通信制高校とは?カリキュラムや全日制との違いをわかりやすく解説!
公開日:2018年02月07日 更新日:2024年12月24日
通信制高校とは、毎日通学する必要がなく、自宅でインターネットによる授業を受けながら単位を取得し、高卒資格を取得するための学校です。 授業カリキュラムは全日制の学校とほぼ同じで、授業でつまずいたところがあれば、先生からサポートやアドバイスが受けられます。 本記事では、通信制高校の特徴や、全日制高校、定時制高校との違いなどについて解説します。進学する高校を検討している生徒、保護者の人は参考にしてください。
通信制高校とはどんな学校?
通信制高校は、全日制高校とは学習スタイルや卒業要件などが大きく異なります。それぞれ下記について説明します。
- 通信制高校の仕組み
- 通信制高校で得られる高卒資格
- 通信制高校の年間スケジュール
- 通信制高校での一日の過ごし方
- 通信制高校を卒業するための条件
- 通信制高校に通っている生徒の特徴
通信制高校の仕組み
通信制高校は「単位制」を採用しています。単位制は1年間に取得すべき単位数が決まっておらず、3年以上かけて必要な単位を修得すれば卒業が可能です。そのため、留年がありません。
ただし一部、「学年制」を採用している通信制高校もあります。学年制は1年間に取得すべき単位数が決まっており、取得できなかった場合は留年となります。
通信制高校で得られる高卒資格
通信制高校は、全日制高校と同様に卒業することで高卒資格が取得でき、学歴が高校卒業となります。
似た言葉に、「高卒認定」があります。こちらは年に2回行われる「高等学校卒業程度認定試験」に合格すれば取得可能です。しかし、あくまで高校卒業と同等の学力が認められたという資格であり、高校を卒業したわけではないため、学歴が中学卒業となる点が高卒資格とは異なります。
通信制高校の年間スケジュール
通信制高校では、一般的には下記のような行事やイベントが実施されます。
月 | 行事例 | 内容 |
---|---|---|
4月 | 入学式 | ・4月または10月に入学/転入/編入が多い ・生徒全員が学校に集まり行うことが多い |
5月 | 新入生歓迎交流会 | |
6月 | 校外学習 特別活動 |
・遠足、施設見学など |
8月 | 夏休み | |
9月 | 校外学習 特別活動 |
・芸術鑑賞、修学旅行など |
10月 | 体育祭 | ・全日制と併設されている場合は、合同で行う場合もある |
11月 | 文化祭 修学旅行 |
・全日制と併設されている場合は、合同で行う場合もある |
12月 | 冬休み | |
3月 | 卒業式 |
体育祭や文化祭など、全日制の学年スケジュールとほぼ同じケースが多いです。また、学校によっては修学旅行で海外に行くこともあります。
すべての行事に参加する必要はないものの、卒業までに30単位時間の特別活動を行う必要があります。特別活動の内容は学校によって異なります。
通信制高校での一日の過ごし方
通信制高校と全日制高校では学習スタイルが大きく異なるため、1日の過ごし方も違います。
通信制高校は自宅学習が基本ですが、「スクーリング」と呼ばれる面接指導もあります。
スクーリングとは、対面形式で行われる授業のことです。スクーリングの回数、頻度は学校によってさまざまで、大きく次のタイプに分けられます。
- 通学型:週に1~5日学校へ登校する
- 集中型:特定時期に短期集中して登校する
- 合宿型(宿泊型):宿泊しながら授業を受ける
たとえばN高等学校では、原則2年次に沖縄県伊計島にある本校で4~5日程度のスクーリングが行われます。
自宅学習日とスクーリングにおける生徒の一日の過ごし方を紹介します。ただし、あくまで一例であり、学校によっては生徒自身で自由にスケジュールを組み立てられる場合もあります。
自宅学習日の場合
自宅学習日は、自宅で授業の予習や復習をしたり、オンラインで授業を受けたりします。自宅学習日の場合、1日のスケジュールは下記のようになります。
8:00 | 起床 |
9:00 | 自宅からオンラインホームルームに参加 |
10:00 | 自宅で学習 |
12:00 | お昼休憩 |
14:00 | 自宅でオンライン授業を受講 |
16:00 | 運動・散歩 |
17:00 | 自宅で学習 |
18:00 | 夕食 |
19:00 | 趣味の時間・自由時間 |
22:30 | 就寝 |
自宅学習日であっても、気分転換をしたいときやいまひとつ集中できないとき、わからない問題があった場合などは、学校に登校して勉強できる場合もあります。学校によって異なるため、確認するようにしてください。
スクーリングがある場合
通信制高校ではスクーリングがある日に学校に登校して、先生と対面で授業を受けます。ほかにも生徒指導や特別活動、部活動に参加するなど、学習以外の活動にも参加します。
スクーリングの1日のスケジュールは、下記のとおりです。
7:00 | 起床 |
9:00 | 登校 |
9:30 | 個別授業(集団授業) |
12:00 | 昼休み |
13:00 | 個別授業(集団授業) |
16:00 | 部活 |
18:00 | 帰宅 |
19:00 | 夕食 |
20:00 | 趣味の時間・自由時間 |
22:30 | 就寝 |
スクーリングの日でも1日の大半を学校で過ごすとは限らず、日によっては午前中のみ、午後のみといったスケジュールの場合もあります。
通信制高校を卒業するための条件
単位制を採用している通信制高校の卒業要件は、下記のとおりです。
- 学校に3年以上在籍する
- 74単位以上を修得する
- 30単位時間以上の特別活動を行う
通信制高校には全日制のような留年がなく、3年以上かけて上記の条件を満たせば卒業できます。卒業に必要な単位は下記の方法で修得できます。
条件の種類 | 内容 |
---|---|
レポートの提出 | ・各科目で複数回のレポート提出が必要 ・先生より添削を受けて合格すれば単位が修得できる |
スクーリング | ・対面で授業を受ける。学校によって頻度は異なる ・学校によっては合宿形式や集中講義形式などもある |
特別活動に参加する | ・特別活動には体育祭や文化祭、校外学習などがある ・行事に積極的に参加することで単位が修得できる ・卒業までに30単位時間の参加が必要 |
単位を修得するには、レポートの提出やスクーリング、特別活動への積極的な参加が必要です。
すべてをこなすのは難しそうに思えるかもしれませんが、生徒にとって負担にならないよう設定されている場合が多いです。取り組むなかで難しかったり、負担を感じたりした場合も、先生に相談することで、自分に合った方法を見つけられる可能性があります。
通信制高校に通っている生徒の特徴
通信制高校には、年齢や生活環境などさまざまな生徒が通っています。通っている生徒の特徴および生徒が通信制高校を選んだ主な理由は、下記のとおりです。
通信制高校に通う生徒の特徴 | ・19歳以上の生徒も通っている ・不登校経験がある ・集団生活が苦手である ・仕事をしている ・芸能活動をしている |
---|---|
通信制高校を選んだ理由 | ・仕事と学業の両立がしやすいため ・芸能活動に注力しながら学べるため ・スポーツのプロを目指しながら学ぶため ・全日制高校を退学したため ・学費がおさえられるため ・自宅学習がメインなため ・専門分野の知識や技術を今のうちから身につけたい |
通信高校に通う生徒の特徴について、『通信制高校に通う普通の子はいる?生徒の特徴や向いていない人の特徴まで解説』で詳しく解説しています。
全日制・定時制高校との違い
高校には通信制のほかに全日制と定時制があります。それぞれの通学形態や学習カリキュラムについて、下記を紹介します。
- 通学形態
- 授業のカリキュラムと卒業の条件
- 学費
通学形態
通信制・全日制・定時制高校それぞれの通学形態は、以下のとおりです。
高校の種類 | 通学形態 |
---|---|
通信制 | ・自宅学習と通学を選択できる ・月に1~2回ほど通学して授業を受ける |
全日制 | ・日中決められた時間に通学して授業を受ける |
定時制 | ・夕方から夜間に決められた時間に通学して授業を受ける |
全日制や定時制高校は、決められた時間に登校する点では同じです。一方で、通信制高校の場合は毎日通学する必要はなく、日により自宅学習をしたり学校で授業を受けたりします。
授業のカリキュラムと卒業の条件
通信制・全日制・定時制いずれの高校も、授業は文部科学省が定めたカリキュラムにもとづいて進められます。通信制高校の場合は、美容やITなど専門性が高いクラスやカリキュラムが用意されていることもあります。
一般的に、高校の卒業条件は下記のとおりです。
- 学校に3年以上在籍する
- 74単位以上を修得する
通信制高校は、上記に加えて30単位時間以上の特別活動への参加があります。1単位は50分とされているため、3年間で25時間です。単純計算で1年あたり約8時間のペースですが、卒業までに30単位時間なので毎年こなす必要はありません。
全日制と定時制は学年制なので、1年間で定められた単位数を修得する必要があり、できなければ留年です。一方で、通信制高校の場合は、3年以上かけて卒業に必要な単位数を修得すればよいため、留年がありません(学年制を採用している一部の通信制高校を除く)。
学費
通信制・全日制・定時制高校の初年度かかる費用や学費は、下記のとおりです。
通信制 | 全日制 | 定時制 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
公立 | 私立 | 公立 | 私立 | 公立 | 私立 | |
入学金 | 約500円 | 約1万~5万円 | 約1万~2万円 | 約7万円 | 約2,000円 | 約10万円 |
1年間の授業料 | 約1万円 | 約30万円 | 約12万円 | 約30万円 | 約5万円 | 約14万円 |
1年間でかかる学費 | 約3万円 | 約35万~40万円 | 約20万円 | 約60万円 | 約15万円 | 約25万円 |
※1年間でかかる学費には、施設設備費や教育関連諸費なども含む
通信制高校の学費については、『通信制高校の学費は安い?3年間でいくらかかるか全日制・定時制高校と徹底比較』にて詳しく解説しています。
また、通信制高校の学費が知りたいときは、エリアや特徴で絞って検索できる「通信制高校の簡単検索」で検索してみてください。
通信制高校のメリット・デメリット
通信制高校のメリット・デメリットを紹介します。
メリット
通信制高校へ通うメリットは、下記のとおりです。
- 通学頻度が少ない
- 学費が安い
- 生徒自身のペースで勉強できる
- 働きながら学習できる
- 学べる科目やカリキュラムが多い
毎日のスケジュールや学習計画が比較的自由に決められるうえ、学費が安くおさえられる点が魅力です。また、学校によっては、美容やアートなど普通科では学べないカリキュラムが受けられる点も大きいでしょう。
デメリット
一方で、通信制高校へ通うデメリットは下記のとおりです。
- 自己管理能力が求められる
- 人とかかわる機会が少ない
- 集団生活での能力が身に付きにくい
- 大学受験のサポートを受けにくい
毎日のスケジュールが自由に決められる反面、自己管理能力が求められます。提出期限までにレポートを提出できるよう計画する必要があります。
わからない問題があったら質問して解決するなど、自ら行動することが求められるでしょう。
通信制高校は、高校を卒業するまでに身につけるべき学力の修得が目的です。大学受験を目指す際は、学校の授業に加えて、塾や予備校、サポート校などの併用が必要な場合もあるでしょう。
通信制高校のデメリットについては、『通信制高校に通うデメリット5選!後悔しない学校選びの基準とは?』で詳しく解説しています。
よくある質問
通信制高校に関する、ちょっとした疑問や気になることについてお答えします。
Q.サポート校と通信制高校は同じですか?
A.いいえ、まったく異なります。
サポート校とは、通信制高校で授業を受けたり卒業したりするまでをサポートしてくれる施設です。学校ではなく、あくまで通信制高校に追加・補足して受けるための場所なので、サポート校のみでは「高卒資格」が取得できません。
ただし、サポート校の利用で勉強に対する苦手意識の克服や学力の向上につながるため、利用を検討してみてください。
サポート校については『サポート校とは?通信制高校との違いや利用の判断基準』で解説しています。
Q.全日制高校と授業のカリキュラムは同じですか?
A.はい。
通信制高校と全日制高校は、文部科学省が定めたカリキュラムに沿って行いますが、通信制高校の場合はレポートの提出や自主学習に合わせた授業が多いです。
また、通信制高校のなかには、美容やアートなどの専門的な内容のカリキュラムが用意されていることもあります。
Q.通信制高校でも難関大学を目指すことはできますか?
A.できます。
ただし、通信制高校の授業は教科書に沿った基礎的な難易度のものが中心なので、目指す大学によっては、追加で塾や予備校に通うことをおすすめします。生徒の学力に合わせて先生と相談しながら志望大学を目指すとよいでしょう。
通信制高校へ通いながら大学受験を目指す方法について、『通信制高校から大学進学は不利?おすすめの通信制高校5選も紹介』で詳しく解説しています。
まとめ
通信制高校は、全日制の高校とは異なり、生徒自身のペースで学習を進めることを軸としています。学習は主に自宅で行います。集団生活になじめない人や、仕事と両立させながら高卒資格が欲しいと思う人にとって、通いやすい高校といえるでしょう。
通信制高校は自宅学習がメインですが、月に数回は学校に通って勉強するため、人とかかわる機会もあります。生徒自身に合った通信制高校を探すなら、気になる高校の資料を一度に取り寄せて比較検討する方法がおすすめです。
通信制高校の情報量が多い【ズバット通信制高校比較】で、地域や条件で絞って検索しましょう。