高校生が不登校になる原因は学年で異なる!不登校の割合や親の対応法

高校生の不登校は、思春期特有の感情や人間関係などが絡んでいて複雑です。また、学年によって不登校になる原因が異なるため、それぞれに応じた親の対応が求められます。そこで今回は、高校生が不登校になる原因や親の適切な対応法を紹介します。

不登校になった高校生の割合は?

2021年(令和3年)度に実施された文部科学省の調査によると、不登校の高校生割合は全生徒のうち1.69%でした。

ただし、不登校生徒数には年間欠席が29日以下の生徒や発達障がいの特性で学校が苦手な生徒、高校をすでに中退した人は不登校に含まれていません。実際にはもっと多くの潜在的な不登校生徒がいると考えられます。

参考:令和3年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について p.96

高校生が不登校になる原因は学年によって異なる

高校生は思春期の多感な時期です。さまざまな事情により、「学校へ行きたくない」という気持ちになることもあるでしょう。また、学年によって不登校になる原因が異なっているため、改善するには子供の気持ちをきちんと理解してあげることが大切です。

時間はかかるかもしれませんが、適切に対応できれば、不登校にまつわる問題や悩みが解消できるでしょう。悩みが深い場合は、他校への転校も有力な選択肢です。子供の様子をみて、冷静に話せる状況であれば話し合いをしながら、適切な対処を行いましょう。

【学年別】高校生が不登校になる原因

小学校や中学校と異なり、高校は義務教育ではないため自分の意思で学校を辞められます。学校に行きたくないといった気持ちが生まれる原因は人によって異なりますが、子供がいきなり学校に行かなくなると心配になる親も多いはずです。

不登校の高校生に対して、それぞれの状況に合わせて適切な対応を取れるようにするためにも、学校に行きたくない理由を理解しておきましょう。ここでは、学年別に高校生が不登校になる原因をまとめました。該当する項目がないか確認してみましょう。

高校1年生で不登校になる原因

厳しい受験を乗り越えて高校に入学しても、不登校になってしまう高校生がいます。「令和3年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」の調査で学年別に見ると、高校1年生の全日制不登校者数は全学年38,432人中11,952人と、全学年で最も多い数字です。

高校1年生で不登校になる原因には、次のようなことが考えられます。

  • ・受験後に燃え尽き症候群になった
  • ・刺激的な生活を好むようになった
  • ・希望の高校に入学できなかった
  • ・進学校の課題量についていけない

それぞれの原因を詳しく見ていきましょう。

参考:令和3年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について p.102

受験後に燃え尽き症候群になった

自分が希望する高校に入学するために、中学3年生のときに必死に勉強をがんばる子供は多いでしょう。見事念願の高校に合格できて、いざ高校生活がスタートしたものの、今まで気を張っていた糸がプツンと切れて「燃え尽き症候群」になる子供も少なくありません。

燃え尽き症候群とは、急に熱意や意欲を失ってしまう状態のことです。別名バーンアウトシンドロームと呼ばれる疾病で、学校に行く意欲がなくなったり友達と何も話したくなくなったり、朝起きられなくなったりする、などの症状が表れます。燃え尽き症候群はうつ病の一種と考えられています。ただ、一般的に燃え尽き症候群とうつ病は、発症する要因に違いがあります。

うつ病は根拠のない悲観的思考により不安な気持ちが生まれ、思い悩むことが多いのに対し、燃え尽き症候群は大きな目標を達成したことで次に打ち込めるものがなくなった場合に起こります。ただし、燃え尽き症候群を経てうつ病になる事例もあるため、日頃から子供の状態を観察し見極めなければいけません。

刺激的な生活を好むようになった

高校に入学して交友関係の幅が広がると、友達と遊ぶことが楽しくなります。小学校や中学校に比べると行動範囲が一気に広がり、学校帰りに友達と買い物に行ったりアルバイトをしたりなど、刺激的な生活を好むようになる高校生も少なくありません。

生活の変化で勉強不足になるだけでなく、学校に行かなくなったり、夜遅くまで遊び回ったりする場合もあります。このような生活を続けていると、誰にも縛られず自由でいたい気持ちが強くなり、不登校になる子供がいるようです。

また、「友達から仲間外れにされたくない」といった気持ちから、友達の誘いをうまく断れずに悩んでいる子供もいます。このような場合は自分でもこのままではいけない自覚があるため、親の対応次第ではまた学校に通うようになることもあるでしょう。

希望の高校に入学できなかった

高校受験を必死でがんばっても、希望の高校に行けなかった場合があります。努力をしたのにそれが報われなかったという事実は、思春期の子供には衝撃的な出来事で、心に深いダメージを与えてしまうものです。

ただ、実際に学校に通ってみると気の合う友達ができて楽しめることも多いため、ここでうまく気持ちを切り替えられる子供もいます。気持ちを切り替えられなかった子供は、ほかの高校に入学できても希望の高校に入学できなかった後悔だけが残り、最終的に不登校になってしまう事例があります。

進学校の課題量についていけない

進学校に入学して不登校になってしまう高校生は、意外と多くいます。原因は進学校ならではの勉強によるストレスです。例えば、毎日大量の課題が出されるなどが挙げられます。

ほかの学校と異なり、進学校では毎日課題を終わらせるだけで何時間もかかり、勉強の難易度も高いなどの理由で授業についていけなくなることがあります。

熱心な家庭であれば、学校の課題に加えて学習塾に通う高校生もいるでしょう。日々勉強に打ち込んでいると睡眠時間を削られ、子供はストレスを感じます。また、模擬試験は土日に行われることが多く、休日返上で勉強に励んでいてストレスが発散できない状況もあるでしょう。このような状況下で勉強から逃げ出したくなり、不登校になってしまいます。

高校2年生で不登校になる原因

高校2年生になると学校や勉強に慣れて仲の良い友達もでき始め、高校生活を満喫する高校生が多くなります。

高校2年生は1年生の次に不登校が多く、全日制高校の全学年38,432人中、11,395人が該当します。高校2年生で不登校になる原因は、次のようなことがあります。

  • ・友達同士のトラブルが絶えない
  • ・自分の将来に漠然とした不安がある
  • ・大人や社会に嫌気がさしている

それぞれの原因を詳しく見ていきましょう。

友達同士のトラブルが絶えない

高校2年生になると仲の良い友達が増えて、よく一緒に行動する子が決まってきます。良好な人間関係を築けていれば問題はありませんが、友達同士の問題に悩んでいる子供もいるでしょう。また思春期の多感な時期なので、友達同士に加え異性をめぐる問題も出てきます。

親からすると友達同士の問題は小さなことに感じるかもしれませんが、子供からすると不登校になるほど深く傷ついている場合があります。友達同士の些細な喧嘩からいじめに発展し、それがきっかけで不登校になる事例もあります。

近年はSNSが普及したことで、ネットを利用した陰湿な嫌がらせやいじめが発生しています。ネットに書き込まれた投稿は「デジタルタトゥー」といわれ、一度掲載されると完全に削除するのは困難です。このような嫌がらせやいじめは、学校に通わなくなる原因になってしまいます。

自分の将来に漠然とした不安がある

高校2年生になると、文系か理系のどちらかを選択してクラス分けを行う学校があります。選択時にまだ自分の将来に対して真剣に向き合えず、先のことを深く考えずに周りの友達に合わせて文系か理系か選んでしまう子供がいます。そして、勉強が進むにつれて「自分はこの選択で良かったのだろうか……」といった不安な気持ちが生まれることがあります。

なかには自分の得意分野とは異なる選択をしてしまい、周りの友達から勉強で取り残される子もいるようです。

この場合、周りとの温度差に苦痛を感じ、学校から逃げる形で不登校になってしまう可能性があります。自分の将来に対して自暴自棄になっている子供には、親が一番の理解者であることを伝えてあげましょう。親の対応が求められる場面なので、子供の気持ちを理解して接してあげることが大切です。

大人や社会に嫌気がさしている

高校2年生は思春期で多感な時期ということもあり、理由もなく大人や社会に対して無性に腹が立ち、反抗的な態度になる子供がいます。

親に対してはもちろん、学校の先生に対してイライラをぶつける子もいます。学校には校則があり、それに応じて高校生活を送らなければいけません。校則は高校生からすると自由を奪われているようで、反抗したくなる子もいて、「息苦しい学校にいるくらいなら行かないほうが良い」といった考えに至り、最終的に不登校になってしまいます。家庭でも親に対する反抗がひどく、うまくコミュニケーションを取れないケースがあるようです。

高校3年生で不登校になる原因

高校3年生になると、子供は嫌でも自分の将来と向き合わなければいけません。進路選択で大きなストレスを抱える高校生が多くなります。高校3年生で不登校になる原因には、おもに進路や受験関連が挙げられます。

  • ・進路が決まらず虚しさを感じている
  • ・受験のプレッシャーを感じている

それぞれの原因を詳しく見ていきましょう。

進路が決まらず虚しさを感じている

高校2年生までは勉強をがんばりつつ友達と楽しい高校生活を送れていても、高校3年生になると急に自分の将来と向き合わなければいけなくなります。「自分は将来何をしたいのか」「大学に進学するのか、就職するのか」など考えなければいけない重要な時期なのです。

将来の目標や夢が明確にある子であれば、悩むことなく自分の進路を決められるでしょう。しかし、将来の目標や夢が明確にない場合は、自分がどのような選択をすれば良いのかわからず、ただただ不安な気持ちにさいなまれる子がいます。

人によっては「自分はダメな人間だ…」と自分自身を責めて落ち込むこともあるでしょう。このような場合は、学校に行くたびに敗北感を感じ、徐々に学校に行かなくなる可能性があります。

受験のプレッシャーを感じている

進路で専門学校や短大、大学への進学を選択した場合、受験に対して大きなプレッシャーを抱えることになります。特に大学受験のプレッシャーは極めて大きいでしょう。「ここで失敗すると学歴で就職に悪い影響を与えてしまい、自分の人生は終わる」といった偏った考え方をする子も少なくありません。

そのため、模試の結果で一喜一憂したり健康を害して情緒不安定になったりなど、心身ともに不安定になる子が出てくるでしょう。努力して勉強しても良い結果を残せないと、「どうせ勉強しても落ちる」「もう勉強したくない」などと自暴自棄になりがちです。

このようにして、勉強から離れたい気持ちから学校に行くのが嫌になり、不登校になってしまいます。この時期は無理に勉強することを押し付けず、子供の気持ちに寄り添い、蓄積されたストレスを発散できるような対応が必要でしょう。親の対応次第ではまた勉強の意欲を取り戻し、将来に向けて進んでくれるはずです。

上記で学年別の不登校になる原因を解説しましたが、このほかにも家庭環境の変化や、部活動やクラブの不適応は学年に関係なく不登校になる原因として多くあげられています。「うちの家庭は大丈夫」などと考えず、家庭環境が変わった場合は落ち着くまで注意してみる、部活動やクラブで何か困っている様子はないかなどに気を付けましょう。

不登校になった高校生への適切な対応

前述したように、高校生の子供はさまざまな要因で、不登校になる可能性があります。子供の気持ちや状況を理解し、それに応じた適切な対応をすれば、子供の学校へ行きたくない気持ちが緩和されることもあります。不登校になった高校生への適切な対応は、以下のとおりです。

  • ・無理やり学校に行かせない
  • ・不登校の理由を詮索しない
  • ・親の態度や行動に一貫性を持たせる
  • ・子供の気持ちを尊重する
  • ・子供に家庭教師を提案する
  • ・スクールカウンセラーや不登校支援団体へ相談する
  • ・保健室登校やリモートを提案する

無理やり学校に行かせない

子供が高校に行きたくない様子があるときに、無理やり登校させるのは逆効果です。むしろ学校を休んでも良いことを伝えましょう。不登校になる子供は、学校を休むのは良くないと頭では理解しつつも、精神的にはつらいと感じています。

このような場面で親から休んでも良いといわれると、子供は気持ちが一気に楽になるものです。また、「親は自分の味方をしてくれる」と思えるので、学校の悩みを打ち明けてくれることもあるでしょう。親子の会話の中から、不登校の問題を改善するヒントを得られるかもしれません。

不登校の理由を詮索しない

子供が学校に行かない理由を話したくないときには、親は待つことも必要です。無理やり聞き出そうとすれば、余計に反発されて冷静な話し合いができない状況になりかねません。加えて、「わかってくれない」と子供が心を閉ざしてしまい、本人の孤独感を強めたり、その後の関係修復に時間がかかってしまったりすることもあります。

子供の不登校を親が心配するのは当然のことです。子供が相談したいと思えば、自分から不登校の原因を話してくるはずです。気持ちが切り替わるまで時間は必要かもしれませんが、子供自身が話をしたいと思えるまで待ってあげましょう。子供が話しをしてきたときは、親目線で判断せず、子供の心情に共感的・受容的な傾聴が理想です。

「言いづらいことを話してくれてありがとう」「大切な気持ちを教えてくれてありがとう」といった言葉掛けなどで、子供を尊重する姿勢を伝えてあげると良いでしょう。

親の態度や行動に一貫性を持たせる

急に親の態度や行動が変わると、子供は親の変化に振り回されてしまい、不登校から抜け出せなくことがあります。また、態度や行動が変わる相手のことを信頼できず、子供は親に相談しなくなります。その結果、不登校改善が遅れてしまうケースもあるようです。

子供に接するときには、親の態度や行動に一貫性を持たせることを意識しましょう。態度や行動に一貫性を持たせれば、親への信頼が増し、自分から不登校の悩みを打ち明けてくれる可能性があります。

子供の気持ちを尊重する

不登校になったあとは、部屋に閉じこもって1日中ゲームをしたり漫画を読んだりする子も多いです。そのような子供の様子を見ていると「毎日何やってるの?」と否定したくなるでしょう。

しかし、子供によっては、ゲームや漫画でストレスを解消している可能性があります。子供の気持ちを尊重して、しばらくのあいだはやりたいことを思う存分やらせてあげることが大切です。気持ちが落ち着いてから話し合いの時間を設けてみるのが良いでしょう。

子供に家庭教師を提案する

学校の成績や大学受験に対する不安で不登校になっているのであれば、子供に家庭教師を提案してみましょう。家庭教師から教わることで勉強への理解を深められ、成績が上がる可能性があります。また、「できる」「わかる」という自信が、安心感や自己肯定感に繋がり、学校の授業参加にも前向きな気持ちを持てるようになる場合もあるでしょう。

近年は実際に自宅に訪問してもらうだけでなく、オンラインで指導してくれるサービスもあり、パソコンやタブレットのビデオ電話機能を利用して指導を受けられます。近くに人がいると緊張する子供には、オンライン家庭教師を提案してみましょう。

スクールカウンセラーや不登校支援団体に相談する

スクールカウンセラーや不登校支援団体に相談するのもひとつの方法です。高校生は多感な時期なので、家庭では対処しきれないことも多々あるでしょう。

家族でも先生でもない、第三者の専門家だからこそ話せることがあるかもしれません。一方で、「カウンセリング」に重みを感じ、嫌がる場合もあります。子供が乗り気でない場合は、まずは親だけが相談に出向いてみると良いでしょう。

保健室登校やリモートでの授業参加を提案する

教室には行けないけれど別室なら登校できるという場合は、保健室登校や別室登校を学校に相談し、対応可能であれば子供に提案してみましょう。

また、学校には行けないけれど授業は受けたいという場合は、学校によってリモートで授業を受けられることがあります。特に私立高校ではリモート授業の設備が整っているところが多いです。

他校への転校も有力な選択肢のひとつ

不登校の改善策として、通っている学校への復帰以外に、他校へ転校することも有力な選択肢のひとつです。学校が変われば人間関係や学習環境が変わるため、転校をきっかけに学校に通えるようになる可能性があります。

転校先には全日制高校をはじめ、定時制高校通信制高校などがあり、子供の生活スタイルに応じて最適な高校を選べるようになりました。通信制高校の場合は、自宅学習と通学の比率を選べる学校や、不登校支援をしている学校も増えているので、それぞれの特徴を理解して、子供に適した高校を選択しましょう。

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