不登校が再発したら?不登校の再発防止と再発した場合の対処について

不登校の再発は、比較的よく起こることです。不登校を克服して学校に通えるようになったあとで、不登校が再発してまた通えなくなることは決して珍しいことではありません。 しかし、家族や周囲の大人たちにとっては「せっかく学校に通えるようになったのに」や「不登校の状態に逆戻りしてしまった」など、不登校が再発したことに対して、不登校になったとき以上に焦りや戸惑いを強く感じることが多いことでしょう。 子供の不登校が再発した場合、周囲が落胆したり焦ったりするのではなく、なぜ再発したのかを見極めて対処することが大切です。本記事では、不登校再発の原因や再発防止のためにできること、再発した場合の対処法などについて説明します。

不登校の再発について

子供が再び学校に通えるようになったにもかかわらず不登校が再発してしまうと、状況によっては不登校になったときよりもショックを受ける保護者の方もいます。特に、不登校の期間が長ければ長いほど、再発したときの焦りは大きくなりがちです。

再発の定義は難しいですが、さまざまな調査やアンケートから、再発の割合は7~8割程度だと言われています。

よって、再び学校に行けるようになった子供のうちの8割近くが不登校を再発するということをあらかじめ踏まえておくと、不登校が再発した場合でもあわてなくて済むと言えるでしょう。

不登校が再発することを恐れるのではなく、なぜ不登校が再発するのか、不登校を根本的に解決するにはどうすればよいのかについて考えていくことが大切です。

なぜ不登校が再発するのか

ここでは、なぜ不登校が7~8割程度も再発するのか、不登校の再発が多い背景にはどのような原因が隠れているのかについて、主な理由を取り上げてみましょう。

新たな不登校の原因が発生した

学校に通い始めたのに再び行けなくなってしまった場合、周囲は以前と同じ原因によるものだと考えがちです。しかし、必ずしもそうとは限りません。以前の不登校の原因になっていたものとは異なる、不登校を引き起こす新たな原因が発生した可能性もあります。

不登校が再発したからといって、前の原因と同じだと決めつけてしまうと、解決すべき問題が見えなくなってしまう恐れがあるので注意が必要です。不登校の再発であっても、新たな問題が発生したかもしれないという前提に一度立ってみることが大切です。

不登校の原因が根本的に解決していない

不登校が再発した原因として、新しい問題や原因の発生が見つからない場合は、以前の不登校を引き起こした原因が表面的にしか解決していなかった恐れがあります。

また、根本的な不登校の原因が解決していなかったにもかかわらず、子供が再び学校に通い始めた背景には、一時的に不登校の原因となっている問題がなくなったように感じられただけの場合や、子供自身が周囲を気遣って無理に学校に通い始めた場合などが考えられます。

特に、やさしくて周囲に気遣いをする子供の場合、問題が解決していないのに無理をして登校する傾向が多く見受けられます。不登校の根本的な原因を解決しようとするだけでなく、子供が無理をしていないかどうかにも注視することが大切です。

重大な問題が隠れている場合に注意

不登校の原因が根本的に解決していなかったケースとして、次にあげるような重大な問題が隠れている可能性もあるので注意しましょう。

精神疾患・発達障害

不登校を何度も繰り返し、また特に学校や家庭に問題が見当たらない場合、身体的・精神的な疾患発達障害などが隠れていることがあるので注意が必要です。

特にうつ病の場合、症状が良くなったり悪くなったりすることが多く、それに伴って不登校が何度も再発するケースもあります。

精神疾患や発達障害などの兆候や心配がある場合は、専門の医療機関に相談してみると良いでしょう。

悪質ないじめ

不登校の再発には、仲間外れや悪口などの単純ないじめではなく、周囲に認識されにくい方法や手段を使った悪質ないじめが起きている可能性も否定できません。

悪質ないじめの場合、周囲が気づきにくく、子供から打ち明けてくることも少ないので、発見が遅れがちです。また、いじめを受けている子供自身が報復を恐れていじめを隠そうとし、カモフラージュのために無理に登校しているということも考えられます。

そのような悪質ないじめの可能性があると思われる場合は、子供が安心する状況をしっかりと作ったうえで話を聞き、さらに学校などと連携をして事実確認をしっかりと行うようにしましょう。

虐待

家庭内や身近な人から虐待がある場合も、不登校をくり返す原因になることがあるので注意が必要です。そのような場合、子供の意思ではなく虐待している人の気分によって、学校に通えたり通えなかったりします。

虐待の心配があれば、子供から話を聞くだけではなく、きちんと調査や事実確認をすること大切です。事態が深刻な場合は、児童相談所などへの通報も視野に入れましょう。

小学生の不登校の再発について

不登校の特徴や再発する原因は、年齢や学校種別で異なります。ここではまず、小学生の不登校の特徴と主な再発原因、注意点についてみていきましょう。

小学生の不登校の特徴と再発原因

小学生が不登校になる原因はさまざまですが、根底に「愛着障害」がある場合が多いのが特徴だと言えます。愛着障害とは、親など保護者や養育者との情緒的なつながりや信頼関係といった「愛着形成」がうまく作られていないために現れる障害のことです。

この愛着障害が根本的に解決できていないことにより、母子分離ができなかったり自尊感情が育たなかったりして不登校が起きている場合があります。また、愛着障害から発生している問題が、小学校の在学中や中学生になってから不登校が再発する原因になっている場合もあると言えるでしょう。

小学生の不登校再発の注意点

愛着障害による問題から小学生の不登校が再発した場合は、自分自身が愛されているという実感を持たせながら愛着障害を克服することが大切です。

小学生の場合は成長に伴い新たな不登校の原因が発生していることも多いので、これまでの不登校と原因が同じだと決めつけないようにしましょう。

また、不登校の再発に直接関係していませんが、兄弟姉妹に小学生がいる場合は、その兄弟姉妹が学校に行かない不登校の兄弟姉妹の状況をうらやんだり真似たりすることがあります。そのようなことにならないよう、不登校の子供に学校に通っている兄弟姉妹がいる場合は、十分なケアをしてあげるようにしましょう。

中学生の不登校の再発について

次に、中学生の不登校の特徴と主な再発原因、注意点についてみていきましょう。

中学生の不登校の特徴と再発原因

小学校で不登校だった場合、中学生になって環境が変わってから不登校が再発するケースや、中学校から始まった不登校が何度も再発するケースなどがあります。

中学生になってから不登校が再発する原因として考えられるのは、幼いころから小学生の間において、親などの保護者との信頼関係が築けていなかったり、自己尊重感が十分に育っていなかったりといった愛着障害による問題の再燃です。

また、中学生は身体的にも精神的にも急激に成長する思春期に入るため、小学校での不登校とは異なる理由で不登校が再発することもあります。子供の話を聞き、様子をしっかりと観察することで原因を見極めることが大切です。

中学生の不登校再発の注意点

中学生の場合、小学生のように感情のままに行動することが減り、子供にとっては問題が何も解決していない状態であるにもかかわらず、「少し学校に行ったほうがよいかもしれない」といった周囲への気遣いから登校するといったケースが増えます。

子供にとっては、ちょっとした気まぐれや何となくといった気持ちで登校しているだけなのですが、子供が学校に再び行くことを待ち望んでいる周囲の大人たちはこの一時的な登校を不登校の解決と勘違いし、大げさに期待をしてしまいがちです。

そのような状況になると、子供に周囲からの強いプレッシャーを与えてしまうことになり、不登校をこじらせることになりかねません。そのような登校を不登校の克服と捉えることがないように、子供の様子をしっかりと観察することが大切です。

高校生の不登校の再発について

最後に、高校生の不登校の特徴と主な再発原因、注意点についてみていきましょう。

高校生の不登校の特徴と再発原因

高校生の場合、小学生や中学生とは違い義務教育ではなくなります。そのため、子供自身の「学校に行く」という気持ちが、これまでの環境よりも再登校において大きな影響を与えると言えるでしょう。

高校生の不登校の原因としては、環境の変化や勉強についていけないといったものだけではなく、自分自身の在り方将来の不安などが増えます。これまでの生活の中で、愛着障害や自尊感情などの問題が解決できていない場合は、自己肯定感の欠如自信喪失といった形で不登校を引き起こしている場合もあると言えるでしょう。

高校生の不登校再発の注意点

高校生の場合、義務教育ではないので出席日数が不足すると進級や卒業ができなくなります。そのような問題を回避するためにも、不登校が再発した場合は早めの対処が必要です。

高校に入学してから不登校が再発する場合、人間関係のトラブルや勉強の遅れ、将来への不安などさまざまな原因が考えられます。また、包括的な問題として入学した高校が、子供の性格や生活スタイルに合っていない可能性も否定できません。子供とよく話し合ったうえで、状況によっては転学も視野に入れてみてもよいでしょう。

不登校再発を防ぐために周囲ができること

再発することが多い不登校ですが、再発しないに越したことはありません。ここでは、不登校が再発しないように周囲ができることや注意すべき点について説明します。

早めに再発の兆候を見つける

子供の不登校再発を防ぐためにまず大切なことは、不登校をしていた子供が再び登校し始めたときに、手放しでよろこんだり安心したりするのではなく、再登校してからの様子を親や周囲の大人が注意深く見守ることです。

子供を注意深く見守ることによって、子供の元気がなかったり様子が違ったりするなどといった不登校再発の兆候を早めに見つけて対処することができます。また、口には出さなくても、見守られているという安心感によって子供自身も落ち着いて登校することができるでしょう。

無理に登校させないようにする

不登校をしていた子供が再び登校し始めたときに、親や周囲の大人が必要以上の反応をして騒ぎ立てないこともポイントの一つです。

学校に行き始めた子供を大げさにほめたり喜んだりし過ぎると、それがプレッシャーを与えることになってしまい、無理に登校する状況に子供を追いやってしまう恐れがあります。子供が登校することに対して、淡々とかつ愛情深く見守る態度が必要です。

同様に、子供自身が親や周囲に気を遣って無理に登校していないかどうかにも注意するようにしましょう。

最初から全出席を目指さない

子供が再び学校に行きだしたからといって、毎日登校できるようになっているとは限りません。不登校を克服したように見えても、子供自身の心の体力が落ちている場合もあります。

学校に再び行き始めると、毎日登校することを強いてしまいがちですが、子供が無理のないペースで登校できるような配慮が必要です。「行けたら行く」程度のペースを認めてあげることで、子供が受ける再登校のプレッシャーを減らすことができるでしょう。

子どもの話を傾聴する

子供が不登校から再び学校に行きだしたら、学校での様子や感じたことなど、子どもの話をしっかりと聞いてあげるようにしましょう。できるだけ子供としっかりと向かい合って、傾聴するのがポイントです。

再び学校に行き始めた子供から、学校で何をしたのか、どのようなことを感じたのかなどを聞くことは、不登校の再発の兆候を見つけるきっかけにもなります。ただし、子供が話さないからといって無理強いをしないことが大切です。水を向けても子供が話したがらないときは、子供が話してくれるまで待つようにしましょう。

今の学校だけにこだわらない

再び学校に行き始めたからといって、今、通っている学校だけにこだわらないことも不登校の再発を防ぐ方法の一つです。

大人もそうですが、子供にとっても「しなくてはならない」や「せねばならない」といったことは大変なストレスになります。再登校し始めたのだからと、今の学校に行き続けなければならないといったプレッシャーをかけないことが大切です。

今の学校に通うことが大変なら、ほかの学校や居場所があるといった大らかな態度を周囲の大人が示すことで、子供に安心感を与えることができる場合もあります。

不登校再発の解決方法

最後に、不登校が再発した場合の解決方法についていくつかご紹介します。子供の不登校が再発したからといって、親や家族、周囲が落ち込んだり焦ったりすることは禁物です。

不登校再発の解決方法や対策は一つではありません。子供の様子をよくうかがい、できるものや適切と思われるものから試してみましょう。

再登校することだけを解決と捉えない

不登校が再発した場合、何とか不登校を解決して子供が学校に行けるようにしようとする前に、「不登校の解決=再登校すること」いった固定概念を払拭するようにしましょう。

確かに、再登校できるようになるということは、最もわかりやすい不登校が解決した姿です。しかし、再登校できるようになったからといって、不登校になった問題が解決しているとは限りません。

大切なことは、子供が不登校になった原因や問題を取り除くことです。それをおざなりにし、再登校することだけを目指すと本末転倒になってしまいます。

不登校が再発した場合の解決方法を考える前に、不登校になった子供にとって本当に問題が解決するとはどのような状態になることなのかをしっかりと考えてあげるようにしましょう。

家族や学校以外で人との接点を持つ

不登校自体の解決方法にもつながりますが、不登校が再発した場合にも学校や家庭以外の場所で、ほかの人との接点を持ち、居場所を作ることが効果的だといえます。

できれば子供自身が望む場所でのつながりを持つことができることがおすすめですが、子供自身が望む場所が特になければ、いくつかの場所を提案してあげて、そこから選べるようにしてもよいでしょう。

同じような不登校の経験を持つ人の集まりや、子供の興味に関連する集まりなどであれば、より参加しやすくなると言えます。

学校以外で趣味や楽しみを見つける

自尊感情や自分に自信を持つことが、不登校再発の解決には必要です。学校以外での趣味や楽しみを見つけることによって、自分に自信をつけることができ、不登校の根本的な解決につながります。

人が集まる場所に参加することがむずかしくても、一人でできる趣味や楽しみを見つけることは可能です。不登校になったり不登校が再発したりした場合は、学校の勉強が遅れないように家庭学習に取り組みながら、好きなことや趣味を充実させることで、子供自身の自尊感情を向上させ、不登校の克服を目指しましょう。

不登校の再発は長いスパンで見守ることが大切

子供が不登校になった場合は、再び学校に行けることを目指すと同時に、不登校は再発しやすいということを親や周囲の大人が認識しておくようにしましょう。そのような認識を持っていれば、子供が再び登校し始めたときでも大げさな反応をしたり過大な期待を持ったりすることがなくなります。

また、不登校の再発を防ぐためには、子供に再登校へのプレッシャーを与えないことが大切です。子供が学校に行った、行かないと一喜一憂したり、「不登校の解決=再登校すること」といった短絡的な捉え方をしたりするのではなく、長いスパンで見守るようにしましょう。