不登校の期間は人それぞれ!回復のステップや見極めのポイントを紹介
公開日:2021年09月09日 更新日:2021年09月09日
不登校は短い期間で終わる人もいれば、回復までに長い時間がかかる人もいます。自分の子供が不登校になったとき、いつまでこの状況が続くのかと悩む親も多いでしょう。 回復に向けたステップとそれぞれの特徴を知ることで、不登校からの回復に関する理解が深まります。今回は、不登校からの回復に要する時間や回復過程などをみていきましょう。
不登校に関する概要
自分の子供が不登校であるかを判断するには、文部科学省による定義を知る必要があります。まずはその定義に照らし合わせ、不登校であるかどうかを見極めましょう。不登校はどのようなものなのか、定義と回復に要する期間についてみていきます。
不登校の定義
文部科学省における不登校の定義は「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるため 年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの」です。
これは文部科学省が「学校基本調査」を実施するためにつくった定義と言えます。 「年間30日以上の欠席」は、継続的な欠席だけではなく、断続的な欠席も対象です。 年間で30日以上、病気や経済的理由でない欠席をすると不登校と判断されるのです。
文部科学省による2019年度の調査では、小、中学生合わせて約18万人を超える不登校児が存在するという結果が出ています。不登校の人数は前年より増加しており、学校における大きな問題のひとつとして取り上げられています。
参考:不登校 / 登校拒否 | e-ヘルスネット(厚生労働省):小中不登校18万人 過去最多、7年連続増―文科省・問題行動調査:時事ドットコム
不登校からの回復に要する期間
不登校から回復するのに必要な期間は一般的に「3ヵ月~1年」といわれています。しかしこれはあくまで目安の期間です。 子供が不登校になった要因や本人の回復力などによって、回復にかかる時間に差があります。
3ヵ月もかからないうちに学校復帰ができる子供もいれば、1年経っても学校復帰できない子供もいるのです。 またすべての子供が回復過程をスムーズに進んでいくとは限りません。徐々に回復している兆しがあっても、何らかのきっかけで状況が逆戻りしてしまうこともあります。
不登校からの回復にかかる時間は、人それぞれ違いがあることをまずは親が認識しておきましょう。
不登校から回復に至るまでの4ステップ
不登校から回復に至るまでの過程には「混乱期」「安定期」「転換期」「回復期」の4つのステップがあります。それぞれのステップの特徴を理解すると、自分の子供がどのステップにいるのかを把握しやすくなるでしょう。各ステップの特徴を紹介します。
1.学校に行かなくなる「混乱期」
「混乱期」は学校への登校を渋り不登校へ移行する時期で、その期間は2~3ヵ月ほどです。子供は何らかの要因によって急に学校に足が向かなくなる場合があります。
この混乱期に親が不適切な対応をすると、不登校が長引く可能性があるのです。子供の特徴的な行動としては自室にひきこもったり、昼夜関係なくゲームやインターネットなどに没頭したりすることが挙げられます。
これらは自分と友人などを比べ、罪悪感から逃れるための行動であるケースが多いです。表面的には怠けているように見えますが、子供なりの理由があります。
混乱期は子供と親のいずれも「これからどうしていけば良いのか」とパニックに陥っている状態であり、その焦りから親は子供をきつく叱責しがちです。しかし、その言葉に追い詰められた子供は、親に対して暴力を振るったり、無理難題を突き付けたりします。
2.抵抗が収まる「安定期」
「安定期」のステップに入ると、混乱期に見られた抵抗が収まり始めます。親の焦りも落ち着き、学校へ行かせるための無理な声掛けをしなくなる頃とも言えるでしょう。
そうなれば子供も抵抗する必要がなくなり、自然と落ち着きを取り戻すのです。部屋に閉じこもっていた子供の場合は、安定期に入れば自ら家族のいる居間に出られるようになります。
ただし、安定期はまだ外出をするには早い段階であり、自宅以外の外の世界に対しては強い不安を抱いている可能性もあるでしょう。落ち着きを見せる安定期をチャンスと感じ、親が「外に出てみたらどうか」といった無理な声掛けをするのはおすすめしません。
安定期から次のステップに進むには、長い時間がかかります。親は焦らず、子供のペースに合わせて見守るようにしましょう。
3.外出や登校の意思を表す「転換期」
「転換期」は子供の口から「外出をしたい」「学校に行きたい」という言葉が出てくる時期です。親とのコミュニケーションも変化し、日々のニュースや何気ない会話が弾むようになる頃で、親は子供からの話には耳を傾け、共感する姿勢を持つことが大切です。
転換期に入れば子供は親のメッセージも受け取れる状態にあるため、「私はこう思う」といった、親からの意見も少しずつ伝えてみてください。ただし転換期の期間も人それぞれです。
スムーズに次のステップへ移行できるよう、親は子供との丁寧なコミュニケーションを心がけましょう。
4.自ら行動を起こす「回復期」
「回復期」のステップに入った子供は、具体的な目標や夢を持ち、自ら行動を起こします。転換期に比べてさらに行動的になり、不登校からの回復の兆しが随所に見られる時期です。
具体的には買い物や散歩で外出をしたり、自ら勉強に取り組んだりといった前向きな行動が見られます。この時、親は子供に対してあまり干渉せず、子供の意見や行動を尊重してあげてください。
必要なときに適宜アドバイスをする程度にとどめ、子供の自立を促しましょう。回復期は今までに比べて自立への行動が進み、やがては不登校から回復するのです。
各ステップを見極める際の3つのポイント
不登校から回復に至るまでの4ステップにおいて、子供がどのステップにあるかを見極めるにはいくつかのポイントがあります。「今はこの段階だ」と断定するのは難しいですが、日々の様子やポイントをおさえることで、子供の状況を整理しやすくなります。ここでは3つのポイントについてみていきましょう。
子供の言葉や行動をよく見る
1つ目のポイントは「子供の言葉や行動をよく見る」ことです。日々のコミュニケーションから子供の様子をしっかり見るようにしましょう。
不登校が始まってまもなくは、コミュニケーションを拒否する子供が多く、会話が難しいケースが多い傾向にあります。しかし会話をしなくても、日々のちょっとしたコミュニケーションを重ねることが大切です。
まずはあいさつを交わすことから始めると良いでしょう。子供の表情や声色、行動をよく観察し、子供の変化を見逃さないようにしましょう。
各ステップの特徴が出ない場合もあることを知っておく
2つ目のポイントは「各ステップの特徴が出ない場合もあることを知っておく」ことです。先に紹介した4つのステップの特徴が表れない子供もいます。
なぜなら子供は親に対して心配をかけまいと、特徴になる行動を隠そうとする場合があるからです。よって子供のすべての行動を、回復過程の特徴に当てはめるのは難しいと言えます。
回復過程の特徴だけに捉われず、親にしか気づくことのできない子供の変化を察知することが重要です。
判断に迷ったら前のステップであると認識
3つ目のポイントは「判断に迷ったら前のステップであると認識」することです。子供の様子を見ていると、元気な日と落ち込む日を繰り返している場合があります。これは子供がまだ完全に回復しているわけではなく、一進一退の状態と言えるでしょう。
このときに回復期だと思いこんで親が接すると、子供の準備ができておらず、状況が逆戻りすることもあります。このような場合は回復期ではなく、その前段階と言えます。子供がどのステップにあるのか判断に迷ったら、前の段階だと認識しましょう。
不登校の回復期は長い時間をかけて徐々に進むものです。親はそのことを念頭に置き、回復へのステップはゆっくり進むものだと強く認識してください。
このように回復に関する各ステップは必ず特徴だけで判断できるものではなく、子供自身の状況を見て確認するものです。親はそのことを心得ておくと、焦らずに子供と向き合えるでしょう。
不登校の回復期に見られる5つの特徴
不登校の回復期に差し掛かるとさまざまな特徴がみられます。自ら外の世界へ出たいと気持ちを語ったり、将来について考えたりできるようになるのです。ここでは、回復期の子供がみせる5つの特徴について紹介します。
自ら話すことが増えてくる
1つ目の特徴は「自ら話すことが増えてくる」ことです。周囲の人に対し、自分の考えやニュースなどの話題を自然と話せるようになります。
不登校の初期段階にある子供は、抵抗感や無気力感から親や周囲の友達との会話を拒絶する場合が多いです。しかし回復期に入ると抵抗感や無気力感が和らぎ、自ら会話をしたり、人の話に耳を傾ける余裕が出てきたりします。
親や周りの人は、子供の負担にならない程度にコミュニケーションをとり、関係性を改めていくと良いでしょう。
外出への抵抗感が薄れる
2つ目の特徴は「外出への抵抗感が薄れる」ことです。自ら行動したいという意欲をもって、外出する機会が増えていきます。 転換期の子供は外の世界に出ることに抵抗感があり、外出を拒否するケースが多いでしょう。しかし回復期には「散歩くらいなら外に出てもよいだろう」と、外への抵抗感が減り、徐々に自ら外出できるようになります。
外出に対して前向きに考えられるのは、回復期にある子供の特徴と言えるでしょう。ただし急に外出の頻度を多くすると疲れが出てしまい、精神的にも負担になりかねません。あくまでも子供主体で、徐々に外に出るように促しましょう。
学校や友達への興味が湧いてくる
3つ目の特徴は「学校や友達への興味が湧いてくる」ことです。回復期に入った子供は、徐々に気持ちの余裕ができます。 今まで考えたくないと思っていた学校や友達のことを自然と考えるようになり、興味がでてくるのです。
「どんな勉強をしているのか」「仲の良かった友達は何をしているのか」といったように周りの状況が気になり始めます。 これらがきっかけとなり、復学することもあるのです。大人は「早く学校に行ってもらいたい」と焦りがちですが、回復期になればおのずと子供は自ら学校について考え始めます。親は焦らず、子供からの発信を待ちましょう。
暇と感じる時間が増える
4つ目の特徴は「暇と感じる時間が増える」ことです。回復期になり気持ちの余裕と行動への欲求が出てくると、今までの生活に退屈さを感じるようになります。
例えば、回復期以前は逃げ場としてやっていたゲームを暇つぶしのために行うようになります。また子供自ら、親に対して暇を訴えるケースもあるでしょう。
ちょっとした家事の手伝いを頼んだり、親と出かける機会をつくったりするなど、少しずつ過ごし方を提案してみてください。
自ら勉強に取り組む
5つ目は「自ら勉強に取り組む」ことです。回復期には自らの将来や進路のことを考え「そろそろ勉強しないといけない」と焦りを感じるようになります。
そのため勉強にも意欲的に取り組む様子が見られるでしょう。これまでとは異なる勉強をする子供の様子を見ると、どうしても親は「もうすぐ学校に行けるのでは」と思ってしまいがちです。
しかし回復期はまだ助走のタイミングであり、学校に再登校できる状態とは限りません。子供自身が次にどのような一歩を選択するかを見守りましょう。
回復期になると、子供は心の余裕と行動力を持てるようになります。自分の将来を考え、自立する準備をする期間と言えるでしょう。親は回復期の特徴をおさえ、子供の自立を手助けするのが大切です。
子供に合った選択肢を用意しよう
不登校からの回復過程には、大きく分けて4つのステップがあるとお伝えしました。ただし各ステップにおける期間や見られる特徴も人それぞれです。すぐに回復できる子供もいれば、ゆっくりと回復する子供もいます。
「これぐらいの時間が経てば学校に復帰できる」と期待するのではなく、子供の今の状況に焦点を当てて、その時々に適した接し方が必要です。また不登校になる前に通っていた学校に復学するだけが不登校の解消ではありません。
フリースクールや通信制高校、専門学校 などへの転入も選択肢のひとつです。環境を変えることで、新たな未来へのステップを踏むことができる場合もあります。子供に寄り添いながら、親も一緒に不登校からの回復を目指しましょう。