不登校の高校生への対応は?原因・対策・進路まで徹底解説

不登校の高校生を抱える親にとって、子どもにどのように対応すれば良いのかは悩みとなります。小学校や中学校と異なり、高校の場合、不登校を放置すると、進学や就職などの進路に影響が出る可能性があります。この記事では、高校生の不登校の原因や進路への影響を解説し、NG行動や具体的な対策を紹介します。

高校生の不登校割合

高校生の不登校の人数は、近年増加傾向にあります。

■高等学校における不登校生徒数の推移

出典:文部科学省「令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」をもとに作成(以下同)

文部科学省の調査によると、2023年度の不登校生徒数は68,770人(全体の2.35%)で過去最高でした。

不登校といっても、ある程度学校に通える生徒や、ほとんど学校に行けていない生徒がいます。

■欠席日数別 不登校生徒数と割合

90日以上欠席していて、出席日数が10日以内の生徒は2.8%でした。

一方、欠席日数が30~49日の生徒は57.2%、50~89日の生徒は27.1%です。

1~3ヵ月もしくは月3~7日ほど学校を欠席するケースが、8割以上でした。

高校生が不登校になる理由

高校生が不登校になる主な理由は、学校でのストレス、人間関係、精神的健康状態の悪化、家庭環境の問題などさまざまです。

文部科学省の同調査によると、高校生の不登校理由の上位5つは以下の通りでした。

  • 学校生活に対してやる気が出ない:8%
  • 生活リズムの不調:7%
  • 不安・抑うつ:7%
  • 学業不振:4%
  • 友人関係(いじめを除く):0%

学校に行きたくないといった気持ちが生まれる原因は人によって異なりますが、高校生は思春期の多感な時期で、環境も自身の状況も大きく変化します。

そのため、学年によっても不登校になる原因が異なります。ここでは、学年ごとの違いを確認しておきましょう。

高校1年生で不登校になる理由

高校1年生で不登校になる原因には、次のようなことが考えられます。

  • 受験後に燃え尽き症候群になった
  • 刺激的な生活を好むようになった
  • 希望の高校に入学できなかった
  • 学校の課題量についていけない

受験後に燃え尽き症候群になった

自分が希望する高校に入学するために、中学3年生のときに必死に勉強をがんばる子どもは多いでしょう。

念願の高校に合格できて、いざ高校生活がスタートしたものの、緊張の糸がプツンと切れて「燃え尽き症候群」になる子どもも少なくありません。

燃え尽き症候群とは、急に熱意や意欲を失ってしまう状態のことです。学校に行く意欲がなくなったり友達と何も話したくなくなったり、朝起きられなくなったりする、などの症状が表れます。燃え尽き症候群はうつ病の一種と考えられています。ただ、一般的に燃え尽き症候群とうつ病は、発症する要因に違いがあります。

うつ病は根拠のない悲観的思考により不安な気持ちが生まれ、思い悩むことが多いのに対し、燃え尽き症候群は大きな目標を達成したことで次に打ち込めるものがなくなった場合に起こります。ただし、燃え尽き症候群を経てうつ病になる事例もあるため、日頃から子どもの状態を観察し見極める必要があります。

刺激的な生活を好むようになった

高校に入学して交友関係の幅が広がると、友達と遊ぶことが楽しくなります。中学校に比べると行動範囲が一気に広がり、学校帰りに友達と買い物に行ったりアルバイトをしたりなど、刺激的な生活を好むようになる高校生も少なくありません。

生活の変化で勉強不足になるだけでなく、学校に行かなくなったり、夜遅くまで遊び回ったりする場合もあります。このような生活を続けていると、誰にも縛られず自由でいたい気持ちが強くなり、不登校になる子どももいるようです。

また、「友達から仲間外れにされたくない」といった気持ちから、友達の誘いをうまく断れずに悩んでいる子どももいます。このような場合は自分でもこのままではいけない自覚があるため、親の対応次第ではまた学校に通うようになることもあるでしょう。

希望の高校に入学できなかった

高校受験を必死でがんばっても、希望の高校に行けなかった場合があります。努力をしたのにそれが報われなかったという事実は、思春期の子どもには衝撃的な出来事で、心に深いダメージを与えてしまうものです。

ただ、実際に学校に通ってみると気の合う友達ができて楽しめることも多いため、ここでうまく気持ちを切り替えられる子どももいます。気持ちを切り替えられなかった子どもは、ほかの高校に入学できても希望の高校に入学できなかった後悔だけが残り、最終的に不登校になってしまう事例があります。

学校の課題量についていけない

進学校に入学して不登校になってしまう高校生は、意外と多くいます。原因は進学校ならではの勉強によるストレスです。例えば、毎日大量の課題が出されるなどが挙げられます。

進学校では毎日課題を終わらせるだけで何時間もかかり、勉強の難易度も高いなどの理由で授業についていけなくなることがあります。

熱心な家庭であれば、学校の課題に加えて学習塾に通う高校生もいるでしょう。日々勉強に打ち込んでいると睡眠時間を削られ、子どもはストレスを感じます。また、模擬試験は土日に行われることが多く、休日返上で勉強に励んでいてストレスが発散できない状況もあるでしょう。このような状況下で勉強から逃げ出したくなり、不登校になってしまいます。

高校2年生で不登校になる理由

高校2年生で不登校になる原因は、次のようなことが考えられます。

  • 友達同士のトラブルが絶えない
  • 自分の将来に漠然とした不安がある
  • 大人や社会に嫌気がさしている

友達同士のトラブルが絶えない

高校2年生になると仲の良い友達が増えて、よく一緒に行動する人が決まってきます。良好な人間関係を築けていれば問題はありませんが、友達同士の問題に悩んでいる子どももいるでしょう。また思春期の多感な時期なので、友達同士に加え異性をめぐる問題も出てきます。

親からすると友達同士の問題は小さなことに感じるかもしれませんが、本人からすると不登校になるほど深く傷ついている場合があります。友達同士の些細な喧嘩からいじめに発展し、それがきっかけで不登校になる事例もあります。

近年はSNSが普及したことで、ネットを利用した陰湿な嫌がらせやいじめも発生しています。ネットに書き込まれた投稿は「デジタルタトゥー」といわれ、一度掲載されると完全に削除するのは困難です。このような嫌がらせやいじめは、学校に通わなくなる原因になってしまいます。

自分の将来に漠然とした不安がある

高校2年生になると、文系か理系のどちらかを選択してクラス分けを行う学校があります。選択時にまだ自分の将来に対して真剣に向き合えず、先のことを深く考えずに周りの友達に合わせて文系か理系か選んでしまう子どもがいます。そして、勉強が進むにつれて「自分はこの選択で良かったのだろうか…」といった不安な気持ちが生まれることがあります。

なかには自分の得意分野とは異なる選択をしてしまい、周りの友達から勉強で取り残される子もいるようです。

この場合、周りとの温度差に苦痛を感じ、学校から逃げる形で不登校になってしまう可能性があります。自分の将来に対して自暴自棄になっている子どもには、親が一番の理解者であることを伝えてあげましょう。親の対応が求められる場面なので、子どもの気持ちを理解して丁寧に接してあげることが大切です。

大人や社会に嫌気がさしている

高校2年生は思春期で多感な時期ということもあり、理由もなく大人や社会に対して無性に腹が立ち、反抗的な態度になる子どもがいます。

親に対してはもちろん、学校の先生に対してイライラをぶつける子もいます。学校には校則があり、それを守って高校生活を送らなければいけません。校則は高校生からすると自由を奪われているようで、反抗したくなる子もいて、「息苦しい学校にいるくらいなら行かないほうが良い」といった考えに至り、最終的に不登校になってしまいます。家庭でも親に対する反抗がひどく、うまくコミュニケーションを取れないケースがあるようです。

高校3年生で不登校になる理由

高校3年生になると、子どもは嫌でも自分の将来と向き合わなければいけません。進路選択で大きなストレスを抱える高校生が多くなります。高校3年生で不登校になる原因には、主に進路や受験関連が挙げられます。

  • 進路が決まらず不安を感じている
  • 受験のプレッシャーを感じている

進路が決まらず不安を感じている

高校2年生までは勉強をがんばりつつ友達と楽しい高校生活を送れていても、高校3年生になると急に自分の将来と向き合わなければいけなくなります。「自分は将来何をしたいのか」「大学に進学するのか、就職するのか」など考えなければいけない重要な時期です。

将来の目標や夢が明確にある子であれば、悩むことなく自分の進路を決められるでしょう。しかし、将来の目標や夢が明確にない場合は、自分がどのような選択をすれば良いのかわからず、ただただ不安な気持ちにさいなまれる子がいます。

人によっては「自分はダメな人間だ…」と自分自身を責めて落ち込むこともあるでしょう。このような場合は、学校に行くたびに敗北感を感じ、徐々に学校に行かなくなる可能性があります。

受験のプレッシャーを感じている

進路で専門学校や短大、大学への進学を選択した場合、受験に対して大きなプレッシャーを抱えることになります。特に大学受験のプレッシャーは極めて大きいでしょう。「ここで失敗すると学歴で就職に悪い影響を与えてしまい、自分の人生は終わる」といった偏った考え方をする子も少なくありません。

そのため、模試の結果で一喜一憂したり健康を害して情緒不安定になったりなど、心身ともに不安定になる子が出てくるでしょう。努力して勉強しても良い結果を残せないと、「どうせ勉強しても落ちる」「もう勉強したくない」などと自暴自棄になりがちです。

このようにして、勉強から離れたい気持ちから学校に行くのが嫌になり、不登校になってしまいます。この時期は無理に勉強することを押し付けず、子どもの気持ちに寄り添い、蓄積されたストレスを発散できるような対応が必要でしょう。親の対応次第ではまた勉強の意欲を取り戻し、将来に向けて進んでくれるはずです。

高校生で不登校だとやばい?

不登校の理由はさまざまなので、「不登校だからやばい」ということはありません。

しかし、不登校を放置すると、進学や就職が不利になる可能性があります。

不登校だと高校を卒業できない?

高校生が不登校になって出席日数が不足すると、学年を修了できず留年する可能性が高まります。ルールは学校によって異なりますが、一定の基準を満たさない場合、進級や卒業が認められません

小学校や中学校は留年がないため、不登校のままでも卒業することができますが、高校では不登校を放置することはできず、学校に復帰するか辞めなくてはなりません。

学校を辞めた場合、最終学歴は中卒になります。

不登校の高校生の進路はどうなる?

不登校だからといって、進学や就職ができなくなるということはありません。ただし、進学にしても就職にしても、不利になる可能性はあります。

高校に復帰できれば良いですが、中退すると、進路の選択肢が制限されます。高卒資格がないため、大学進学や専門学校への進学が困難になります。この場合、高卒認定試験を受けて、高卒認定を取得する必要があります。

また、就職活動においても採用条件として高卒以上を求める企業が多いため、就職先の選択肢が狭まります。

不登校の高校生の進路については、高校で不登校だと進路はどうなる?中卒だと将来不利?も参考にしてください。

不登校の高校生へのNG対応

高校生はさまざまな要因で、不登校になる可能性があります。子どもの気持ちや状況を理解し、それらに応じた適切な対応をすれば、学校へ行きたくない気持ちが緩和されることもあります。しかし、以下のような対応をすると、学校に行きたくない気持ちが強くなってしまう可能性があるので注意が必要です。

無理に学校に行かせる

子どもが高校に行きたくないときに、無理やり登校させるのは逆効果です。精神的な負担が増し、さらなる不安や恐怖を感じてしまうことがあります。

さらに、親子間の信頼関係にも悪影響を及ぼす可能性が高く、子どもの精神状態の悪化にもつながることがあります。

子どもが学校に行きたくないと言ってきたときは、学校を休んでも良いことを伝えましょう。親から休んでも良いと言われると、子どもは気持ちが一気に楽になるものです。また、「親は自分の味方をしてくれる」と思えるので、学校の悩みを打ち明けてくれることもあるでしょう。親子の会話の中から、不登校の問題を改善するヒントを得られるかもしれません。

不登校の理由を詮索する

学校に行きたくない理由を必要以上に詮索することは避けるべきです。

詮索されることで、子どもは追い詰められた気持ちになり、かえって心の壁を作ってしまうことがあります。また、原因を探ること自体が子どもにとってプレッシャーとなり、結果としてさらなるストレスを引き起こす可能性があります。

大切なのは、子どもが自分から話したいと思ったときに耳を傾けることです。無理に話をさせるのではなく、自然に会話が生まれるような環境作りを心がけましょう。

子どもが相談したいと思えば、自分から不登校の原因を話してくるはずです。気持ちが切り替わるまで時間は必要かもしれませんが、子ども自身が話をしたいと思えるまで待ってあげましょう。

親の意見や常識を押し付ける

親の意見や常識を押し付けることも禁物です。

例えば、「高校は必ず卒業するべき」「みんな我慢している」などの言葉は、子どもにとって重いプレッシャーとなります。親の意見を押し付けられると、子どもは自分自身の気持ちを尊重してもらえないと感じ、不信感や反発心が生じることになります。

子どもは子どもで、今の状況や自分の将来について考えています。親目線で判断せず、子どもの気持ちや主張に共感し、受け入れる気持ちで接してください。

「話してくれてありがとう」「気持ちを教えてくれてありがとう」と、子どもを尊重する姿勢を伝えてあげると良いでしょう。

高校生で不登校になった場合の対策

高校生で不登校を放置すると、進路に影響が出る可能性があります。そのため、学校に復帰するなり、今の学校以外の選択肢を探すなり、何かしらの対策が必要になります。

スクールカウンセラーや不登校支援団体に相談する

スクールカウンセラーや不登校支援団体に相談するのは有効な方法です。高校生は多感な時期なので、家庭では対処しきれないことも多々あるでしょう。

家族でも先生でもない、第三者の専門家だからこそ話せることがあるかもしれません。一方で、「カウンセリング」に重みを感じ、嫌がる場合もあります。子どもが乗り気でない場合は、まずは親だけが相談に出向いてみると良いでしょう。

保健室登校やリモートでの授業参加を提案する

教室には行けないけれど別室なら登校できるという場合は、保健室登校や別室登校を学校に相談し、対応可能であれば子どもに提案してみましょう。

また、学校には行けないけれど授業は受けたいという場合は、学校によってリモートで授業を受けられることがあります。

今の学校以外の選択肢を検討する

不登校の改善策として、通っている学校への復帰以外に、他校へ転校することも有力な選択肢のひとつです。学校が変われば人間関係や学習環境が変わるため、転校をきっかけに学校に通えるようになる可能性があります。

どうしても学校に通いたくなければ、通信制高校で学校に通わずに高卒資格を取得する方法もあります。

いずれにしても、最適な環境は人それぞれです。今の環境が厳しいのであれば、子どもに合った環境を探すようにしましょう。

不登校の高校生の転校先は?

転校先には全日制高校をはじめ、定時制高校や通信制高校などがあり、子どもの生活スタイルに応じて最適な高校を選べます。

特に通信制高校は、自宅での学習が中心となるため、あまり学校に通わずに高卒資格が欲しい人にとって有力な選択肢となります。

また、通信制高校は学習面・生活面でのサポート体制も整っているため、不登校経験のある人でも通いやすいと言えるでしょう。

昨今では、不登校生徒の増加に伴って、通信制高校の数や生徒数も増加傾向にあり、注目されています。

出典:文部科学省「学校基本調査」をもとに作成

転校先を選ぶ際には、各学校の方針やサポート体制を確認し、子どもと一緒にじっくり検討することが大切です。それぞれの学校の特色を理解したうえで、最適な学びの場を選びましょう。

不登校の高校生の転校先については、不登校の高校生が転校するタイミングは?転校のメリット・デメリットを解説も参考にしてください。

よくある質問

ここでは、不登校の高校生に関するよくある質問とその回答を紹介します。

Q.不登校でも大学受験できる?

A.不登校でも大学受験は可能です。ただし、大学を受験するには高卒資格か高卒認定の取得が必要です。

詳しくは、こちらの記事「高校で不登校でも大学受験はできる?大学に行きたいなら抑えておくべきポイント」を参考にしてください。

Q.不登校でも就職できる?

A.不登校でも就職はできます。ただし、不登校から学校を中退し、最終学歴が中卒になると、就職先の選択肢が狭まります。

詳しくは、こちらの記事「不登校でも就職できる?不利になる理由や成功率を上げる方法」を参考にしてください。

Q.高校生で不登校が一番多い学年は?

A.高校生で不登校が一番多い学年は、高校1年生です。文部科学省の調査によると、2023年度の学年別の不登校生徒数は以下の通りでした。

  • 1年生:16,827人
  • 2年生:15,757人
  • 3年生:12,699人

中学校から高校へ進学する際の環境変化や、新しい友人関係の構築、学習の難易度の上昇などが原因として挙げられます。

Q.不登校の高校生の復帰率は?

A.同調査によると、不登校が前年度から継続している生徒の割合と、中退した生徒の割合は以下の通りでした。

  • 不登校が前年度から継続している生徒:0%
  • 中退した生徒:1%

「復帰した生徒」という明確なデータがあるわけではないので一概には言えませんが、最大で約57%の生徒が不登校から復帰していると考えられます。

Q.不登校の高校生の親で疲れたらどうする?

A.不登校の子どものケアで親自身が「疲れた」と感じた場合、まずは自身の心身の健康を大切にすることが重要です。

不登校の支援機関などにも相談し、悩みやストレスを共有して、適切なアドバイスを受けると良いでしょう。

また、一人で抱え込まず、配偶者や友人、親戚など信頼できる人と協力し合うことも大切です。

まとめ

高校生の場合、不登校を放置すると、進学や就職などの進路に影響が出る可能性があります。

とはいえ、無理に学校に行かせようとしたり、親の意見を押し付けたりすると、かえって学校に復帰できなくなってしまいます。

高校生が不登校になる原因や状況はさまざまです。そのため、最適な対応も一人ひとり異なります。

子どもの気持ちに寄り添い、別室登校や転校も含めて柔軟な対応を検討することが求められます。