不登校の解決には別室登校も方法の1つ!メリットとデメリットを紹介

不登校から脱出する解決方法の1つに別室登校があります。別室登校とは、教室で授業を受けられない子供が、自分のクラスの教室とは別の場所で学校生活を送る方法です。 具体的には、保健室やカウンセリングルームなどで過ごします。本記事では別室登校の概要や別室登校の次のステップへの進み方、子供が別室登校するメリットとデメリットについて解説します。

別室登校とは?

校舎

不登校の子供が行う別室登校とは、自分のクラスの教室に行かず別の部屋で過ごすことをいいます。また一部の授業をクラスの教室で受け、大半は別の部屋にいる場合も別室登校に含まれ、図書館や進路指導室、カウンセリングルームなどが利用される場合が多いです。

不登校の子供が学校に戻る際、いきなりクラスの教室に入るのはハードルが高いことです。そのハードルを下げるためにも、教室以外の別室に居場所を作り、その先に教室復帰を目指します。

別室登校での過ごし方

別室登校では勉強や読書、先生と会話などをして過ごします。基本的には子供に合った過ごし方を提供する場所であり、別室登校をしたらこれをやらないといけないという縛りはありません。

自分で自習をする子もいれば、会話だけをして帰る子もいるでしょう。先生の都合が合えば、クラスで行われている授業の内容を教えてもらうことも可能です。

しかしいつも先生がいてくれるとは限らないため、基本的には勉強は自分で進める必要があります。

基本的には養護教諭や支援員が対応

別室登校で子供の対応をするのは、基本的に養護教諭や支援員です。担任の先生やその他の先生は、子供の状況によって臨機応変に接していきます。

信頼関係を構築するために、顔を合わせた会話を意識する担任の先生もいるそうです。先生との頻繁なコミュニケーションによって「この先生とならクラスの教室に行ける」「先生に悩みを話してみようかな」と子供が思うきっかけにもつながるでしょう。

ただしすべての学校で別室登校に必ず先生が付き添ってくれるとは限りません。別室登校では主に先生が常駐するのではなく、手の空いている先生が交代しながら対応します。

はじめのうちは手厚くサポートを受けて過ごせても、それがいつまでも続くわけではない可能性もあり、別室登校を希望する際は事前に確認が必要です。

別室登校の次のステップとは?

学生

別室登校から次のステップに向かうには、段階を経ていくのが大切です。始めから教室で1日過ごすのではなく、得意な教科の授業だけ参加したり、給食を教室で食べてみたりするのがよいでしょう。

子供の状況に合わせて、ステップを踏んで焦らずに教室復帰を目指します。別室登校から教室復帰までの具体的なステップは、以下の通りです。

①保健室登校で過ごす

まずは保健室で自分の居場所を確保します。はじめは決められた数時間を過ごすことから始まり、徐々に保健室で1日を過ごせるようになるでしょう。

②相談室に通い、支援員と過ごす

保健室登校とは違い、相談室への別室登校をします。この際、支援員は子供とコミュニケーションをとりながら、関係性を築いていきます。また、個別の部屋での対応となるため、勉強できる環境で学習への意欲をあげることも可能です。

③決めた時間のみ教室に戻る、友達に相談室に来てもらう

別室登校で自信がついたら、クラスの教室に戻る時間を設けます。得意な教科の時間や給食の時間であれば、戻りやすいことがあります。

ただしクラスメイトのなかには「なんでこの時間だけ来るんだ」と言ってくる場合もあるかもしれません。心ない言葉をかけられる可能性を考えて、無理せず取り組む必要があるでしょう。

また仲の良いクラスメイトに、相談室に遊びに来てもらうのも手です。一緒に過ごしているうちに、クラスに戻りたいという意欲がわいてくるかもしれません。

④教室復帰

授業に少しずつ参加できるようになったら「1日2時間目まで」といったように、教室に戻る目標の時間を立てるのもよいでしょう。目標を決める際は子供だけでなく、親や養護教諭、担任によって協議します。

子供にとって無理のない範囲で教室で過ごす時間を徐々に増やし、全ての時間を教室で過ごせれば、教室復帰となるのです。

しかし、これらのステップは、あくまでも一例です。子供に必要なステップの数や内容は人それぞれで、柔軟な対応が求められます。焦って教室に戻そうとしたり、無理矢理クラスメイトと顔を合わせようとしたりするのは逆効果になりかねません。教室復帰に向け、慎重にステップを歩むことが復帰への近道といえるでしょう。

別室登校をする5つのメリット

校門

別室登校をするメリットには「子供の孤立を防げる」「生活リズムの乱れを防げる」「出席扱いとなる」「親と学校がつながりを持てる」「教室復帰のきっかけを得やすい」といった点が挙げられます。

いずれもその子に合った過ごし方ができる別室登校ならではのメリットといえるでしょう。ここでは別室登校をする5つのメリットについて詳しくみていきます。

1.子供の孤立を防げる

別室登校は先生やクラスメイトなどとのつながりを持てるため、孤立を防げるというメリットがあります。保健室登校の場合、保健室にはケガをした子供やほかの先生もやってくるため、さまざまな人と顔を合わせ、コミュニケーションをとることも可能です。

人とのつながりに慣れ、お互いを理解しあって交流できれば、別室登校から教室復帰した際の孤立を防げます。別室登校が人との信頼関係を作るきっかけにもなるでしょう。

2.生活リズムの乱れを防げる

別室登校は学校生活に慣れ、生活リズムを整えられる点もメリットといえます。「不登校中に家庭で昼夜逆転していた」「なかなか早起きができない」など、生活リズムが乱れてしまう子供もいます。

別室登校はその生活リズムの乱れをリセットし、学校生活に沿ったリズムに合わせるきっかけとなるものです。別室登校であっても学校内のリズムに合わせて行動できるようになり、「チャイムが鳴ったら授業が終わる」「学校に遅刻しないために、この時間に家を出る」といった意識付けにもつながるでしょう。

生活リズムが整ってくれば学校に行くという目的に合わせて朝食を食べたり、身だしなみを整えたりといった行動につながるため、生活で必要なリズムを自然と取り戻せるようになります。

3.出席扱いとなる

別室登校は多くの小・中学校で出席扱いとなります。学校の欠席については「クラスの教室にいなくても、学校に来ていれば欠席者ではない」という考えに基づくものです。

出席の状況は内申点にも関わるため、進路選択にも大きな影響を与えかねません。高校受験の際には、高校によって内申点を重視する場合もあり、別室登校による出席扱いは不登校の子供にとって大きな意味を持ちます。

また学校に行かなくても、一定の条件で出席扱いになる場合があり、定期テストはクラスの教室ではなく、ほかの教室で受けられることもあるようです。

4.親と学校がつながりを持てる

別室登校で学校に行けるようになれば、親と学校もつながれるというメリットがあります。不登校の間は学校との接点が無くなり、連携が難しいと感じる場合があるでしょう。

しかし短時間でも子供が学校に行けるようになると、学校との接点を持てるようになり、学校での子供の様子を先生から聞いたり、今後のことを相談したりできます。

また家庭内に問題を留めておかず、学校の先生とも共有できれば、より子供にとって適切な環境を作るヒントが得られるかもしれません。先生や学校とのつながりは、親にとって大きな安心材料の1つといえるでしょう。

5.教室復帰のきっかけを得やすい

不登校から別室登校に移行すれば、教室復帰のきっかけを得やすくなるのがメリットです。学校内は先生やクラスメイトなどとコミュニケーションをとる機会が多くあります。

普段のコミュニケーションの中から「そろそろ教室に行こうかな」と子供が教室復帰に対して意欲的になることも多々あります。しかし子供がまだ教室復帰を望んでいない段階で、無理に教室へ行くのを勧める必要はありません。

子供自身が教室復帰を考えているならば、別室登校でクラスメイトと交流を続けながら、子供自身がきっかけを得るのを気長に待ってあげましょう。

別室登校をする5つのデメリット

傷つく

別室登校をするデメリットとして「罪悪感におそわれる場合もある」「学習面での遅れは不可避」「別室登校に満足してしまう」「特別扱いに対してずるいと言われる」「友人などからの目が気になる」などが挙げられます。

別室登校にはメリットがある一方、子供にとってデメリットとなることもあるのです。ここからは、別室登校の5つのデメリットについて、その内容を詳しく解説します。

1.罪悪感におそわれる場合もある

ほかのクラスメイトとは異なる別室登校という状況に、子供が罪悪感を持ってしまう可能性もあるでしょう。学校に行くと自分のクラスメイトが教室で授業を受けているのを目の当たりにします。

それに対して「自分は別室にいるだけで、周りからさぼっていると思われるのではないか」と後ろめたい気持ちが生まれる場合もあり、その結果として落ち込んだり、ストレスを感じたりする可能性もあります。その際は子供の気持ちを聞いた上で、今後どうしていくかを先生も含めて相談してみてください。

2.学習面での遅れは不可避

学校の授業に出られないことで生じる学習面の遅れは、別室登校のデメリットとして挙げられます。自分の力だけで学校の授業内容に追いつくのは、容易ではありません。

家庭内で勉強のサポートを受けながらある程度の学習は進められますが、全ての内容をカバーするのは難しいでしょう。また別室登校では一人で自習する時間が長く、学力の向上に結びつくかどうかは人それぞれです。

「自分の将来のために学校の授業に追いつこう」と強い意志のもとで勉強できる子供もいます。一方で別室登校で自習を頑張っても周りに追いつけず、余計にモチベーションを下げてしまう可能性がある点も認識しておきましょう。

3.別室登校に満足をしてしまう

不登校から別室登校に移行した際、学校に行っているという事実に満足してしまう場合もあります。これは特に小学生に多く「学校には行けているからこれで大丈夫」と自分に満足してしまうのです。

不登校からの第一歩を踏み出せたと評価できる一方、別室登校がゴールになってはいけません。別室登校によって子供が現状に満足してしまうと、教室復帰という次のステップに進めなくなるケースもあります。これは教室復帰を目指す過程で注意したい点ともいえます。

4.特別扱いに対して「ずるい」と言われるケースも

別室登校を特別扱いだとして、周りの人から「ずるい」と言われる可能性も考えられます。特に子供同士の言葉は辛辣で「なんであの子は午前中で帰っていいの?」「授業出ないで帰るの羨ましい」などといった心無い言葉に傷つき、つらい思いをするケースもあるでしょう。

まだ不安定な状況の子供にとって、これらの言葉が不登校へ逆戻りするきっかけになってしまう場合があります。別室登校はほかの子供とは異なる扱いを受けているという事実は、親として理解しておく必要があるでしょう。

5.友人などからの目が気になる

別室登校では、学校の先生やクラスメイトとのコミュニケーションがとれる一方で、人の目が気になるというデメリットもあります。先ほど紹介した「周りからずるい、変と思われていないか」といった周囲の目がストレスになることがあるのです。

別室登校を始めたら、子供が周りの目を気になるかどうかを確認してあげてください。もしストレスに感じているのであれば学校と相談して、必要な配慮を受けられるような工夫が必要です。

教室復帰だけが不登校の解決策ではない

夕日

不登校から学校復帰するだけが不登校の解決ではありません。不登校から別室登校に移行し、その後は教室復帰するといったルートは、全ての子供に適応するとは限らないのです。

不登校から学校に復帰せずとも自ら勉強して進学するのも可能ですし、やりたい仕事を見つけて手に職をつけるための道に進むのも解決策の1つといえます。子供の状況や将来を考え、さまざまな選択肢を用意することも親の役割です。

不登校からの次の一歩は教室復帰だけと限定せず、別室登校を含めた広い視野で検討していきましょう。