不登校で中卒をリカバリーできる進路とは?高卒資格の取得方法も紹介

中学校で不登校のために、高校へ進学しなかったり、中退したりしてしまうと、最終学歴は中卒です。高校は義務教育ではありませんが、中卒と高卒とでは、進学や就職で選べる進路の幅が異なります。本記事では中卒と高卒の違いや不登校でも高卒資格を取得する方法について紹介します。

不登校による中卒は就職や進学で不利になる

文部科学省が実施している、2022年(令和4年)度の学校基本調査によると、中学校の卒業者数は1,078,207人でした。そのうち98.8%の1,065,505人が高等学校等へ進学しています。※1

高等学校等への進学が多い中で、最終学歴が中卒である場合は、さまざまな場面で不利になることが考えられます。

※1:令和4年度 学校基本調査 状況別卒業者数

中卒と高卒の生涯年収の差

2021年(令和3年)度の高校生3,014,194人のうち、38,928人が同年度に中退しました。これは、高校へ入学したものの、38,928人が中卒として社会に出たことを意味します。※2

また、同年度の中学校卒業者数は、1,052,489人でした。このうち全日制、定時制、通信制を問わず、いずれかの高校へと進学したのは1,040,730人。※3残りの11,759人(死亡者を含む)は、専修学校や公共職業能力開発施設等へ進学、就職、あるいは進路未定で、最終学歴が中卒のまま社会に出ています。※4

『ユースフル労働統計2022-労働統計加工指標集-』(独立行政法人労働政策研究・研修機構)によると、2022年(令和4年)の学歴別生涯賃金(男性)は、中卒者でおよそ2億3,800万円、高卒者でおよそ2億5,410万円と公表されています。

■学歴別・男性の生涯賃金(2022年)※5

最終学歴 生涯賃金
中学卒 2億3,800万円
高校卒 2億5,410万円
高専・短大卒 2億6,450万円
大学・大学院卒 3億2,780万円

中卒者と高卒者との生涯賃金の差は、およそ1,610万円です。この差を大きいと感じるか、小さいと感じるかは人それぞれですが、中卒で職に就いて勤続年数を長くするよりも、3年かけて高卒の資格を取るほうが、結果的に生涯賃金が高くなります。

※2:令和3年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について p.115
※3:文部科学統計要覧(令和3年版) 5.中学校
※4:高等専修学校のなかには、定時制や通信制高校と併せて入学することができる学校があります。その場合、高校の勉強をあわせて修業することで、卒業と同時に高卒資格を取得できます。
※5:労働政策研究・研修機構『ユースフル労働統計2022』 21 生涯賃金など生涯に関する指標 p.320

中卒では希望の進路に進みにくい

ハローワークや転職情報サイトで求人情報を探すとき、中卒者は「学歴不問」、高卒者は「高卒以上」を条件にします。学歴不問とは文字通り、就職・転職希望者の学歴を問わない募集のことです。

雇用側が高卒以上あるいは大卒以上を条件にする理由はさまざまですが、そのひとつに、雇用後も勉強を続けてもらうため、学ぶ力を有した人材を欲していることが挙げられます。

また、専門の資格や技術を習得したい場合、専門学校に入学し、学習するのが最も近道ですが、専門学校への入学には、高卒以上あるいは高卒認定(高等学校卒業程度認定)の資格が必要です。大学への入学も同様です。

中卒で正社員やアルバイトとして働きつつ、いずれ条件の良い会社や、好きな分野の会社へと転職したいと考えているのなら、働きながらでも高校卒業の資格を取得できる定時制や通信制の高校へ入学して備えたほうが良いでしょう。

不登校から定時制や通信制高校で学び直す

あらゆる面で、高卒の資格を持っている方が有利ですが、「また不登校になるかもしれない」「通学を再開する自信がない」など、さまざまな不安を抱え、高校へ復帰する勇気を持てない人もいます。

そのような人には、全日制だけではなく、定時制高校や通信制高校で学び直す方法があります。また、高卒認定を受験する方法もあるでしょう。高卒認定は文部科学省が行っている国家資格です。高卒認定に合格すると、高校を卒業した人と同等の学力があると認められます。

定時制高校は夜間だけでなく昼や夕方の授業がある学校もあります。時間に融通がきき、不登校経験者も多いので周りを気にせず通いやすいでしょう。

通信制高校は、自宅学習でレポートを作成し、月に数回だけスクーリングとして学校へ登校することが多いです。本人が希望しない限り、クラスメイトと交流する必要はありません。また、単位制を採用しているので、スクーリングができなくても留年することはなく、修得した単位を失わずに済みます。通信制高校に在学している限り、何度でもやり直すことができるのです。

※通信制高校によっては、在学できる最大期間を設定している場合があります。

また、私立の通信制高校では、通学の日数を自分で選択できる学校があります。はじめは少ない日数にしておき、慣れたら通学日数を増やせます。

通信制高校なら、いきなり不登校を治すのではなく、徐々に自分のペースで学び直すことが可能です。また、学校によっては、高校を卒業するための授業だけでなく、専門的な技術や知識を身に付ける授業を受けることもできます。

不登校から進学できる高校は「不登校から高校進学を叶えよう!入試や受験、高校選びの注意点」で詳しく解説しています。

不登校からの復帰については「不登校から就職して働くには。いまからはじめる将来設計」でも詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。

不登校のサポートができる通信制高校を選ぼう

不登校から通信制高校へ進学する際、生徒のサポート体制が整っている学校を選ぶことが重要です。最後に、不登校の生徒に必要なサポート体制について紹介します。

通信制高校なら中学校の勉強からやり直すこともできる

通信制高校に入学しても、勉強が苦手で、授業についていけるか不安を抱いている人もいるでしょう。しかし、自分にあった学校を選べば心配ありません。

公立の通信制高校では、難しいかもしれませんが、私立の通信制高校なら、個々の生徒が抱えている問題を教師とともに見つけ、きめ細かなサポートを受けることができます。

学校によっては、小中学校でつまずいてしまったところから勉強し直し、最終的に高校を卒業できるレベルにまで学力を引き上げてくれるところがあります。苦手な勉強を克服できれば、高校を卒業してからの進路も開けてきます。ひとりで悩んでいるより、通信制高校で教師に相談し、アドバイスを受けたほうが、早く解決できるでしょう。

再び不登校になる前にカウンセリングを

通信制高校によっては、専門のカウンセラーが常駐している学校があります。メンタル面などに不安を抱えている人は、そういった通信制高校を選ぶと良いでしょう。

カウンセラーのいる学校であれば、「月に数回のスクーリングがつらい」「勉強が手に付かない」「理由のない不安を感じる」など、不登校の兆候を感じたときにはすぐに相談ができます。

また、カウンセラーが常駐していなくても、不登校の生徒に対して、サポート体制が整っている通信制高校があります。学校説明会や相談会などで、サポート体制について聞いておきましょう。

不登校サポートが手厚い学校は「不登校サポートが手厚い学校まとめ」で解説していますので参考にしてください。