不登校とは|文科省は年間30日以上の欠席を不登校と定義。ひきこもりとの違いも解説

文部科学省では、不登校の定義を「年間30日以上の欠席」としています。この記事では、不登校の原因やひきこもりとの違いについて解説します。さらには、不登校の原因や具体的な対処法に関しても紹介していきます。不登校に関する悩みを抱えている人は、ぜひ参考にしてください。

文部科学省による不登校の定義は「年間30日以上の欠席」

文部科学省による不登校の定義は、病気や経済的な理由などといった特別な事情がなく、「年間の欠席日数が30日以上となった状態」のことを指します。文部科学省の公表している「不登校の現状に関する認識」では、以下のように明記されています。

「不登校児童生徒」とは「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの」と定義しています。

引用:文部科学省「不登校の現状に関する認識」

以前は、「50日以上」の欠席を不登校とみなしていましたが、平成10年度以降は、文部科学省の公的な見解として、「30日以上」へと変更されました。なお、平成9年度までは、文部科学省の学校基本調査において、「不登校」という文言ではなく、「学校ぎらい」という名称が使われていたのも特徴です。平成10年度を境に、「不登校」の定義として「年間30日」という基準が示され、それ以降は変更がなく、現在に至ります。

不登校児童生徒の現状

令和2年度に行われた文部科学省の調査報告によると、不登校とされた児童生徒は、小学校で63,350人、中学校で132,777人、合わせて196,127人が不登校であるとの結果でした。児童生徒1,000人当たりの不登校人数は20.5人で、不登校の児童生徒数は、8年連続で増加傾向にあります。

不登校の定義 出典:文部科学省「令和2年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」

この調査から、不登校の児童生徒は、とりわけ平成28年、29年頃を境に、大きく増加し続けていることがわかります。今や不登校の子どもは、珍しいものではありません。どの子どもが不登校になってもおかしくなく、誰にとっても身近な問題になっていると言えます。

不登校とひきこもりの違い

不登校と似ているものとしては、「ひきこもり」があります。ひきこもりの定義は、厚生労働省によって「さまざまな要因の結果として社会的参加(就学、就労、家庭外での交遊など)を回避し、原則的には6ヵ月以上にわたって、おおむね家庭にとどまり続けている状態を指す現象概念(他者と交わらない形での外出をしていても良い)」とされています。
出典:厚生労働省「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」

そもそも不登校とは、「学校」に関わる言葉ですから、学校に在籍していない人には適用されません。一方で、ひきこもりは、学齢以上の年齢の人が含まれます。期間についても、不登校は30日以上の学校の欠席であるのに対し、ひきこもりの条件は6カ月以上といった違いがあります。

また、ひきこもりの場合は、社会参加を拒絶しているのも大きな特徴であるといえるでしょう。不登校には、社会参加についての条件はなく、学校へ行っていなくても、何らかの形で他者との関わりを持っていることもあります。

不登校になる原因と対処法

不登校になってしまう原因は、さまざまです。理由については、個々によって違いますが、大きく分けると以下のような原因が挙げられます。

  • ・人間関係に関するもの
  • ・学校生活に関するもの
  • ・本人自身の問題に関するもの
  • ・家庭環境に関するもの

これらのうち、どれかひとつが原因であるとは限らず、複数の原因が絡み合っている場合もあります。それぞれの原因について、対処法を確認しましょう。

人間関係に関するもの

人間関係に関するさまざまな問題が、不登校のきっかけや原因になることがあります。例えば、人間関係に関するものとは、以下のようなことが挙げられます。

  • ・友人との関係性
  • ・部活などの先輩・後輩との関係性
  • ・教職員との関係性
  • ・SNSに関連するトラブル

学校内での人間関係において何らかの問題が起こると、学校へ行きづらくなってしまうかもしれません。また、学校内での問題がないように見えても、SNSでのトラブルを抱えてしまうこともあります。さらには、一見親しい相手からどう見られているかについても不安を覚え、学校へ行けなくなるといったケースもあるでしょう。

親や教師が不登校の状態に対して怒りを表すと、子どもは親や教師にも不信感を持ち、心を閉ざしてしまいます。どんな問題が起こったかを把握するためには、本人が話しやすい環境を作ることを優先しましょう。いじめなどの大きなトラブルでなければ、ゆっくりと対話しながら、学校へ向かう気力が戻ってくるのを待つのが理想的です。

学校生活に関するもの

人間関係の問題とは別に、学校生活に関するものが不登校のきっかけや原因となる可能性もあります。学校生活に関する原因とは、具体的に以下のようなものが挙げられます。

  • ・いじめ
  • ・クラスに苦手な人がいる
  • ・授業についていけない
  • ・学校行事が苦手

いじめがある、あるいは苦手な人がいる場合、いわゆる加害者側が加害行動を自覚していないケースもあるため、親を交えた教師からの指導が必要となるケースもあるでしょう。

一方、授業についていけなければ、クラスメイトになじめないといった可能性も出てきます。親と教師が連携し、学習進度のサポートに当たる工夫も必要です。成績が上がると自信を持つことができ、学校行事に対して前向きになることもありますが、成績とは関連なく、行事が苦手な子どもについては見学を兼ねた記録係など、小さな役割を与えることがベターでしょう。いずれのケースにおいても、親や教師が子どもの気持ちをゆっくり聞いてあげることが不可欠です。

本人自身の問題に関するもの

不登校のきっかけや原因には、本人自身の問題に起因するものもあります。例えば、以下のようなケースが挙げられます。

  • ・何に対してもやる気になれない・無気力
  • ・学校に行く意味を見出せない
  • ・学校への不安感がある
  • ・長く休んだことによる行きづらさ
  • ・非行や遊びに比重を置いている
  • ・自分らしい生き方の選択

学校は、問題なく登校することだけが正解ではありません。親も教師も、子どもが学校に対してどのようなことを考えているのかについてよくヒアリングし、今の学校に通うことがベストな選択であるかどうか、子どもと一緒に考える機会を持つことがおすすめです。

自分への自信のなさ、家族と分かり合えないさみしさなどを不登校で穴埋めしようとする子どももいます。非行や遊びは、その代表例です。この場合、親が中心となり、子どもとの信頼関係を築き直していく工夫が必要となるでしょう。

家庭環境に関するもの

家庭環境に関するもろもろの事情から、不登校になってしまうこともあります。家庭環境の事情とは、具体的には以下のようなものが挙げられます。

  • ・家庭内不和・親子関係の悪化
  • ・親に学校に行かせてもらえない
  • ・家族の面倒を見なければならない(ヤングケアラー)

家庭内に不和があったり、親子関係に問題を抱えていたりすると、子どもの心が不安定となり、学業どころではなく、学校へ行けなくなってしまう可能性があるでしょう。家庭内のことといっても、第三者の意見を参考にした方が良いことも多いため、親や教師とともに、児童相談所などの公的な機関に相談することがおすすめです。

ヤングケアラーに関しては、近年徐々に公的な支援体制が求められるようになりました。国としても、早期把握、相談支援、家事育児支援、介護サービス提供といった支援方針を固め、今後積極的な支援に乗り出す方向性を示しています。

不登校になった時の学校・学業面の対応

子どもが不登校になった場合、学校や学業面においては、さまざまな対応が行われています。ここでは、不登校を年代別によって「小・中学校」「高等学校」の2種類に分けました。

小・中学校(義務教育)の場合

小・中学校は、義務区教育期間です。したがって、子どもが不登校になった場合、さまざまな配慮が行われています。文部科学省では、不登校の問題を「進路の問題」と捉え、教育支援センター、適応指導教室、民間施設、ITを活用した自宅学習などで要件を満たせば、「出席扱い」としています。中学校卒業程度認定試験を受験すれば、高校受験も可能です。さらには、高校受験に当たり、通常の調査書以外に活用できる選抜資料も用意されます。また、必要性がある場合は、不登校の児童生徒に合わせて、専用の教育課程を編成してくれることもあります。したがって、基本的には、小・中学校のいずれかで不登校になった場合は、学習サポートを受けることができ、義務教育を卒業できないといったことはありません。高校受験についても可能となるよう、最大限の配慮とサポートがなされています。
出典:文部科学省「不登校への対応について」

高校生の場合

高等学校は、義務教育ではありません。したがって、高校生の場合は、不登校の状態が続くと、進級や卒業ができないといった可能性が高くなってしまうでしょう。高等学校の進級や卒業については、以下の通り、学校教育法で定められています。

○学校教育法第46条

高等学校の修業年限は、全日制の課程については、3年とし、定時制の課程及び通信制の課程については、3年以上とする。

○学校教育法施行規則第63条の2

校長は、生徒の高等学校の全課程の修了を認めるに当たっては、高等学校学習指導要領の定めるところにより、74単位以上を修得した者について、これを行わなければならない。

引用:文部科学省 高等学校の卒業に関する法令

法令にある通り、定時制高校もしくは通信制高校であれば、卒業までに3年以上の時間をかけることも可能です。卒業に必要な単位数が決まっているため、これを満たさなければ、留年や中退となります。テスト、補習、レポートを通し、単位取得について前向きにサポートしてくれる高等学校もありますが、それでも単位取得が難しいケースであれば進級できません。その場合、早めに不登校支援関連のサービスを利用し、情報収集や対処を行うことがおすすめです。

【関連記事】:不登校の対応について|小学校・中学校・高校別で紹介

不登校でも高等学校を卒業したいなら

高等学校で不登校となり、留年あるいは退学となってしまった場合においても、通信制高校なら高等学校卒業が可能となります。通信制高校は、卒業までに3年以上の時間をかけることができます。全日制高校で不登校になったとしても、学年の途中から転入可能で、全日制高校で取得した単位を引き継げるといった点もメリットです。しかも、自宅学習を中心に進めることができるため、不登校でも学習を継続できる生徒が多いのです。希望があれば、週に2~3日登校するコースもあります。

通信制高校を卒業すれば、高等学校卒業資格が取れますが、この他のさまざまな資格取得も支援しており、高等学校卒業後の進路を考える機会も得られます。

小中学校で不登校になった場合においても、全日制高校での生活に自信がなければ、通信制高校への進学を検討すると良いでしょう。通信制高校の制度を利用すれば、ゆっくりと自身のペースで高等学校卒業資格を目指すことができます。

【関連記事】:不登校でも高校を卒業するには?家庭でできるサポートまとめ

まとめ

不登校の定義は、年間30日以上の病気や経済的理由によらない欠席であるとされています。家族はもちろん、欠席している本人にとっては、大きな気持ちの負担になっていることが多く、いずれのケースにおいても、家族や教師が温かく話を聞き、理解しようとする姿勢を見せることが重要となるでしょう。

不登校の場合、小・中学校は卒業が可能です。高等学校は、子どもの状況により、サポートの厚い通信制高校を選択する方法もあります。今や不登校は、どの子どもが直面してもおかしくない一般的な問題です。「こうしなければならない」といった従来の固定概念を捨て、適切な対応の下、本人自らの進む道を決めるに当たってゆっくりと待つことが、早期解決につながるといったことも覚えておくと良いでしょう。