的にならず心を落ち着けましょう。

参考:文部科学省「令和元年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導状の諸課題に関する調査」

高校を留年するデメリットとメリット

高校の留年には「デメリットしかない」と思うかもしれませんが、視点を変えれば「メリット」と言えることもあります。デメリットだけに縛られず、これからの人生にメリットを活かしていくことも重要です。

ここでは高校留年のデメリットを整理し、メリットと考えることができる視点について解説します。

留年のデメリット

留年すると、これから1学年下の人たちと残りの高校生活を過ごすことになります。するとおよそ次のようなデメリットがあると言えるでしょう。

  • 1年生でない場合はよくも悪くも目立つ:1年生ならただの「年上の同級生」ともなりやすいが、2年生・3年生だと留年していることが知られクラスの中で目立ちやすく、輪の中に入りにくい可能性がある
  • 学費が1年分多くかかる:特に私立高校は負担が大きい
  • もう一度同じ内容の授業を受けなくてはならない:わかっていない授業は学び直しとして有効だが、習得している授業ももう一度受けなくてはならない
  • 留年したからといって進級できるとは限らない:進学校など進級の基準が厳しい高校では、学び直したとしても進級できるとは限らない

高校生が学習する上で、環境や人間関係は特に重要です。留年した事実を「恥ずかしい」「バカにされる」とネガティブに捉えがちですが、これからを考えるとそのプレッシャーやストレスに負けない強さを持つ必要があります。

間違いなく進級するために、成績の悪かった科目だけでなくほかの科目も油断せず取り組むようにしましょう。

留年で得られるメリット

デメリットばかりが目立つ留年にも、見方を変えれば次のようなメリットがあるといえます。

  • 同級生とは別に、1年年下の人たちともつながりができる:新しいクラスの人たちと打ち解ければ、同級生より多くの人たちとつながることができる
  • 人とは異なる視点を持ち、精神的に強くなれる:留年という貴重な体験から、自分やこれからのことを人とは違う視点で考えることができる。「恥ずかしい」などのネガティブな感情に打ち勝つことで精神的に強くなれる
  • 同級生が先に経験する受験・就職の情報を得られる:同級生とのつながりも維持すれば、1年先の受験や就職の貴重な情報が得られ、自分の将来に生かせ
  • 学校行事を人より多く体験できる:文化祭や体育祭など楽しみな行事を人より多く体験できる
  • 中退や転校のような手続きが必要ない:留年は学校内でのことなので手続きは特に必要ない

特にあと少しのところで留年になってしまった人にとって、学び直しは学力向上の面で有利です。また信頼できる先生がいれば、留年するほうが中退・転校よりも安心できるでしょう。

高校を中退して選べる進路

仮に留年が決まり中退したとして、どのような進路が選べるのかを考えてみましょう。留年はさまざまな点で精神的な負担は大きく、そのため中退を選ぶこともあります。ただそうすると、その後どうするかは大きな問題です。

留年の原因が「学校に合わなかった」「人間関係がうまくいかなかった」といった場合は、思い切って環境を変えるとうまくいくこともあります。ただ、中退する前に進路は慎重に検討しておくことが大切です。

別の高校へ編入学する

「高校は卒業しておきたい」「将来大学や専門学校へ進学したい」と思うなら、別の高校へ編入学するという方法があります。

しかし全日制高校に編入学する場合は一定の学力が必要になる上、病気や引越しといった特別な事情がないと編入学できないことが多いことから、かなり困難でしょう。

おすすめするのは、定時制高校や通信制高校です。

定時制高校は平日に通って授業を受けますが、授業は昼から夕方または夕方から夜の時間帯にあるため昼間は働いている人もたくさんいます。入試は面接や小論文だけという学校も多いため、学力面で心配がある人もチャレンジしやすいでしょう。

通信制高校には、毎日通学する必要がないコースもあります。勉強は決められた教材を使って自主的に進めます。単位取得の基準は主に年に数回の定期テストやレポートです。定時制高校と同様、入試では高い学力が求められません。学校によっては、個々の学力に合わせ中学校の授業内容も受けられることもあります。

高卒認定試験に合格して大学へ進学する

高卒認定試験は、正式には「高等学校卒業程度認定試験」とよばれる試験であり、合格すると高校卒業と同等の学力があると認定されたことになります。

合格すれば履歴書に「高等学校卒業程度認定試験合格」と書くことはできますが、「高等学校卒業」と書くことはできません。高卒認定試験はあくまで学力程度の認定であり、卒業を示す資格ではないからです。

そのため高卒認定試験に合格しても、その後どこにも進学しなければ最終学歴は「中学校卒業」または「高校中退」になります。高卒認定試験は、高校卒業していない人が進学するための制度ですが、就職先によっては合格していれば「高校卒業」とみなされる場合もあるため、いずれにしてもこれからの進路には有効です。

将来の選択肢を広げる意味でも、高校中退後は高卒認定試験合格を目指すことは大いにおすすめできます。

高校中退での就職は難しい

高校を中退すると、最終学歴は「中学校卒業」または「高校中退」です。中卒で社会に出て活躍している人はたくさんいますが、現実的に考えると中卒での就職はかなり難しいかもしれません。

高校を中退しても明確な夢や展望がある場合は別ですが、将来を模索しているのであれば、定時制高校や通信制高校に通い高校を卒業するのがおすすめです。経済的な事情があるなら、日中のアルバイトと定時制高校の両立を目指してみてはいかがでしょうか。

通信制高校をおすすめする理由

高校を留年し、中退した後の進路として特におすすめなのが通信制高校です。通信制高校は学校ごとにカリキュラムが異なり、毎日登校する必要のないクラスも多く設けられています。

編入学する本人にとっては、学習する環境と人間関係の面で大きなメリットがあります。ここでは、通信制高校をおすすめする理由を2つ詳しく見てみましょう。

学力不足は充実したサポートで解消できる

高校を留年することで「将来が学力不足によって不利になるのではないか?」と心配かもしれません。多くの通信制高校には個別指導でしっかり学力をつけることができるクラスがあるので安心です。

個別指導で本人の理解度に応じてわかるところまでさかのぼり、わかるまでじっくり教えてもらえます。

具体的にどのようなサポートがあるか、編入学を決める前に公式Webサイトやパンフレット、実際の見学などを通して確認しましょう。

生徒の年齢がさまざまなので気負いが少ない

高校を留年すると、1年下の人や同級生との関係、先生の目など意識してしまい、どうしても気負いやプレッシャーを感じるものです。

その点通信制高校は生徒の年齢はさまざまです。なかには働きながら通う人や一度退学して入学し直した人などもいます。通学する理由も状況も異なるため、別の高校での留年もさほど気にならないでしょう。

さまざまな経験をした人と接することで視野が広がり、これからの進路の選択肢が増えるかもしれません。新たな気持ちで再スタートするには、ぴったりの環境だと言えるでしょう。

高校を留年しても自分に合った進路は拓ける

高校を留年すると、どうしてもデメリットが発生します。しかし選べる進路は多く、進学や就職をすることは可能です。

留年には、相応の理由があります。その後どんな進路を選ぶにしても、留年の理由を踏まえ、自分に合った進路を選ぶことが重要です。特に通信制高校は、学習におけるさまざまな課題をクリアしやすい環境です。考えられる最適な進路を、じっくり検討して選びましょう。