通信制高校の公立と私立の違い!どっちがいいか解説

公立の通信制高校は学費が安いため、進学を考えている人もいるでしょう。たしかに学費を安く抑えて高卒資格を取りたいと考えている人には、公立の通信制高校がおすすめです。 一方で、私立と比べて学習面やメンタル面におけるサポートが乏しいなどのデメリットがあることも事実です。 この記事では、公立の通信制高校について、学費や学習スタイルなど私立と比較しながら解説します。 通信制高校への進学を検討しているものの、公立と私立で迷っている人はぜひ参考にしてください。

公立の通信制高校とは?

公立の通信制高校の概要について以下の点を説明します。

  • 地方自治体(都道府県)が運営している
  • 原則は住んでいる地域にある高校に通う

地方自治体(都道府県)が運営している

公立の通信制高校は、地方自治体(都道府県)が運営している学校であり、全国に79校が開校されています。(※令和6年時点)

北海道のような広大な地域内に1校しかない場合、周辺地域に通信制高校と同じ役割を持つ「協力校」を設置している自治体もあります。

距離があり、登校日に通信制高校まで通うことが困難な場合、協力校でスクーリングやテストを実施することができます

原則は住んでいる地域にある高校に通う

公立の通信制学校は、住んでいる自治体が運営している高校へ通うことが原則です。

公立の学校は、各都道府県が設置した場所で、国が定める教育方針や自治体の予算にもとづいて教育サービスを提供しています。そのため、自治体の管轄区域に居住している生徒に対して、優先的に教育を行います

通信制高校には「広域性通信制高校(以下、広域校)」と「狭域性通信制高校(以下、狭域校)」があります。広域校は、学校所在地の都道府県のほか、隣接する2つ以上の都道府県から入学が可能です。一方、狭域校は、学校所在地の都道府県および隣接する1つの都道府県から入学できます。

公立の通信制高校は、ほとんどが狭域校のため、住んでいる地域によって入学できる学校が限られます。

私立の通信制高校とは?

私立の通信制高校は、民間の学校法人や企業が運営しており、全国で224校が開校しています。(※令和6年時点)

私立の通信制高校は広域校が多いため、公立に比べて選択肢が幅広いです。

公立の通信制高校と同様に、国が定めたカリキュラムに沿って学習を進めますが、生徒自身が自由にスケジュールを組める場合が多いです。また、学校独自のサポートやカリキュラムが用意されていることもあります

さらに、美容や芸術分野などに特化した、独自のクラスが用意されていることもあります。

【通信制高校】公立と私立の違い

通信制高校における公立と私立の違いについて徹底解説します。

学費

公立と私立では、学費が大きく異なります。それぞれ、下記の費用がかかります。

公立 私立
入学金 約500円 約1~5万円
3年間の授業料 約3万円 約90万円
3年間の諸費用 約6万円 約18万~30万円
3年間でかかる費用の総額 約90,500円 約109万~125万円

私立の通信制高校は、公立と比べて約10倍以上もの学費がかかることがわかります。私立は、学校独自の学習サポートやカウンセラーの設置など、生徒へのサポートの手厚さが学費に反映されていると言えるでしょう。

高校の授業料や教育費は、国や自治体の支援制度を利用することで負担を減らすことが可能です。

たとえば、文部科学省の「高等学校等就学支援金制度」を利用すれば、授業料の負担を軽減できます。公立であれば、授業料を実質無償化できます。

通信制高校の学費の負担軽減や無償化については、通信制高校の学費を無償化!利用できる公的制度を徹底解説!で詳しく解説しているのであわせてご覧ください。

入学できる時期

通信制高校の入学・編入・転入時期は、公立と私立により傾向が違います。それぞれ、下記の時期に生徒を受け入れることが多いです。

  • 公立:4月、10月
  • 私立:4月、7月、11月、1月

一方、公立・私立にかかわらず、生徒を常時受け付けているところもあります。公立の場合、定員割れすると補欠募集することもあり、上記以外の時期でも受け付けることがあります。

クラス・コース

国が定めたカリキュラムに沿って授業を受ける点は公立も私立も同じです。私立には、普通科のほかに、専門的な知識が学べるクラスもあります。たとえば、下記のようなクラスがあります。

  • 美容系クラス:ヘアカット、メイクなど美容に関する多様なスキル、知識が習得できる
  • IT・プログラミングクラス:プログラミングの知識やスキルが習得できる
  • 特別支援学級:障がいや特徴のある生徒を受け入れる

生徒が興味を持っている分野について深く学ぶことができます。また、実践的なスキル習得して将来の仕事や進路へつなげることもできるでしょう。

学習スタイル

通信制高校は、自宅学習・スクーリング・特別活動を軸に学習が進められます。公立は、スクーリングの日程が決められている場合が多いですが、私立では、生徒の都合の良い日を選べることが多いです。

学習スケジュールに関しては、公立の通信制高校は、私立と比較するとやや柔軟性にかけます。しかし、ある程度制限があったほうがスケジュールを組みやすい場合もあるでしょう。一方、私立は自由にスケジュールが組みやすい分、自己管理能力が必要であるとも言えます。

年間スケジュール

通信制高校には、公立と私立にかかわらず学校行事があります。学校によっては出席することで単位が取得できたり卒業要件のひとつになっていたりします。私立の場合は、独自の行事を設けていることも多いです。

  • 公立・私立の行事例:校外学習、修学旅行、文化祭、体育祭など
  • 私立独自の行事例:クリスマス会、ボランティア活動、老人ホームや幼稚園への訪問・交流など

私立の通信制高校は全日制と併設しているケースもあり、合同で行事の準備をしたり開催したりすることもあります

生徒へのサポート

公立と私立において、学習面やメンタル面におけるサポート体制の違いについて解説します。

教員の上限数

公立の通信制高校では、法律により教員の数が定められていますが、私立では特に決まりがありません。そのため、教員一人当たりにつきサポートできる生徒数に違いが出る場合があります。

また、私立には、専門のカウンセラーを置くなど、独自のサポートを提供している学校があります。このような点を踏まえると、公立よりも私立の通信制高校のほうが、きめ細かいサポートを受けやすい環境であると言えます。

提携するサポート校の有無

通信制高校で学習面に不安を感じたときは、「サポート校」を利用する方法があります。

公立の通信制高校に通いながらサポート校を利用する場合は、民間の学習塾や学校法人が運営するサポート校に通うことが多いでしょう。

一方、私立の場合は学校に併設していることがあり、学校のカリキュラムに即したサポートをしてくれます。

大学受験対策

「通信制高校の場合は大学受験ができない」といった決まりは一切ありません。

特に私立では、大学進学を目指すクラスを設置している学校もあります

公立の場合は、通信制高校の学習カリキュラムに詳しい学習塾やサポート校と併用することで、大学受験対策に取組みやすくなるでしょう。

通信制高校から大学進学を目指す方法について、通信制高校から大学進学は不利?おすすめの通信制高校5選も紹介で詳しく解説しているので、あわせてお読みください。

卒業後の進路

通信制高校の卒業後の進路は、公立と私立とで傾向が異なります。それぞれ、下記のような違いがあります。

項目 公立 私立
大学等進学率 15.5% 25.2%
専修学校進学率 15.7% 25.5%
就職率 19.3% 14.3%
その他 49.5% 35.0%

出典:文部科学省「学校基本調査 / 令和5年度 初等中等教育機関・専修学校・各種学校 卒業後の状況調査 卒業後の状況調査票(高等学校 通信制)」

公立の通信制高校は就職率が高く、私立は大学への進学率が高いことがわかります。

「その他」には、受験勉強中や就職活動中の人、家事手伝いをしている人などが含まれます。

【通信制高校】公立と私立のメリット・デメリット

通信制高校の公立と私立の違いを踏まえ、それぞれのメリットとデメリットを見ていきましょう。

公立のメリット・デメリット

公立の通信制高校におけるメリットとデメリットについて、解説します。

メリット

公立の通信制高校のメリットは、学費が安いことが挙げられます。

私立の通信制高校の学費と比較すると、約10分の1に抑えられます。国や自治体の制度を利用すれば、より学費の負担を抑えられるうえ、授業料が実質無償になるケースもあるでしょう。

デメリット

公立のデメリットは下記の通りです。

  • 学習面におけるサポートが少ない
  • 私立と比べると中途退学率が高い

私立と比較し、学費が安く抑えられる点が魅力ですが、学習面や生活面におけるサポートが乏しく感じる場合があります。学習面に不安を感じたら、サポート校などの利用も検討する必要があるでしょう。

また、公立の通信制高校は私立と比べて、中途退学率がやや高い傾向にあります。

通信制高校ではある程度の自己管理能力が求められるため、サポートがないと、学業や生活面において挫折してしまう人もいます。

文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」によれば、 令和5年度の通信制高校における中途退学率が、公立が5.8%で、私立が3.4%でした。

私立のメリット・デメリット

私立の通信制高校におけるメリットとデメリットについて、解説します。

メリット

私立の通信制高校におけるメリットは下記の通りです。

  • メンタル面・学業面におけるサポートが手厚い
  • スケジュールの自由度が高い
  • 学習コースが多様

私立の通信制高校では、カウンセラーがいたり、学習面でのサポーターがいたりして、手厚い支援が受けられる場合が多いです。

また、「大学進学」や「専門講座」など、学習コースが多様で、生徒自身が目標とする進路に向けた教育を受けることができます。

デメリット

私立の通信制高校におけるデメリットは、学費が高い点が挙げられます。

公立と比べて学費が高い傾向にあり、約10倍もの費用がかかることがあります。また、学校によってはパソコンやタブレットPCの購入を必須としているところもあり、教材費が別途かかることがあるでしょう。

少しでも費用負担をおさえて私立の通信制高校に通いたいのであれば、国や自治体の制度を利用したり支援を受けたりするなどで工夫する必要があります。

公立と私立を選ぶ基準

通信制高校へ進学する場合、公立と私立のどちらに通うべきか迷うでしょう。下記それぞれの判断基準にもとづき、決めることをおすすめします。

判断基準 公立 私立
学費 安い
・3年間でかかる費用は約90,500円
高い
・3年間でかかる費用は約109万~125万円
サポート体制 やや薄め
・法律により、教職員の数が決められている
・学校独自のサポートが少ない
手厚い
・独自の学習サポートを設けている学校もある
・個別カウンセラーを配置している学校もある
コースの種類 少ない
・高卒資格に必要な教科学習が中心
多い
・専門的知識やスキルが習得できるクラスがある
通学のしやすさ 通学しやすい
・原則、住んでいる自治体の学校へ通う
・学校が遠い場合は、近くの協力校を利用できる
場所によっては大変
・隣県まで通学する場合もある
スケジュールの自由度 やや低い
・スクーリング日があらかじめ決められていることが多い
高い
・生徒自身でスクーリング日程を決められる

公立は私立と比べて、学費が約10分の1に抑えられます。一方で、私立は学費が高い分、学校独自のサポートが手厚く中途退学率も公立と比べて低い傾向があります。

上記はあくまで目安であり、生徒によって向き不向きは異なります。そのため、複数の通信制高校を比較して検討しましょう。

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公立の通信制高校へ入学するまでの流れ

公立の通信制学校を希望する場合、入学までの基本的な流れは以下の通りです。

  • ホームページの確認
  • 学校見学
  • 受験・入学手続き
  • 入学式

公立の通信制高校は、基本的に資料請求に対応していません。基本的な情報は、地方自治体や各学校のホームページ等で公開されています。

また、学校説明会も日数が限られているため、注意が必要です。地方自治体や各学校のホームページで日程を確認するようにしてください。

資料を見たり、学校見学をしたりする際は、下記のポイントに注目するとよいでしょう。

  • 学校の理念
  • 学習や生活面でのサポート環境
  • 校内の雰囲気
  • 卒業後の進路

学校の理念や特色を知ることで、どのような教育に力を入れているかがわかります。通信制高校は自宅学習がメインですが、毎月スクーリングで登校するため、校内の雰囲気を知ることは大切です。

また、卒業生の進路について知っておくことも大切です。

公立の通信制高校には、入学試験があります。試験内容は、面接や作文がメインです。まれに学科試験を実施する学校もありますが、現状の学力を把握することが目的なので、難易度は低めに設定されています。

通信制高校の入学試験については、通信制高校にも受験はあるのか?受験内容や難易度について解説で詳しく説明しているため、あわせてお読みください。

まとめ

公立の通信制高校は自治体が運営する学校で、基本的には居住している地域の学校を選択します。学費が比較的安いため、経済的負担を抑えつつ、高卒資格を取得するための教育を受けることが可能です。

ただし、学校によっては私立よりもサポート体制が乏しく、中途退学率が高い可能性があります。自分で計画を立てて学習を進めることに不安を感じるのであれば、私立の通信制高校や、サポート校の利用を検討してもよいでしょう。

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