不登校中にゲームばかり。取り上げてはいけない理由とは
公開日:2025年06月03日 更新日:2025年06月03日

中学生が不登校になる要因はさまざまですが、ゲームと不登校には関係があるのでしょうか。 文部科学省の調査によると、不登校の中学生が「最初に学校に行きづらいと感じたきっかけ」については、「インターネット、ゲーム、動画視聴、SNS」が17.3%という結果でした。 また、不登校の中学生の80%以上が、家でゲームやインターネットをしていたと回答しています。 このように、不登校とゲームの関係は、切り離すことのできない課題であり、適切に対処しなければ、ゲーム依存症になってしまうリスクもあります。 この記事では、不登校中の子どもがゲームばかりしている場合に、無理やり取り上げてはいけない理由や、どう対処すべきかについて解説します。
- 不登校の中学生の87%がゲームやインターネットをしている
- 不登校の子どもがゲームに依存する理由
- 不登校だとゲーム依存症になりやすい?
- ゲームを取り上げるのはNG
- 「ゲーム禁止」以外の対処方法
- 通信制高校のゲームコースという選択肢も
- まとめ
不登校の中学生の87%がゲームやインターネットをしている
文部科学省の調査によると、不登校の中学生の家での過ごし方は、以下の通りでした。
出典:文部科学省「不登校児童生徒の実態把握に関する調査報告書(令和3年)」(以下同)
「インターネット・ゲーム・動画視聴など」について、「よくしていた」が67.4%、「ときどきしていた」が19.6%という結果でした。

また、親が把握している状況では、「インターネットやゲームを一日中していた」について、「よくあった」(38.8%)、「ときどきあった」(29.4%)という結果でした。
一日中、インターネットやゲーム漬けになっていたことのある子どもが、6割以上いることがわかります。
ゲームは、学校に通えないことで生じる暇な時間や孤独感を埋めてくれる一方、昼夜逆転して生活リズムが乱れたり、ゲーム依存症になったりするリスクがあります。
そのため、不登校中にゲームをやりすぎないように注意する必要があります。
不登校の子どもがゲームに依存する理由
不登校の子どもがゲームに依存する理由は、多岐にわたります。
- 現実逃避できるから
- 満足感や達成感を得られるから
- コミュニケーションが取れるから
- やることがないから
現実逃避できるから
不登校の子どもがゲームに依存する理由のひとつは、現実逃避ができることです。
ゲームの世界に没頭することで、学校での人間関係や成績のプレッシャーなど、現実の世界で感じるストレスや不安から逃れることができます。
ゲームの世界では、自分の好きなキャラクターになりきって、現実とは違った体験をすることができるため、一時的にでも現実の悩みを忘れることができます。
満足感や達成感を得られるから
ゲームは視覚的にも音楽的にも魅力的で、プレイヤーをその世界に引き込みます。
プレイヤーが楽しめる工夫がされているので、ゲームをするだけで満足感を得られるようになっています。
ゲームにはレベルアップやアイテム収集などのやり込み要素も多く、ミッションやクエストをクリアすることで、自分の努力が目に見える形で成果となります。
こうして、日常の中で得られない満足感や達成感をゲームに求めることで、依存状態に陥りやすくなります。
コミュニケーションがとれるから
オンラインゲームはコミュニケーションの場としても機能しています。
不登校の子どもにとって、学校での人間関係がうまくいかないことが理由で、自宅に引きこもることが多いです。
しかし、オンラインゲームでは、チャットなどで同じ趣味を持つ仲間と、顔を合わせることなく、簡単に接触することができます。
ゲーム内でのコミュニケーションは、現実の人間関係の代替や補完として機能していることもあるため、ゲームへの依存が助長されることもあります。
やることがないから
不登校の子どもがゲームに依存するのには、「ほかにやることがないから」という理由もあります。
学校に行かず、一日中家にいることで時間を持て余す状態が続きます。結果、家で手軽にできるゲームに没頭してしまうことが多くなります。
不登校だとゲーム依存症になりやすい?
ゲーム依存症(ゲーム障害)については、世界保健機構が以下のように定義をしています。
- ゲームをする時間や頻度を自ら制御できない
- 生活上の関心ごとや活動より、ゲームを優先する
- 問題が起きているのにゲームを続ける
- 学業、仕事、家庭・社会生活に著しい障害がある
これらの症状が12ヵ月以上続く場合、もしくは、重症である場合、「ゲーム障害」と診断されることがあります。
不登校でゲームをやっているからと言って、すぐにゲーム依存症になるわけではありませんが、注意が必要です。
学校に行っていないと、ゲームに触れられる時間が長くなります。
先述の調査結果でも、不登校中の中学生はゲームに多くの時間を費やす傾向がありました。この状況は、ゲーム依存症のリスクを高めることがあると言えます。
しかし、親がサポートし、ゲームの時間を適切にコントロールすることで、ゲーム依存症を防ぐことができます。
ゲームを取り上げるのはNG
不登校の子どもがゲームばかりやっている場合、親としてはそのゲームを取り上げたい気持ちになるかもしれません。
しかし、「ゲーム=悪」と考えて、強制的に取り上げることは逆効果になる可能性があります。
ゲームは多くの不登校の子どもにとって、ストレス解消や現実逃避の手段となっています。それを取り上げると、一時的にゲームの使用を制限できたとしても、子どもは新たなストレスにさらされ、精神状態がさらに悪化する可能性があります。
また、ゲームを取り上げることで、親子関係に亀裂が入る可能性もあります。子どもは自分の大切な時間や趣味を理解してもらえないという感情を抱き、結果として親への信頼やコミュニケーションが減少します。加えて、取り上げられたことで子どもが反抗的な態度を取ることもあるでしょう。
満足するまでゲームをやると、突然「ゲームに飽きた」と言ってやめてしまうケースもあります。
ゲームを取り上げるのではなく、適切にルールを設定し、ゲーム以外の活動や興味を持てる機会を提供するほうが、長期的には効果的です。
なお、不登校の中学生に何をさせるかについては、こちらの記事「不登校 中学生 何をさせる」を参考にしてください。
「ゲーム禁止」以外の対処方法
では、子どものゲーム依存を防ぐために、「ゲームを取り上げる」以外にどんな方法があるのでしょうか。
ゲームのルールを決める
まず、ゲームの使用に関するルールを家庭内で明確にすることが大切です。
ゲームをする時間や曜日を限定したり、学業や家族との時間とバランスを取りながら楽しむことを促進するようなルールを作りましょう。
例えば、「毎日2時間まで、昼間のみ、勉強が終わってから」などのように設定します。
ただし、子どもは自分が納得できるルールでないと、守ろうという気持ちになれません。親が一方的に決めたルールだと、子どもにとって公平感がなく、納得できないものになってしまいます。
そのため、ルールは子どもと話し合いを行い、子どもの意見を尊重することが重要です。
一日のスケジュールを立てる
一日の活動予定を立てることで、家での時間を有意義に過ごすことができます。
スケジュールには、勉強の時間や家事の手伝いだけでなく、ゲームを楽しむ時間も含めると良いでしょう。
例えば、午前中に勉強を終わらせ、午後に好きなゲームをする時間を設定することで、ルールを守りつつ、メリハリのある生活を送ることができます。
また、スケジュールには柔軟性も持たせましょう。急な予定変更や体調不良など、予期せぬ出来事があっても対応できるように、少し余裕をもたせた計画を立てることがポイントです。
ほかに興味が持てることを探す
不登校の中学生がゲームに依存してしまうのには、「ほかにやることがない」「ほかに楽しみがない」という理由があります。
そのため、ゲーム以外の楽しみを見つけるために、多様な活動に触れることを促すと良いでしょう。
何をすれば良いかわからない場合は、子どもが過去に興味を持っていたことや楽しんでいた活動を思い出し、それを再び試みることから始めてみてください。
例えば、音楽、絵画などの趣味や、工作や料理といった家庭内でできる活動は、不登校の子どもでも取り組みやすいでしょう。
また、子どもの状況によっては、地域のイベントやボランティア活動に参加することもひとつの方法です。
新しい人々と出会い、コミュニケーションを取ることで、社会性や協調性を養うことができ、興味の幅が広がるかもしれません。
居場所を探す
自分の居場所があることで、子どもは安心感を持つことができ、精神的な安定にもつながります。
まず、家庭内での居場所を確保することが第一歩です。家の中で子どもが安心して過ごせるスペースを作り、その中でリラックスして過ごせるように環境を整えましょう。
次に、家庭外の居場所も探してみましょう。フリースクール、地域のサポートセンターなど、不登校の子どもをサポートしている場所は数多く存在します。
このような場所で、新しい友人やサポートを得ることは心強い助けとなります。
フリースクールについては、『フリースクールとは?費用や活動内容、不登校特例校との違いを徹底解説』を参考にしてください。
通信制高校のゲームコースという選択肢も
没頭してしまうくらいゲームが好きであれば、「好きなこと」を伸ばしてあげるという選択肢もあるでしょう。
例えば、通信制高校のゲームコースという選択肢は、ゲームが大好きな子どもにとって新たな居場所になり得るかもしれません。
通信制高校には、プロゲーマーを目指すコースや、ゲーム制作を学ぶコースなどが用意されています。
例えば、eスポーツ専攻コースでは、eスポーツに関する授業がカリキュラムに組み込まれており、実戦経験を積みながらプロゲーマーやゲーム業界への就職を目指すことができます。
また、ゲーム制作を学ぶコースでは、プログラミング、デザインなど、ゲームに関連するさまざまなスキルを学ぶことができます。
通信制高校のゲームコースを選択することで、子どもたちがただ遊ぶだけでなく、ゲームを通じて新しいスキルを身につけることができます。
さらに、同じ興味を持つ仲間とのコミュニケーションも促進され、社会性の向上も期待できるでしょう。また、将来的にはゲーム業界での就職も視野に入れることができ、将来の選択肢も広がります。
ゲームが好きな子どもにとって、具体的な目標を持って学べる環境は魅力的な選択肢と言えるでしょう。
なお、ゲームコースがある通信制高校については、『eスポーツ専攻コースがある通信制高校まとめ』を参考にしてください。
まとめ
不登校の子どもたちがゲームに没頭してしまう背景には、現実逃避や達成感の欲求、コミュニケーションの手段などさまざまな理由があります。
ゲーム依存症になるリスクがあるものの、ゲームを取り上げることは必ずしも効果的ではありません。子どもにとって納得できる形で、ゲームを使用するルールを設定する必要があります。
その上で、ゲーム以外に興味が持てるものを探す手助けをすると良いでしょう。好きなことを伸ばしてあげるために、ゲームコースがある通信制高校へ進学するという選択肢もあります。