「学校に行きたくない」という子供の声への応え方

夏休みや冬休みなどの長期連休明けは、「学校に行きたくない」という子供が急激に増える時期。頭ごなしに「そんなこと言っていないで、行きなさい」と言ってしまいがちですが、想像以上に子供が思いつめていたり、深刻な悩みを抱えていたりしたら……。親として、どのような言葉をかけてあげればよいのでしょうか。

子供が「学校に行きたくない」と言い出したら

「学校に行きたくない」

そんな言葉が子供の口から発せられたとき、親としてどう対応したらよいでしょうか。

もしかしたら「そんなこと言ってないで、ちゃんと学校に行きなさい」と注意すれば済むことなのかもしれません。あるいは「行けば楽しいこともあるからがんばって!」と励ますだけで、子供の気が晴れることもあるかもしれません。

例えばそれが高校生の子供であれば「せっかく受験を乗り越えて入った学校なのだから、行かないなんてもったいない」とか「将来のことを考えたら、高校や大学はちゃんと卒業しておいたほうがいい」などという親の立場から見た意見が頭に浮かぶこともあるでしょう。

しかし、子供の発したその一言は、もしかしたら勇気を出して何かを伝えようとしているシグナルなのかもしれません。

「学校に行きたくない」と聞いた親の反応も、きっとわかっている

「学校に行きたくない」と親に伝えたらどんな反応が返ってくるか。親が子供を見てきたように、子供も親を見てきたわけですから、ある程度は想像がつくことでしょう。

叱られてしまうかもしれない。
困らせてしまうかもしれない。
あるいは呆れさせてしまうかもしれない。

多くの子供にとって、親のそんな反応は決して望むところではないはずです。

それでも言わずにいられなかったその一言は、もしかしたら何かに耐え切れずに漏れ出た悲鳴なのかもしれません。もしくは親に相談していいものかを確認するために、ドアをノックするように親の反応を見ようとしているのかもしれません。

いずれにしても、「学校に行きたくない」という一言は、気軽に相談しづらい悩みやストレスを抱えているシグナルの可能性があるのです。そんなとき、まずは次の3つのステップを試してみてはいかがでしょうか。

1.『傾聴』
まずは一切の否定も決めつけもせず、子供の話に耳を傾けてみる

親という立場は、時に正しくあろうと思うあまり、「世の中で一般的に常識とされていること」を唯一の正解のように思い込んでしまうことがあります。そのため「学校に行かない=非常識」という思い込みから、その選択肢をすぐに否定してしまいたくなるかもしれません。あるいは「学校に行かない=怠惰・怠慢」と決めつけてしまい、その気持ちを非難したくなるかもしれません。

でも自分の気持ちを、事情の説明さえできずに否定されたり非難されたりすることは、大人でさえもつらいもの。まして相談しにくい悩みを抱えているときにそんな反応をされたら、ますます相談しにくくなってしまうだけです。

そのため、まずは「何かあったの?」と問いかけ、話を促してみましょう。その時のポイントは2つです。

相手のほうを向いて話を聞く

何か別のことをしながら話を聞くような態度では、「忙しそうだから今はやめておこう」と思わせてしまうかもしれません。子供のほうを向いて、話を聞ける状態であることを示しましょう。向き合うことで子供が緊張してしまうようであれば、視線だけを相手に向ける程度に抑えてみてもよいでしょう。

いずれにしても「話を続けても大丈夫なんだ」と子供に思ってもらえるような接し方を心掛けるとよいでしょう。

「なぜ?」「つまり?」という問い詰め方をしない

相談しようと思って話し始めたとしても、言いたいことがきれいにまとまっているとは限りません。まして相談しにくいような内容であれば、言葉の選び方も慎重になりやすいため、いつもより会話のテンポがゆっくりになりがちです。

そんなときに「なぜ?」や「つまり?」というような先を急がせるような問い詰め方をしてしまうと、子供の気持ちを焦らせてしまうだけです。子供の話すテンポに合わせて相槌を打ちながら、そっと話を促すような聞き方を心がけましょう。

2.『理解・共感』
孤独ではないことを伝え、味方であることを示す

気軽に相談しづらい、誰にも話しづらい悩みを抱えているとき、人は孤独を感じてしまうことがあります。

「世の中で一般的に常識とされていること」に照らし合わせれば、「学校に行きたくない」という思いは間違っているものだと子供自身が考えてしまっているからこそ、気軽に相談しづらい悩みになるわけです。「自分は非常識なことを考えてしまっている」「正しくないことを考えてしまっている」という思い込みが、自分を理解してくれる人がいないのではないかという疑念を生み、孤独感へとつながっていくことがあります。

そこでまずは子供の気持ちをちゃんと理解していること、同じシチュエーションだったら自分も辛いと感じるだろうという共感を伝えてあげることが大切です。

「大変だったね」「それは辛いよね」といった言葉をかけて、自分が子供の気持ちを否定する存在ではなく理解できる存在であること、味方であることを示しましょう。親に理解してもらえる、味方になってもらえるということは、子供にとっては心強いものです。そういう存在に対してなら、言い出せなかった気持ちをさらに打ち明けることもできるでしょう。

3.『解消と解決』
何をすればその悩みを取り除くことができるのかを考える

悩みには、心の内を話すことですっきりして元気を取り戻す「解消」が必要なものと、悩みの原因となるものを取り除く「解決」が必要なものがあります。前者であれば、傾聴や共感によって気持ちを吐き出させることで子供が前向きな気持ちに変わってくれることもありますが、後者であればより具体的な行動に移していく必要があります。

解決策を模索する上でのポイントは3つあります。

思い込みや偏見で選択肢を除外しない

本来であればもっと適切な解決策が存在したのに、思い込みや偏見でその選択肢をなくしてしまうことは避けたいものです。例えば「不登校」という言葉自体に強いネガティブイメージを持つがゆえに、無理してでも学校に行かせようとしたり、その子自身に問題があると思い込み、その子自身を無理にでも変えようとしたりすることは、必ずしもいい結果を生みません。

平成28年9月、文部科学省は「不登校児童生徒への支援の在り方について」という通知の中で、以下のように記述しています。

(1)不登校については、取り巻く環境によっては、どの児童生徒にも起こり得ることとして捉える必要がある。また、不登校という状況が継続し、結果として十分な支援が受けられない状況が継続することは、自己肯定感の低下を招くなど、本人の進路や社会的支援のために望ましいことではないことから、支援を行う重要性について十分に認識する必要がある。

 

(2)不登校については、その要因や背景が多様・複雑であることから、教育の観点のみで捉えて対応することが困難な場合があるが、一方で、児童生徒に対して教育が果たす役割が大きいことから、学校や教育関係者が一層充実した指導や家庭への働き掛け等を行うとともに、学校への支援体制や関係機関との連携協力等のネットワークによる支援等を図ることが必要である。

 

(3)不登校とは、多様な要因・背景により、結果として不登校状態になっているということであり、その行為を「問題行動」と判断してはならない。不登校児童生徒が悪いという根強い偏見を払拭し、学校・家庭・社会が不登校児童生徒に寄り添い共感的理解と受容の姿勢を持つことが、児童生徒の自己肯定感を高めるためにも重要 であり、周囲の大人との信頼関係を構築していく過程が社会性や人間性の伸長につながり、結果として児童生徒の社会的自立につながることが期待される。

「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」文部科学省 平成28年9月14日

不登校は「誰にでも起こり得ること」であり「問題行動ではない」というものです。そういう認識を正しく持てていれば、「学校に行きたくない」といった子供を無理に学校に行かせる、といった選択はしないのではないでしょうか。

正しい情報収集を心掛ける

解決策を見出すためには、正しい情報収集が欠かせません。そもそもどのような選択肢があり得るのかを把握し、それぞれの特徴やメリット・デメリットなどを理解した上で、子供ともよく話し合いながら解決策を検討していきましょう。

情報収集の方法として代表的なものをいくつかご紹介します。

■学校の先生に相談する
担任の先生や学年主任の先生など、子供が通う先生に相談する、状況を聞きに行く、というのが情報収集の方法のひとつです。過去同じように不登校の意思を示した子供がどんな方法をとったのか、といった事例を聞くことも参考になるのではないでしょうか。

■スクールカウンセラーに相談する
今は多くの小中学校に相談室やカウンセリングルームが設けられており、スクールカウンセラーに相談することも可能です。やはり多くの生徒と接してきているため、対応方法や解決策の情報も持っていますので、参考となる情報やアドバイスを提供してくれることでしょう。

■インターネットで情報を収集する
同じ悩みを抱える親の声や事例などを知りたいなら、インターネットの活用が最も手っ取り早いでしょう。ほかの子供がどんな解決策を選択したのかといった参考例も多数存在しています。ただし、インターネット上にはさまざまな情報があふれているため、正しい情報の取捨選択が難しいところ。まずは運営元が信頼できるサイトを見つけることから始めましょう。

■通信制高校やサポート校に相談する
全日制の高校と同じく高校卒業資格が得られる通信制高校や定時制高校、あるいはそのサポート校に問い合わせをして相談するのもひとつの手です。不登校の解決策として代表的な方法のひとつでもあることから、実際にその解決策を選んだ結果どうなったのか、といった具体的な話を聞けることもあるでしょう。特に環境を変えることが解決策となるような場合、有力な選択肢にもなりえるため、いくつかの学校の資料を見たり、相談してみたりすることは、情報収集の手段として有効と言えます。

>通信制高校・サポート校を探したい方はこちら
>学校説明会・相談会情報はこちら

「唯一」の解決策としない

子供と話し合う中で、「がんばってその学校に通ってみよう」という解決策に至ることもあるでしょう。転校や編入のように環境を大きく変える決断というのは、子供自身にとっても簡単に選べるものではないかもしれません。

その場合でも「がんばるしかない」「がんばって乗り越えないとダメだ」というように、ほかには解決策がないかのような言い方をしてしまうと、それ自体がプレッシャーになってしまうどころか、悩みが解決しなかったときに子供自身を追い込んでしまうことにもつながりかねません。

「もう少しがんばる」という選択肢を選んだとしても、「もしそれでも辛かったら、●●という方法もあるから大丈夫だよ」というように、ほかにも選択肢が存在していることをきちんと示してあげるようにしましょう。

子供であると同時に、ひとりの人間として接する

「学校に行きたくない」という悩みを抱える子供への対応方法を紹介してきましたが、実はこれらはすべて、そのまま大人にも当てはまるものです。悩みを抱えているとき、相談した相手にどんな反応をされたら心が安らぐか、本音を言えるか、あるいは辛い気持ちになるか。そこに大人と子供の垣根はありません。

しかし、親しい友人からの相談であれば適切に対応できることでも、自分の子供の悩みとなった瞬間、親としての責任感の強さがかえって視野を狭くしてしまい、子供を辛い気持ちにさせる対応をとってしまうこともあるのです。

「学校に行きたくない」という子供の声を聞いたら、親しい友人から「会社に行きたくない」と相談されたような気持ちで親身になって話を聞いてみる。大切な子供だからこそ、あえてひとりの大人として、ひとりの人間として接する意識で、まずは相談に乗ってみるという姿勢が大切なのかもしれません。