不登校の子供の居場所の選択肢は多い?保護者が寄り添い一緒に探そう

何らかの理由で小中学校を長期欠席し不登校となる子供は毎年増加する傾向にあります。原因は不安や無気力、友人や家族との人間関係などさまざまですが、保護者として心配なのは子供が今後学力だけでなく交友、体力など自立する力をどう身につけることができるかでしょう。 そのためにはまず、子供が落ち着いて冷静に自分や周りの状況を見つめられる「居場所」が必要です。この記事では、不登校の子供にとっての居場所の意義や保護者にとっての重要性を解説し、主な居場所の例を紹介します。

不登校の子供に居場所が必要な理由

不登校の原因は子供一人ひとり違いますが、居場所が必要な理由には共通している点があります。

広い世界を知るきっかけになる

子供の人生のスタートは最初「家族」という小さな世界からスタートします。成長するにつれて、近所の人々や保育園・幼稚園の友達や先生、小学校では他学年の生徒たちや多くの先生などたくさんの人々に触れることで世界を広げ、自分をつくっていきます。

そのため不登校の子供についても、あたらしい世界に触れることは今までとは違う視野を持つことができるためとても重要です。解決できなかった不登校の不安や悩みに対する克服へのヒントは、そんな広い世界にあるのかもしれません。新しい居場所は、不登校の子供が視野を広げることで、何かを発見し自分を取り戻すきっかけになる可能性があります。

保護者以外の頼れる人が見つかる

不登校の原因の1つに「人間不信」があります。自分のことを疑っている、やりたくないことを無理矢理させようとすると感じれば、たとえ保護者でも信じられなくなるでしょう。世の中の人は皆、自分の敵のような気がするかもしれません。そんなときこそ保護者以外の頼れる存在に出会うことは大切です。

不登校の子供の居場所となりえるフリースクールや公的機関には、子供の心に関する専門家が常駐している場合があります。専門的な知識と豊かな経験を持ち、子供が安心する接し方ができる人なら、すぐにではなくても勇気を出して相談できるかもしれません。今まで唯一頼りにしていた保護者の他に頼れる人がいれば、それだけで子供の世界は間違いなく広がっているといえます。

安らげる初めての場所になる可能性も

もし不登校の原因が家庭にあれば、いよいよ新しい居場所が必要です。その居場所は子供にとって安らげる初めての場所になるかもしれません。

まだ未成熟な子供にとって最も大切なのは「安心できる場所」です。居場所ができるだけでも、不登校を克服することへの第一歩を踏み出したといってよいでしょう。

保護者と一緒に居場所を探す意味

新しい居場所を決めるのは子供自身ですが、子供だけで見つけることは難しいでしょう。そのため保護者が子供と一緒になって居場所を「探す」ことはとても大切なことです。

「学校に行くのが普通」を改める機会に

多くの大人は「子供は学校に行くのが普通」と考えがちですが、それはただの思い込みではないでしょうか。海外では学校に行く条件がそろっていてもあえて学校ではなく家庭で保護者が勉強を教えることがあります。

相対性理論で有名なアインシュタインも生前「学校に行かなかった」「学校が嫌いだった」と語っていて実際学校へ行ってはいませんでしたが、それでもあれほどの大発見をしています。学校でなくても学ぶ方法はあるという好例であるといえるでしょう。

子供も「本当は学校に行かなければいけないのに、行けない」と自分を責め、より悩みが深くなり、不安になっているのかもしれません。

そんなとき最も身近な大人である保護者が「学校に行かせるより、子供の不安に向き合うべき」と行動することができたら、子供はきっとそれを「自分を思ってくれている」と感じるでしょう。

保護者の子供に寄り添う態度を示す

一緒に居場所を探すとき大切なのは「子供がどんな居場所を欲しがっているか」です。

しかし、子供に直接聞いてみてもうまく言葉にできず黙ったままになってしまうかもしれません。そんなときは「ここはどう?」「こんなところがいいと思う」と保護者の考えを示すより、子供に寄り添ってただ「言葉を待つ」のもよい方法です。

保護者がよいと感じる居場所に行ってみて欲しい気持ちはあるでしょうが、行くのはあくまで子供なので自分から「行ってみたい」といえる居場所が見つかるまでしっかり待ちましょう。

待つことで子供に対して寄り添う態度を示すことができます。そうすれば、保護者が自分を尊重してくれていると感じるでしょう。

子供は保護者の理解や態度に敏感

大人は人生経験があるだけに言葉や表情・振る舞いを巧みに使い分けますが、もしそれが本心でなければ子供は敏感に感じ取ります。確かに仕事があって休日はゆっくり体を休めたいのに「居場所を探す」のは大変です。そんなとき子供に対して思わず配慮に欠けた、ぞんざいな扱いや態度を取るのは仕方ないのかもしれません。

しかし子供は真剣に悩み、「学校へ行かない」と決断すると同時に不安も抱えています。子供はどんなときも保護者の態度を敏感に感じ取り、どれだけ自分を理解しているかを測るものです。

その真剣さを保護者もしっかり受け止める必要があります。それが子供の気持ちに寄り添うことであり、理解のための対話にもつながるはずです。子供のことと間違っても軽視したりせず、子供の大問題を共に解決する意気込みを常に持っておきましょう。

学校への復帰以外の居場所の選択肢

不登校の子供の新しい居場所は、大きく2つに分けることができます。1つは学校への復帰を想定しない居場所、もう1つは学校への復帰を目指す居場所です。まずは、どちらかというとハードルが低いと考えられる「学校への復帰を想定しない居場所」を4つ紹介します。

同じ境遇の子供が多いフリースクール

「スクール」といいながら通常の学校とはかなり違いがあるのがフリースクールです。

勉強も教えますが、どちらかというと習い事や遊ぶことが多いスクールもあれば、毎日開いているスクールもときどき行けばいいスクールもあるなど、運営方針や内容はスクールによってかなり違いがあります。

一般に幅広い年齢が一緒に行動する機会が多く、カウンセラーやそれに準ずる資格を持った先生がいるのが特徴です。不登校の子供が多く通うスクールもあります。子供が興味を持ったらよい機会ですから「行ってみる」とよいでしょう。

>【もっと詳しく】フリースクールってどんなところ? 学校との違いや学べる内容、費用をわかりやすく解説

興味のある習い事や地域コミュニティ

不登校の子供が絵画や音楽、ダンスといった芸術に強い興味を示すことがあります。それはうまく言葉にできない気持ちを表す方法、もしくはストレス発散なのかもしれません。いずれにせよ「興味を持っている」というチャンスを生かし、それぞれの習い事教室を候補にしてみましょう。

習い事でなくても地域に同様のコミュニティがあれば一緒に参加してみると保護者も安心です。興味があるものならちょっとした仕事のお手伝いなどもよい経験になります。興味をスタートにこれまでと違う世界を体験するよい機会になるでしょう。

不登校の子供専門の家庭教師

勉強に苦手意識がない場合は、民間の学習塾も居場所のよい候補です。学校以外にも学べる場所があると視野を広げることにもなります。また、学力をつけることで、テストで高得点を取れるようになったり、難しい問題を解くことができるようになったりすれば自信にもなるでしょう。

「外出が難しい」なら、不登校の子供専門の家庭教師が新しい「世界」となってくれるかもしれません。家庭にいながら利用できるので子供にとってもストレスが少ないでしょうし、保護者も安心できるでしょう。

SNSなどのオンラインコミュニティ

インターネット環境があれば、SNSやオンラインコミュニティに参加することで、これまでとはまったく違う世界が開ける可能性があります。最近ではオンラインで協力して成果を得るオンラインゲームも豊富にあり、幅広い年齢の性別も違う相手と力を合わせる体験が自信を取り戻すきっかけになるケースもあるようです。

ただし、多くが匿名なので誹謗中傷などマイナスの影響がないわけではありません。

インターネットに詳しくないからと敬遠するのではなく、むしろ「知らないから教えて」という姿勢で聞くに徹すると子供との距離がより近くなるはずです。

学校へ復帰するための居場所

ここからは学校へ復帰するための居場所を3つ紹介します。子供が「学校に戻りたい」と考えているならこれらの居場所を検討するとよいでしょう。

学校の保健室や図書室など

学校の中にはとにかく「学校に来た」ら出席扱いにするという場合があります。不登校の原因がクラスの友達や先生との人間関係であれば、保健室や図書室といった教室以外の場所を居場所にできる可能性があります。

あくまで子供が行くと決めたら行くようにし、毎日何時、毎週何曜日に行くと決める必要はありません。きっと「行けた」ことが積み重なって大きな自信になるでしょう。

公的な支援施設を利用する

公的な施設でいうと、適応指導教室(教育支援センター)が不登校の代表的な支援期間です。これは各地の教育委員会が設置する施設で、無料でカウンセリングや学習指導、スポーツなどの活動に参加することができます。

また都道府県の児童相談所児童相談センターも、児童福祉士や児童心理司といった専門家がいる、不登校を相談しやすい場所です。一時保護などの制度がありますから、事情などで家庭での生活が難しい場合は相談し、積極的に利用しましょう。

通信制など転校して別の学校へ

他校への転校や中学や高校への進学も、新しい居場所作りになり得ます。1から人間関係を作るのは確かに大変ですが、さまざまな経験を生かして新しくスタートしやすい環境になるでしょう。

中でも登校日数が少ない通信制高校は、自分のペースで不登校から抜け出したい子供にはぴったりです。通信制高校には不登校の子供以外にも仕事や芸能・スポーツと勉強を両立したい子供もたくさんいます。自分と違う生き方をする友達と接することは、あたらしい世界を感じるよい機会になるかもしれません。

居場所を探すときの注意

不登校の子供にとって新しい居場所には大きな意味がありますが、保護者にとっては別な意味もあります。その食い違いには注意する必要があります。

子供の気持ちを最優先に

子供の新しい居場所を探すには時間も手間もかかりますから、仕事のある保護者は大変です。「できるだけ早く決めて欲しい」「ここでいいじゃないか」といった気持ちになるのは無理もないでしょう。

しかし探している居場所はあくまで「子供の」居場所です。どれだけ早く決めても、保護者がいいと思っても、子供の本当の居場所にならなくては意味がありません。むしろ子供が気を使って妥協しないよう「納得いくまで一緒に探そう」というような、子供の気持ちを最優先にする態度を示す必要があります。

いろいろな居場所をじっくり探す

子供が「ここなら安心できる」と思える居場所が簡単に見つかるのは稀でしょう。先に紹介した居場所の他にもたくさんの選択肢があり、一つひとつ雰囲気も違うのですから当然です。しかし子供の今の大切な時間を過ごすと思えば妥協はできません。一度決めても「やっぱり違う」ということもあるでしょう。

しかしそれでも、子供は自分の気持ちをしっかり受け止め、納得いく居場所を一緒に探して欲しいと願っているはずです。それほど大切な居場所を見つけるには時間も手間も必要だと心得るべきでしょう。

居場所探しは不登校解決の第一歩

子供の不登校は保護者にとっても不安ですが、子供は自分の人生がかかっていることがわかっていますから大人以上に不安です。子供は不安を解消するためにも新しい居場所は重要で、何よりも必要としています。

また子供は保護者を少なからず頼りにしているものです。保護者は子供と一緒に居場所を探すことで「共に困難に立ち向かっている」という態度を示すことができれば、信頼し合うことができます。新しい居場所の選択肢は実に多くさまざまで、見つけるのは簡単ではありません。しかし時間はかかっても妥協せず、納得できる居場所を子供と一緒にじっくり探すことが大切です。