集団行動が苦手な人の進路は?苦手克服の注意と進学・就職する方法
公開日:2021年09月13日 更新日:2021年09月13日
子供が学校に行きたくない理由の1つに「集団行動が苦手だから」というものが挙げられます。保護者にしてみれば将来が心配で、なんとか克服できないかと考えてしまうのは当然でしょう。 ただその場合、集団行動が苦手な理由についてもしっかり考える必要があります。この記事は、集団行動が苦手な人の進路について紹介します。集団行動で得られるメリットと、苦手だという人の特徴や心理的要因を解説し、苦手を克服する方法も紹介するので参考にしてください。
- 集団行動で得られるメリット
- 集団行動が苦手な人の特徴
- 集団行動が苦手な人の心理的要因
- 集団行動に対する苦手意識を克服する方法
- 苦手意識を克服するときの注意点
- 集団行動に合わせない生き方もある
- 集団行動が苦手な理由が新たな道へのカギ
集団行動で得られるメリット
これだけ多くの人が「学校」という場で長期間の集団行動を経験しているのは、集団行動によって得られるメリットがあるからです。学校だけでなく、集団行動をする場面がある、多くの企業や組織でも共通のメリットがあるといってよいでしょう。
ここではまず、集団行動でどのようなメリットが得られるかを解説するので参考にしてください。
大勢の人と助け合える
大勢の人と助け合うことができるのは大きなメリットです。集団で同じ目的を共有したとき、能力や経験の異なる大勢の人間が力を合わせると、思った以上の結果が得られる場合があります。これは単純な足し算や掛け算では計算できない、思わぬ相乗効果が得られるためです。
相乗効果とは、メンバーが互いの仕事を認識し、必要に応じて「助け合う」ことで生まれます。自分の苦手な面を補ってくれるメンバーの存在は心強いでしょう。
集団行動には、人と助けあうことで「心強さ」や「安心感」を得られるメリットもあります。
孤独や寂しさがなくなる
集団の中でいると、孤独や寂しさがなくなります。作業そのものはひとりでこなしていても、周囲にたくさんの人がいれば、雑談したり相談したりと人に関わりを持つことで寂しさは解消でき、雑談できるような相手があれば孤独感も少なくて済むでしょう。
集団行動では、ときに複数で実りのない会話や暇つぶしをしますが、これは孤独を感じることさえなくしてしまう、寂しさを避けるための知恵なのかもしれません。
より大きな成果を目標にできる
集団で何かに取り組むと、ひとりで取り組むときよりも大きな成果を目指すことができます。例えばひとりで1時間でできる仕事なら、100人いれば同じ時間でひとりでやる100倍の量をこなすことができます。
ミスが許されない大きなプロジェクトなら、さまざまなメンバーがいる集団行動だからこそ得られる多彩なアイデアが役立つはずです。これもひとりだけの知恵や経験だけでカバーするのは難しいでしょう。
このように仕事の効率を上げたり、知恵を集めてよりよい仕事にしたりできることは集団行動のメリットです。必ず思うような結果が得られるわけではありませんが、少なくともより大きな成果を目指すことはできます。
場の空気を読める力を培える
場の空気を読めるようになるのも、集団行動のメリットでしょう。集団ではメンバー同士がさまざまな形でコミュニケーションを取ります。コミュニケーションには言語を介する「言語コミュニケーション」と、言語以外を使う「非言語コミュニケーション」があり、集団行動ではその両方が必要です。
非言語コミュニケーションは、相手の表情や全体の状況などから、いわゆる「行間を読む」「空気を読む」などの「推測する」スキルだといえます。非常に抽象的ですが、特に「空気を読んでみんなと同じ」にすることが求められがちな日本では必要なスキルです。
教師や友人、先輩、後輩など立場が違えば、求められることは変わります。空気を読める力を培うためには、コミュニケーションの成功や失敗を繰り返しながら練習することが必要です。集団行動は、空気を読めるようになるための実践練習の場といえます。
集団行動が苦手な人の特徴
メリットの多い集団行動ですが、苦手という人もいます。苦手なことは誰にでもあるものですが、こと集団行動が苦手となるとデメリットも多いので、なんとかしたいと深刻に思いやなむ方も多いでしょう。ここでは、集団行動が苦手な人に共通する特徴を詳しく解説します。
人に合わせることが難しい
集団行動が苦手な人の1つ目の特徴は、人と合わせることがなかなかできないことです。集団ではときに、同じように行動することが求められます。
自分がやりたいことを優先したり、またはほかの人がどうしたいと思っているのかわからない状態で行動してしまうと、周囲から「浮いて」しまいます。このようなことが続けば自信をなくし、集団行動が苦手になっても仕方ないでしょう。
仲間外れにされたり、心ない言葉で傷ついたりすればトラウマになって、集団でいることに恐怖を感じてしまう可能性もあります。集団の中にいる自分に自信がなくなり、これまでやってきた勉強やスポーツなどにも影響するかもしれません。
周りに気を遣いすぎて疲れる
周りに気を遣いすぎて自分の意見を言えない人も、集団行動が苦手な傾向があります。周囲の人とうまくコミュニケーションが取れないと、自分がどうみられているのか、言動がどうとらえられているかがとにかく気になり、これ以上嫌われたくないという恐れから気を遣いすぎ、疲れてしまうこともあります。
自分が本当は違う意見を持っていても、他人の意見に合わせたり我慢をしたりするとストレスになります。やがて集団でいることが面倒になったり、体調を崩してしまったりすることもあるでしょう。
自分の考えを最優先して行動する
気を遣いすぎるタイプとは逆の、自分の考えを常に最優先するような人も、集団行動は苦手です。自分の考えが正しいという論理があり、他の人の希望や意見を聞き入れようとしなければ、周囲の人が敬遠してしまうかもしれません。
このタイプの人にとっては、放っておかれること自体が理想的な過ごし方という場合もあります。人に合わせて行動することが嫌いなので、逆にいえば「個人行動に向いている」といえるでしょう。
集団行動が苦手な人の心理的要因
集団行動が苦手な人の特徴には、その背景に心理的な要因があります。苦手を克服するにはただ特徴を変えようとするのではなく、心理的要因を理解する必要があるでしょう。
ただ、この心理的要因はその人が今までの人生で形成してきた性格ともいえます。克服するには、そのような性格形成に至った原因を理解して、方法を探ることが重要です。
独特の価値観を持っている
集団行動が苦手な人は独特の価値観を持っている場合が少なくありません。人間は一般的に、同じような価値観を持った人とうまく付き合いやすいといわれます。好きなことや大切なことの優先順位が似ていれば、一緒に行動したり会話したりしていても違和感は少なく、相互の理解がしやすいためです。
一方で価値観が違うと言動の傾向や好みも異なるので、お互いの理解は難しくなります。そのため、独特な価値観を持つ人は理解者が少ないことが多く、大人数の集団では孤立しがちです。価値観は人生の中で得られた独自の法則やルールという面があるので、すぐに変えるのは難しいでしょう。
自分に自信がない
自分に自信がないという心理も、集団行動を苦手とすることに繋がります。これまでの人生の中でうまくいかなかったことを気にするあまり、そのときの自分の判断や考えだけでなく今の自分にも自信が持てないことがあります。
自分に自信がないと、集団で意見を求められても、自分の意見を主張することが苦手になるものです。うまくいかなかったときの恐怖を思い出して周囲の人の意見に流され、結果として自分の意にそぐわないことをしてしまうため、集団行動にネガティブな印象を抱きがちです。
他人に干渉されたくない
他人に干渉されたくないという性格の人も、集団行動は苦手です。集団行動では、譲歩や妥協が必要な場面もありますが、このようなタイプの人は周囲の人と衝突することも多く、結果孤立してしまいます。
頑固な理由は、単に「正しいと信じている」だけでなく、「自分を正当化したい」「弱みを見せたくない」「人のいう通りにしたくない」などさまざまです。これも1つの性格ともいえるため、簡単に変えづらい要因かもしれません。
発達障害の可能性も
集団行動する中で次のような特徴が見られるなら、発達障害の可能性も考える必要があるかもしれません。
- ・人の気持ちや感情を読み取れない
- ・集中力が持続せず、忘れっぽい
- ・計画性に乏しく、衝動的に行動する
- ・文章を読むのが苦手 など
これらはいわゆる「発達障害」に見られる傾向で、程度の差はあるものの、どれも実生活には特別な配慮が必要です。
発達障害は、本人はとてもつらいのに周囲が理解できないといったことが起こりがちです。 本人も気づいていない場合も多いので、もし「発達障害かもしれない」と感じたら専門の医療機関で診察を受けると良いでしょう。
本人は、わけもわからずつらい日々を過ごしているかもしれません。本人のつらさを少しでも取り除くためにもできるだけ早めに受診することをおすすめします。
集団行動に対する苦手意識を克服する方法
ここまで見てきた通り、集団行動の苦手意識の原因はさまざまで、間違いなく克服できるひとつの方法があるというわけではありません。しかし原因が発達障害である場合を除けば、次のような、比較的始めやすい方法が苦手意識を克服するきっかけになるかもしれません。
ここでは、集団行動に対する苦手意識を克服する方法について解説します。
他人に興味を持ってみる
他人に興味を持ってみることも、集団行動への苦手意識を克服するひとつの方法です。集団行動が苦手な人は「集団が苦手」「集団が嫌い」と考える人も多いでしょう。
しかしよく考えてみれば集団は個人の集まりで、さまざまな好みや考えを持っている人が集まっているひとつの形態です。視点を集団から個人に変え、興味を持つことから始めましょう。
もし相手が自分と同じことに興味を持っていると感じれば、それをきっかけにして見る目が変わり、今までとは違う関係を作ることも可能です。
ただ他者を「理解できない」で済ましてしまわず、他人に興味を持つことで集団への恐怖心も薄れ、集団行動への苦手意識もだんだん小さくなるかもしれません。
自分に合った集団を探す
今いる集団の行動につらさを感じているなら、その他に自分に合った集団を探すのも良い方法です。例えば学校であれば、所属するクラスがありますが、部活動や生徒会活動、委員会活動など他にも集団はあります。
学校の外に目を向ければ、地域のボランティアや学習塾、習い事の教室、自宅のご近所さんやコミュニティも集団のひとつです。ひとりでも信じられる人がいれば、そこから他者を理解するための突破口が開けます。次第に交友の輪を広げれば、より多くの人と接することもできるでしょう。
今いる集団が世界のすべてではありません。自分がいて楽しいと思える集団を、じっくり探してみましょう。
集団行動の少ない通信制高校を見つける
集団行動が苦手だから進学は難しいと感じているのであれば、通信制高校を検討してみることをおすすめします。通信制高校は全日制の高校に比べて、学校ごとに独特の学習方法や活動内容が設けられたり、集団行動が必要な行事などが少なかったりするからです。
通信制高校では、全日制の高校と同じように毎日登校する学校もあれば、週1日や月2日登校という学校もあります。自主学習や遠隔授業もありますが、その他の時間は原則として自由に使えるので、スポーツや好きな科目の勉強、アルバイトに打ち込むこともできるでしょう。
どんな学校が合うかをよく考え、通信制高校のWebサイトや入学案内などを参考に探してみるとよいでしょう。
苦手意識を克服するときの注意点
いくら集団行動が苦手だからといって、苦手意識を克服するために無理をしなければならないわけではありません。将来のためを考えれば、心身の状態を崩すような無理はせず、自分にあった方法で苦手意識を克服することが大切です。
集団行動の苦手意識を克服するときは、あらゆる方法において次のような点に注意する必要があります。
無理して周囲に合わせる必要はない
集団行動には確かにメリットも多く、苦手意識を克服することは大切です。しかし、無理をして心身のバランスを崩してしまい、自信や意欲を失ってしまっては元も子もありません。
無理して我慢したり、周囲に合わせたりするのではなく、今の自分にできる範囲で集団行動ができるようになることを目標にしましょう。
疲れたらひとりの時間を作ってリラックスする
今までやっていないことをすれば、疲れるのは当然です。苦手意識を克服する過程で「疲れているな」と感じたら、意識的に自分がリラックスできるよう努めましょう。もし「ひとりでのんびりするとリラックスできる」のであれば、ひとりになる時間をつくり、リフレッシュすることがおすすめです。
この時間は、また克服に努めるために必要な貴重な時間です。静かな部屋で横になってしばらく目を閉じる、または5分間ぼーっと過ごすだけでも気分転換になります。「休むことも大切なこと」と考えましょう。
集団行動に合わせない生き方もある
なんとか集団行動への苦手意識を克服したいと思っても、どうしても克服できない可能性もあります。克服するのではなく、集団行動に合わせない生き方ができないか、模索するのもひとつの方法です。
この生き方は、決して他人を無視するような自分勝手な生き方ではありません。自分のペースややり方を守りながら、無理をせず社会と調和して生きることです。
ここでは、そんな「集団に合わせない生き方」について考えてみましょう。
集団行動ではない仕事はある
集団行動が苦手であることにはデメリットもありますが、集団行動が苦手でもできる仕事はあります。会社員や公務員など企業や組織の一員の仕事は、割り振られた仕事を日々こなしていくことですが、これとは異なるスタイルで仕事をするのが自営業者です。
自営業者は自分で仕事を作ったり見つけたりしてこなすことで収入を得ています。仕事内容は自分の得意なことやできることで、十分な収入が得られることが前提です。場合によっては経理や総務、営業までひとりでこなす、まさに「ひとりで会社を運営する」ような働き方です。
以下はほんの一例ですが、自営業としやすい仕事を見てみましょう。
- ・人との関わりが少ない:Web関連の仕事、警備員、トラック運転手、シェフ、パティシエ など
- ・マイペースに仕事ができる:フリーランス(ライター、プログラマー、イラストレーターなど)、塾の講師、起業(やりたいことを仕事にする会社を作る)など
- ・得意なことを仕事にする:芸術家(イラストレーターやミュージシャンを含む)など
ただし、どれも専門家としてきちんと責任を持って仕事をやり遂げる能力が必要です。簡単ではありませんが、「自分の好きな仕事をじっくりやりたい」人に向いている働き方だといえます。
自分に合った学び方ができる場所もある
仕事がそうであるように、学びも自分に合った方法を見つけることが大切です。専門的な力を身につけるためには、高校を卒業して大学へ進学する、専門学校で資格を取るといった方法があり、そのために必要な課題をクリアしていく必要があります。
高校にも公立や私立、普通科や専門学科などさまざまありますが、特に集団行動が苦手・嫌いと感じるなら、無理せず通える学校としてフリースクールや通信制高校という選択肢もあります。
集団行動しない通信制高校の学び方
通信制高校では、全日制高校で受ける授業とは違い、オンライン授業や週1日または月2回など全日制に比べて少ない登校日数で高校卒業資格を得ることができます。学校によってカリキュラムや必要な登校日数が違うため、自分にぴったり合う学校が見つかるでしょう。
通信制高校には、次のようなメリットがあります。
- ・中学校の学習内容からの復習もできる
- ・無理のないスケジュールで通学、学習が可能
- ・大学受験対策にも対応している
- ・学校によっては個別での学習指導やメンタル面でのサポートをしてもらえ
スタッフがカウンセラー研修を受講し、資格を取得している通信制高校も少なくありません。中には引きこもりや体調不良でなかなか家から出られない生徒のために、教師が自宅まで来てくれる学校もあるようです。人とは違った価値観を持つ人にとっては、安心できる要素だといえます。
ただし、大切なのはあくまで「自分に合うかどうか」です。自分の学習のペースや学力レベルに沿って、希望する将来のためにどれほどサポートしてもらえるかは、しっかり確かめる必要があるでしょう。
集団行動が苦手な理由が新たな道へのカギ
多くの人が企業や組織で集団行動をして生活していますが、それだけが人の生き方ではありません。集団行動が苦手な人も、苦手を克服したり、苦手なまま生きる方法を探したりすることで、将来を切り開くことはできます。
ただそのためには、苦手な理由やその心理的要因をきちんと確かめることが必要です。将来何を仕事にしたいか、そのためには何を学ぶ必要があるかを定め、具体的に可能な手順を確かめましょう。
高校でいうと、通信制高校なら人との接触が比較的少ないカリキュラムを選ぶことも可能です。苦手を少しずつ改善したい、しっかり勉強したいという希望があるなら、ぜひ一度検討することをおすすめします。