不登校でも高校を卒業するには?家庭でできるサポートまとめ

お子さまが高校で不登校になってしまったら、保護者のかたは留年や卒業のことなど不安で焦ってしまうかもしれません。 この記事では高校の卒業要件などの知識をお伝えし、お子さまのために今何ができるか、どうすれば高校を卒業できるのかを詳しく解説します。

不登校でも今の学校を卒業できるの?

全日制高校(学年制)の卒業要件とは?

学校教育法では、高校の卒業要件として「74単位以上」を取得することが定められています。 単位の取得方法には学年制と単位制の2つがありますが、一般的な全日制高校の場合、ほとんどが学年制です。

学年制の場合、卒業までに学校が定めた「74単位以上」を取得することはもちろん、各学年にも定められた単位数があり、それを取得することで進級できる仕組みです。つまりその学年で定められた単位数が、1教科でも不足すると留年となってしまいます。

各教科の単位を取るには「成績」と、授業への「出席」の両方が必要です。「成績」というのは欠点(赤点)を取らないレベルということです。 不登校のお子さまの場合、「成績」よりもまず「出席」が心配だと思います。

ではどのくらい授業を休むと、各教科の単位を落としてしまうのでしょうか?

目安として、出席の必要な授業数の「3分の1から4分の1」欠席すると、多くの高校では単位を落としてしまいます。しかしこうした進級の条件は、法律で明確に統一されておらず高校の判断に任されているため、実は高校ごとに違いがあります。

留年が心配な場合、お子さまの通う高校の先生にどの教科であと何回休むと留年になるのか、など確認してみるのもおすすめです。

補講や課題でも卒業はできるのか

不登校で出席日数が足りない場合、夏休みなどの補講等で救済措置を置いている高校もあります。そのような高校独自の救済措置があるかどうかも、高校の担任の先生などにうかがってみましょう。

しかしそのような補講などなく自動的に留年が決まる高校も多くあります。またお子さまが補講を受けられる状態にあるかどうかも、考える必要があります。

別室登校でも卒業できるのか

また不登校生への対応として保健室登校や別室登校を行なっている高校も多いですが、その場合の単位取得はどうなるのでしょうか?

単位取得は難しいケースも多いようですが、これも高校によって対応が違うため、お子さまの通っている高校にまずは確認してみましょう。ただし、本人がまだ別室登校できる状態にないのに、保護者が焦って別室登校を決めてしまうと、よけいに事態が悪化してしまうこともあります。タイミングの判断には注意が必要です。

このように高校の対応や、お子さまの取得単位状況など確認し、もし留年が決まってしまった場合にも、今は学習の機会や進路の可能性も多様に開かれている時代です。たとえば通信制高校へ転校したり、独自に学習を進めて高校卒業認定資格を取るなど、全日制高校を卒業する以外の方法もあります。

家庭でできる不登校へのメンタルサポート

子どもが不登校になったときに親はどうするか

不登校のお子さまに、家庭ではどのように接するのがよいのか、ここでは不登校生に詳しい学校の先生やスクールカウンセラー、心理士など専門家の間で一般的に言われているメンタルサポート法を紹介します。

学校を安心して休ませる

自分の子どもが学校へ行かなくなると、不安や焦り、苛立ちを感じて自分の育て方が悪かったのか?など自分を責めてしまう保護者は多くいます。そしてどうにかしてお子さまを学校へ行かせなくては、と思うかもしれません。それは当然の気持ちだといえます。

しかし不登校になったお子さまを無理やり学校へ行かせることは、多くの場合、不登校を長引かせるなど逆効果になるようです。

お子さま自身も「学校に行かなきゃ」と十分に思っており、それでも行けない自分に苦しんでいます。そのような状況で保護者が、「学校を休んではいけない」と無理やり復帰させようとすると、お子さまは居場所をなくし、ますます追い込まれてしまいます。

まずは「休んでいいんだよ」とあたたかい声をかけて、不安なお子さまを安心させてあげることが先です。

理由を問い詰めないでおく

「どうして学校へ行けないの?」「友達と何かあったの?」など、不登校になった理由をつい詰問口調で聞くこともやめましょう。心配のあまり、自覚なく責めるような口調になることもあるかもしれませんが、これではお子さまが完全に心を閉ざして、さらに追い込まれてしまいます。

やさしい口調であっても、不登校の理由をダイレクトに聞くのは避けて、本人が話してくれそうな状況まで回復するのを待つことが大切なようです。

「頑張って」より「辛かったね」

「頑張って」という言葉で、お子さまの学校復帰をなんとしても励ましたくなるのも、親としてはよくあることです。しかしこの言葉も、多くの場合不登校の子どもには逆効果になりかねません。

これは頑張っている人に「もっと頑張れ」と言って励ますつもりが逆にプレッシャーを与えてしまうのと同様です。

お子さまは、なんとかしなきゃと十分に思っており、負けずに学校に行きたいと思っています。それでも「学校に行かない」という選択をしました。お子さまのその苦しみを保護者がまず一番に「本当に辛かったね」と理解してあげましょう。

お子さまの遊びや趣味に興味をもつ

不登校の間、お子さまが勉強もせず、一日中スマホを触っていると心配になり、思わずスマホを取り上げてしまいたくなるかもしれません。でもスマホを取り上げて、お子さまの外の世界とのつながりを遮断しないようにしましょう。

ネットの情報を通じて、自分の興味や好きなものを発見するきっかけをつかんだり、進路の目標がみつかったりすることは多くあります。その可能性を閉じてしまうのをやめましょう。

またもし、お子さまが本当に興味をもってやっていることがあれば、それがゲームでも遊びでも、その行動を尊重してあげることも大切です。そしてそれに関する話をどんどん聞いてあげてください。それがきっかけで、お子さまは自分を好きになれる世界をみつけることができるかもしれません。

少なくとも、勉強に関することだけではなく子どもの好きな趣味や遊びに関しても興味をもって聞いてくれる親のほうが、子どもは心を開けるし、自信を取り戻していく力になるようです。

いつも通りに接して特別扱いしない

つい腫れ物を触るかのような接し方も、不登校のお子さまのプレッシャーになるといわれています。いつも通り「おはよう」と声をかけたり、ふつうの会話をしたりして、お子さまが家で安心して生活できる環境を作りましょう。

不登校になったときの学習方法

さてここでは不登校のお子さまの学習方法について紹介します。とくにオンライン授業が急速に広まっている昨今は、不登校のお子様が学校以外の手段で勉強する方法がたくさんあります。

具体的には3つの方法が考えられます。

  • オンライン教材やオンライン家庭教師
  • フリースクール
  • 通信制高校

それぞれの特徴を紹介します。

オンライン教材、オンライン家庭教師

オンライン教材は、お子さんのレベルに合わせて学力を伸ばせるのが強みです。

他人の目を気にせず勉強でき、一人ひとりの学力に合わせた内容を学べるのが特徴です。学年をさかのぼって学習できる教材もあり、つまずいたところからやり直せるのも強みです。オンライン教材を自宅で勉強しても出席扱いとして認定されることが期待できますので、高校の先生に相談してみるのもよいでしょう。

先生から個別に指導を受けたいというお子さまには、オンライン家庭教師もおすすめです。オンライン家庭教師は、パソコンやタブレットのビデオ通話機能を使って、勉強の指導を受けるサービスです。授業内容の相談や添削などもしてもらえます。

フリースクール

フリースクールはさまざまな理由から学校にいけない子どもたちを受け入れ、学びの場を提供する施設です。

NPO法人や企業によって運営されており、施設によって規模や教育方針が大きく違います。勉強メインのところもあれば遊びメインのところもあり、カリキュラムは施設により個性があります。事前に特徴をよく調べてお子さまの目的や相性のよいスクールを探すようにしてください。

「高卒認定試験(旧・大検)」に対応した予備校になっているフリースクールもあり、大学を受験するための「高卒認定資格」を取りたい人にも向いています。

通信制高校

通学するのが大変だけど高校卒業資格がほしいお子さまには、通信制高校に入って勉強することもおすすめの選択です。

通信制高校はオンライン授業やレポート中心の授業で、通学のペースも自分で選べる高校がほとんどです。

3年以上の在籍で必要な単位を揃えれば卒業できるので、今の高校で留年が決まってしまった場合も、通信制高校に編入することで自分のペースで単位を取得して、3年で高校を卒業できる可能性もあります。

実はこの通信制高校、高校の先生の間でも、まだあまり知られていない存在です。しかし時代のニーズに応えた学習スタイルを持っているため、不登校生に限らず、時間を自由に使いたいさまざまな人に選ばれ、学校数も生徒数も年々増加傾向にあります。

通信制高校がおすすめな理由

ここでは通信制高校の特徴や魅力を紹介します。

通信制高校の現在

通信制高校の数は増加している

現在全国の通信制高校に通う生徒数は、公立が約5万7000人、私立が12万9000人、トータルで約18万7000人です。(文部科学省の令和元年5月調べ)

学校数は、全日制高校の数は全体の84.1%、定時制高校は全体の11.4%、通信制高校は4.5%となっており、まだまだ少ないのが現状です。

■高校数の割合

高校数の割合 学校数 割合
全日制高校 4,791校 84.1%
定時制高校 639校 11.4%
通信制高校 253校 4.5%

文部科学省「学校基本調査」より作成

しかし近年、全日制・定時制高校の数は全体として減少傾向なのに比べ、通信制課程を置く高校数は全体として増加傾向にあります。さらに公私別で見れば、私立の通信制高校の校数の方がより大きく増加しています。

登校日数の自由や専門コースなどのメリット

通信制高校にはさまざまな魅力がありますが、ここではメリットを3つに絞って紹介します。

通信制高校3つのメリット
1.単位制なので自分のペースで学習を進められる
2.登校日数が自由
3.将来につながる専門コースが選べる

メリット1:単位制なので自分のペースで学習ができる

通信制高校は、一般の高校の「学年制」とは違い、「単位制」を採用しているため、1年間でどれだけの単位を学習するのかは、生徒に任されています。

そして次の卒業要件を満たせば、卒業することができるため、足りなくなった単位数を次の年度で挽回することができます。

■通信制高校の卒業要件
・74単位以上の修得
・36ヵ月以上の在籍
・30単位時間の特別活動

つまり3年以上在籍し、その間で74単位以上を習得し、30単位の特別活動などの行事に参加すれば卒業を目指せます。

もちろん自分のペースで勉強できるということは、けっして楽に卒業できるという意味ではなく、全日制高校よりも、自主性や自己管理能力が大切になり、自立心を養えます。

メリット2:登校日数が自由

通信制高校では、毎日通学するコースもあれば、週に2〜3回や、週1だけ通学して家で勉強するなど、通学するペースを自由に選べます

学校に毎日通うのがニガテなお子さまにとって、無理のないペースで学校に登校できる学習スタイルは、勉強のしやすい環境と言えるのではないでしょうか。

また自分の自由になる時間を持てるため、アルバイトをして社会経験を積む学生も多くいますし、資格取得や大学受験勉強をしたり、芸能活動やスポーツ選手など仕事と勉強の両立のために通っていたりする人もいます。

メリット3:将来につながる専門コースが選べる

学校によってはITスキルやTOEICなどビジネスの現場で生きる資格取得の応援体制のある学校や、オプションコースで、美容やコンピューター、トリマー、イラストやマンガ、料理など、専門的な知識や技術を身につけられるカリキュラムもあるなど、通信制高校では一般の全日制高校に通っていたのでは得られない、将来の仕事につながる経験を積むことができます

このような全日制の高校にはない自由な学びの場である通信制高校では、自分のやりたいことをみつけて元気を取り戻し、イキイキと学ぶ生徒さんもたくさんいます。

通信制高校を卒業した後の進路

次に通信制高校を卒業した場合の進路について紹介します。

難関大学進学も夢じゃない

多くの通信制高校やサポート校では、大学進学を目指す人に向けて、「進学コース」を用意しています。なかには塾のように進路相談や個別指導をしてくれて、全日制高校よりも手厚い受験指導をしてくれる学校もあります。

大学進学という目標をもったお子さまは、そのような体制の充実した通信制高校を選ぶことで、難関大合格などの目標を目指し、自分のペースで思い切り勉強することもできます。

就職率や就職には有利なの?

就職率でいうと、中学卒業と高校卒業では高校卒業の方が就職のチャンスは広がるといえます。

通信制高校を卒業すれば全日制高校と全く同じ「高卒」となりますが、さらにビジネスに役立つ各種資格サポートや、在学中に美容師・調理師などの国家資格を取得できるオプションコースのある学校もありますから、高校にいながら就職時にアピールできる準備や経験を積むことができます。

またアルバイト経験で得た気づきや、自己管理をして単位を取得した経験を就職の面接や志望動機等で話すことができれば、採用側からみて主体的な印象を与え、リードできるでしょう。

まとめ

いかがだったでしょうか。今、お子さまの不登校による留年や、卒業を心配して焦っておられるかもしれません。しかし現在では一般的な全日制の高校でがんばることだけが選択肢ではなくなっています。

なかでも自分のペースで学習できる通信制高校は人気が出てきています。環境を変え、お子さまが楽しく学ぶ意欲を取り戻すために通信制高校をお子さまのひとつの選択肢としてご検討されてはいかがでしょうか。