通信制高校の学費は安い?3年間でいくらかかるか全日制・定時制高校と徹底比較

通信制高校でかかる学費は、全日制高校よりも比較的抑えられる傾向にあります。また、条件に合えば、国や自治体が提供する学費の支援制度も利用できるでしょう。 通信制・定時制・全日制高校それぞれにおいて、学費の違いやメリット・デメリット、学費負担を軽減するために利用できる制度について解説します。 通信制高校への進学を検討している人は、ぜひ参考にしてください。

通信制高校の学費はいくら?

通信制高校へ進学する場合は、学費が1年間でどれくらいかかるか予想を立てておきましょう。

ここでは、下記2点について解説します。

  • 通信制高校の公立・私立の学費比較
  • 通信制高校と全日制・定時制高校の学費を比較

通信制高校の公立・私立の学費比較

通信制高校の1年間でかかる学費の平均額は、下記のとおりです。

学校区分 【公立】 【私立】
1年間の授業料 約1万円
※1単位400円の場合
約30万円
※1単位1万2000円の場合
1年間の諸費用 約2万円 約6万~10万円
1年間の学費合計 約3万円 約36万~40万円

※授業料は年間25単位取得を目安として計算

通信制高校の多くは単位制が採用されているため、学年ごとではなく1単位ごとに授業料がかかります。公立と私立の学費を比較すると、1年間で30万円以上の差があることがわかります。

上記で紹介している通信制高校の諸費用に含まれているものは、以下のとおりです。

  • 教材費
  • 施設の設備費
  • 行事費

通信制高校の学費を比較する際には、授業料や入学金だけではなく諸費用も合わせて考えましょう。

また、私立の通信制高校では、通学したりオプション講座を設定したりすると、上記金額よりも大幅に高くなる可能性もあります。たとえばN高等学校の「週5日通学コース」は、年間95万円が加算されます。

通信制高校と全日制・定時制高校の学費を比較

高等学校には通信制・全日制・定時制の3種類があり、下記のような違いがあります。

  通信制 全日制 定時制
授業時間 比較的自由に決められる 朝から夕方にかけて決まった時間に受ける 夕方から夜間にかけて決まった時間に受ける
授業を受ける場所 自宅または学校 学校 学校
通学スタイル 基本的には自宅だが、学校によっては月に数回通学する 平日に通学する 平日に通学する

決まった時間に通学する点では全日制と定時制は同じですが、通信制高校は基本的に自宅で自由な時間に勉強したり授業を受けたりします。

通信制、全日制、定時制の1年間でかかる学費の平均額は下記のとおりです。

  通信制 全日制 定時制
  公立 私立 公立 私立 公立 私立
1年間の授業料 約1万円 約30万円 約5万円 約30万円 約5万円 約14万円
1年間の諸費用 約2万円 約6万~10万円 約24万円 約39万円 約3万~5万円 約11万円
1年間でかかる学費 約3万円 約36万~40万円 約29万円 約69万円 約8万~10万円 約25万円

学費が最も安いのは公立の通信制高校で、公立の全日制高校と比較すると10分の1程度の費用で通えます。

ただし、地域や学校により学費は大きく異なります。地域と学校の特徴で絞って検索できる「通信制高校の簡単検索」で気になる学校の学費を確認してみましょう。

通信制高校でかかる入学から卒業までの費用

通信制高校に3年間通う場合の学費について、内訳を詳しく見ていきます。入学金や諸費用を含めると、公立と私立ではそれぞれ下記のような金額がかかります。

  公立 私立
入学金 約500円 約15万円
3年間でかかる授業料 約3万円 約90万円
3年間でかかる諸費用 約6万円 約18万~30万円
入学から卒業までにかかる費用合計金額 約90,500円 約109万~125万円

昨今ではオンラインで授業を行う学校も増えているため、タブレットPCやパソコンが必要になるケースもあります。また、セキュリティソフトを購入しなければならない学校もあります。

また通信制高校では、「サポート校」という、学業や生活面において生徒をサポートするサービスも利用できます。そのため、学校によっては上記に加えて下記の費用がかかる場合もあるでしょう。

タブレットPC購入費用 約3万~6万円
サポート校の3年間の利用料 年間約30万~50万円

N高等学校ではMacBook Airの購入が必要で、約14万円がかかります。

学校から指定された制服代や校外学習費など細かい費用のほか、スクーリング時の宿泊費や交通費も発生します。気になる学校があれば、具体的にかかる金額について問い合わせてみてもよいでしょう。

通信制高校の学費をおさえる5つの方法

学費を抑えるのであれば、国や自治体が提供している就学支援制度や給付金制度を積極的に利用するとよいでしょう。下記5つの制度について紹介します。

  • 高等学校等就学支援金制度
  • 高校生等奨学給付金
  • 特待生制度
  • 自治体の学習支援制度
  • その他の奨学金

高等学校等就学支援金制度

高等学校等就学支援金制度は、日本の高等学校やその他の教育機関に通う生徒に対して、授業料の一部または全額を支援する制度です。学校によっては授業料が実質無償化されます。

支給額は下記のとおりです。

  国立・公立高等学校等 私立高等学校等
世帯年収が910万円以上 (支給対象外) (支給対象外)
世帯年収が590万円以上
910万円未満
年額11万8,800円 年額11万8,800円
世帯年収が590万円未満 年額11万8,800円 年額29万7,000円

出典:文部科学省「高校生等への修学支援」

当制度を利用するための条件には下記があります。

  • 日本国内に住んでいる
  • 高等学校、特別支援学校の高等部、高等専門学校(1~3年)、専修学校(高等課程)などに在籍している
  • 世帯年収が910万円未満である

また、当制度は高等学校等に在学した期間が通算して36ヶ月を超えた場合(通信制・定時制は48ヶ月まで)は、受給資格を失う点に注意が必要です。

通信制高校の学費無償化については、通信制高校の学費を無償化!利用できる公的制度を徹底解説!で詳しく紹介しています。

高校生等奨学給付金

高校生等奨学給付金は、経済的な理由で教育を受けることが難しい生徒が、安心して学業に専念できる環境を整えることを目的として提供されています。制度の対象となるのは授業料以外の教育費です。

高校生等奨学給付金の支給額は下記のとおりです。

  国立・公立高等学校等 私立高等学校等
生活保護受給世帯 年額32,300円 年額52,600円
非課税世帯 年額50,500円 年額52,100円

出典:文部科学省「高校生等奨学給付金 ~奨学のための給付金~」

高等学校等就学支援金制度と高校生等奨学給付金の大きな違いは、支給対象となる費用です。高等学校等就学支援金制度の対象は授業料であるのに対して、高校生等奨学給付金は授業料以外の教育費を対象としています。

当制度を利用するためには、下記の条件を満たす必要があります。

  • 受給者の保護者が、申請を行う都道府県に住んでいる
  • 生徒が支援対象となる学校に在籍していること
  • 生活保護を受けている、または住民税所得割が非課税であること(家計が急変し、非課税相当になった世帯も含まれます)

自身が条件に満たしているか確認のうえ、進学先の学校または住んでいる都道府県へ申し込みましょう。

自治体の学習支援制度

国以外でも、自治体によっては通信制高校の学費支援を提供しているところがあります。たとえば、東京都と静岡県では下記のような制度が導入されています。

東京都「私立都認可外通信制高等学校在学生授業料助成金(都の制度)」

都内に住所をもつ家庭に対して東京都が行っている制度です。通信制高校の私立へ通う生徒のため、一部助成金を支給してくれます。

制度名 私立都認可外通信制高等学校在学生授業料助成金(都の制度)
利用資格 ・生徒と保護者が都内に住んでいること
・生徒が東京都以外の自治体が認可している私立通信制高等学校に在学している
支給額 最大で26万5,000円

出典:東京都生活文化スポーツ局「私立都認可外通信制高等学校在学生授業料助成金(都の制度)」

具体的な支給額と条件は下記のとおりです。

世帯年収目安 助成金額(年額)
片働き 共働き
約910万円以上 約1090万円以上 26万5,000円
約590万円以上~
約910万円未満
約740万円以上~
約1,090万円未満
私立高等学校等授業料軽減助成金:14万6,200円
高等学校等就学支援金制度:11万8,800円
約590万円未満 約740万円未満 私立高等学校等授業料軽減助成金:0円
高等学校等就学支援金制度:29万7,000円

出典:東京都「私立都認可外通信制高等学校在学生授業料助成金(都の制度)」

所得制限がなく、最大で年額26万5,000円が受け取れます。すでに「高等学校等就学支援金制度」を受け取っている場合でも、支給額26万5,000円に満たない場合は、当制度を併用できる場合があります。

静岡県「定時制・通信制修学資金」

静岡県内に住む家庭に対して提供されている制度で、月額14,000円が借りられます。

制度名 定時制・通信制修学資金
利用資格 下記すべてを満たすことが条件
・生徒が静岡県内の高等学校定時制課程または通信制課程に在学しているか、広域通信制課程に在学し静岡県内に居住している
・保護者等の道府県民税所得割額と市町村民税所得割額の合算した額が85,500 円未満
・生徒が通年で就労している ※アルバイト可
・通信制課程の場合、定められた単位を履修している
支給額 月額14,000円(無利息)

出典:静岡県「定時制課程及び通信制課程修学資金」

ただし貸付制度なので、期日までに返済する必要がある点に注意が必要です。また、1年以上利用する場合は1年ごとに申請が必要です。

紹介した制度以外にも、お住まいの自治体で、同様に学習支援制度や奨学金制度などを行っている可能性があるため、確認しましょう。

その他の奨学金

通信制高校の学費をおさえる方法として、法人や民間団体が独自で提供している奨学金制度の利用も可能です。具体的には、以下のような奨学金制度があります。

奨学金制度名 概要 支給・貸与額
あしなが育英会奨学金 病気や災害、自死などで親を亡くした子どもたちや、障がいにより十分に働けない家庭の子どもたちを支援する 最大30万円が貸与される(月額3万円)
※卒業後20年以内に無利子で返還する必要がある。
交通遺児育英会の奨学金 交通事故で保護者を失ったり、重度の後遺障害をもったりする子どもたちを支援する 月額2万~6万円(うち一部給付あり)、入学一時金として20万円から80万円が貸与される
公益財団法人石澤奨学会 定時制・通信制高校に在学する生徒を対象に支援する 月額2万円(年間24万円)が支給
公益財団法人 日本教育公務員 弘済会の奨学金 教育の振興を目的として、経済的に学資の支払いが困難な学生や生徒を支援する 5万円が支給

奨学金制度は、今後も増える可能性があります。自治体や学校のサイトなどで検索して確認することをおすすめします。

通信制高校のメリットとデメリット

通信制高校のなかでも公立と私立があり、それぞれメリットとデメリットがあります。双方の特徴を理解したうえで、生徒に合う学校はどちらなのか?判断するための材料としてください。

公立の通信制高校

公立の通信制高校におけるメリットとデメリットを紹介します。

メリット

公立の通信制高校におけるメリットは下記のとおりです。

  • 私立より学費が安い
  • 学業と仕事・アルバイトを両立させやすい

公立の通信制高校には、働きながら高卒資格を取りたい人のために設立された背景があります。そのため学費が安く、通う生徒の年齢が幅広いところが特徴です。

デメリット

一方で公立の通信制高校のデメリットは下記のとおりです。

  • 教職員のサポートに対して物足りない場合がある
  • 全日制や定時制高校よりもとくに自己管理が必要

国が定めたカリキュラムや学習方針に沿って運営されるため、私立と比較すると学校独自のサポートに対して物足りなさを感じることがあるでしょう。また基本的には自身で計画を立てて行動することが求められるため、自己管理が必要です。

私立の通信制高校

私立の通信制高校におけるメリットとデメリットを紹介します。

メリット

私立の通信制高校におけるメリットは下記のとおりです。

  • 卒業率が高い
  • 卒業までのサポートが手厚い
  • 授業カリキュラムの種類が多い

学習面と生活面において、生徒一人ひとりへのサポートが手厚い点が大きなメリットです。学校によっては通信制サポート校という生徒へのサポートに特化したサービスを併設しているところもあります。

授業カリキュラムが多彩で、生徒にとって興味がある分野を伸ばすこともできるでしょう。

デメリット

一方で私立の通信制高校におけるデメリットは、公立の通信制高校よりも学費が高いことがあげられます。生徒一人ひとりへのサポートが手厚い分、学費が高くなってしまいます。

通信制高校のデメリットについては、通信制高校に通うデメリット5選!後悔しない学校選びの基準とは?で詳しく解説しています。

通信制高校の学費に関するよくある質問

通信制高校の学費について寄せられる「よくある質問」について回答します。

Q.通信制高校の学費はいつ払う?

A.初年度の納入金は、新学期が始まる前に支払います。初年度の納入金には、入学金や施設費などが含まれます。

また、授業料の支払いは、履修登録後に行われることが多いです。たとえば25単位を履修する場合、25単位分の授業料を翌々月に支払います。

学費は一括で納入する場合がほとんどですが、たとえばN高等学校では通学コースの学費(入学金・教材費以外)は2分割納入が可能です。学校によって異なるので、確認するようにしてください。

Q.通信制高校の学費は無償になる?

A.公立・私立の高校に通う生徒で、年収590万円未満なら授業料の負担が実質0円になる「高等学校等就学支援金制度」があります。

世帯年収により支給額が異なり、公立の通信制高校ならば最大で年額11万8,000円、私立の通信制高校ならば最大で年額29万7,000円が授業料として学校へ充当されます。

利用できる条件に当てはまっているかを確認し、進学先の学校または住んでいる都道府県へ申し込んでみましょう。

まとめ

通信制高校の学費は全日制と比較すると安い傾向にあり、公立ならばより学費をおさえられます。ただし、私立の方が大学受験への独自のサポートが受けられて授業のカリキュラムが豊富なため、生徒自身の個性や得意分野を伸ばしやすいといえるでしょう。

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