不登校の子供はどんな過ごし方をしている?日常生活の例と勉強の工夫
公開日:2021年09月13日 更新日:2021年09月13日
子供が不登校になると、仕事などで外出しなくてはならない保護者は、子供の家での過ごし方が気になるものです。実際にどんな過ごし方をしているのか、勉強させるべきかどうかなど、子供のことを思うほど悩み、不安になることもあるでしょう。 この記事では、不登校の子供に多い過ごし方の例から、保護者の対応のやり方や勉強方法のバリエーションを紹介します。
不登校の子供にありがちな過ごし方
学校に行くときは、朝の一定の時間までに起きて準備し、遅刻しない時間に家を出る必要があります。学校では時間割で受ける授業が決まっているため、好きな科目も嫌いな科目も、ある意味で強制的に受けなくてはなりません。
子供にとっては「時間を守る」「好き嫌いがあってもやるべきことをやる」という、将来の仕事に応用できる習慣を身につける、またはその練習をしているともいえるでしょう。
一方で不登校の子供は、このような「決まったやるべきこと」を避け、1日を自由に過ごすことができます。学校に行きたくない理由に悩み、学力や成績に対する不安を何とか解消できないかと試行錯誤しつつ、好きなことをして過ごすことが多いようです。
具体的にいうと、テレビやビデオ、動画を見たり、漫画を読んだり、テレビゲームやスマホゲームをしたりと、学校生活とはかなり違った過ごし方をしています。これは学校や勉強から逃れたい気持ちの表れという場合もあるでしょう。
ただ問題なのは、昼夜逆転など「生活習慣の乱れ」や、勉強していないことによる学力不足が、学校生活に戻る際の障害になり得ることです。
とはいえ、子供に勉強や規則的な生活習慣を強制することはできません。大切なのは、子供の今のつらさを和らげ、自分と自信を取り戻すことです。そのためには、不登校の子供の過ごし方を、保護者は不登校の改善のための要素のひとつと考える必要があります。
不登校の子供の過ごし方のポイント
不登校を改善するには、まず子供にとって「学校に行かない」理由や悩み、不安を和らげたり解消したりすることが先決です。そのために保護者は、次の4つのポイントをしっかり抑える必要があるでしょう。
すでに生活習慣が乱れ、勉強せずにいたとしても、やはり大切なのは「これからどうするか」です。現実をしっかり受け止め、どのように子供の悩みや不安を和らげるか、不登校を改善できるかを考えましょう。
まずはエネルギーを回復させることが優先
不登校は、「学校に行かなくては」という気持ちと「学校に行きたくない」というまったく逆の気持ちを無理やり押さえつけ、我慢できなくなって起きてしまう現象です。我慢している間は出口のない迷路で、ずっと歩き続けているようなもの。体力も精神力も使い果たし、まさにやる気というエネルギーが尽きてしまっている状態といえます。
そんなとき子供に必要なのは、尽きつつあるエネルギーの回復です。何事でも挑戦するときはエネルギーが欠かせません。まずエネルギーを回復し、生活習慣の改善や勉強がスムーズにできるようしっかり備えましょう。
「勉強しなさい」はやめる
子供がいずれ社会で仕事をするためには、少なからず勉強が必要なことは確かです。しかし、それは子供もわかっているはず。ただそれでも自信がなかったり、やる気になれなかったりといった理由があるから勉強を避けているのかもしれません。
そんなとき子供に「勉強しなさい」と無理に言っても「そんなことわかってる」と反発されるだけでしょう。関係が悪化してさらに勉強から遠ざかってしまい、保護者の思惑とは逆効果になる可能性があります。
大切なのは、子供が「勉強したい」と思えるまでに自分を取り戻すことです。そのためにも今の不安や悩みを少しでも和らげ、エネルギー回復を助けるよう努めましょう。
自分のやりたいことを見つけることが重要
例えばあるゲームでは、さまざまな色や形のブロックを組み合わせて、ゲームの中に自分だけのオリジナルな世界をつくることができます。このゲームの人気のポイントは、作ったゲームのステージやオブジェクトを他のプレイヤーに見てもらえることです。
ある不登校の子供は、このゲームでつくった家や服飾といったオブジェクトの「デザイン」がほかのプレイヤーに好評となり、結果としてインテリアデザイナーという仕事に興味を持ち始めました。家族も「まさかゲームがきっかけになるなんて」と感じたようです。
何か好きなこと、やりたいことがあると、人間はそれを基盤にして将来が見えてくることがあります。不登校の子供が「好きなこと、やりたいこと」を見つけたら、それが自信となって不登校の改善につながる可能性は高いでしょう。
保護者はこれまでの経験や持っている情報網を活かし、子供とコミュニケーションをとる中で興味があるものや、好きなものを把握し、可能性を広げる手助けができます。子供のやりたいことを見つけることは、不登校の改善にも大いに役立つ重要なポイントなのです。
コミュニケーションのとり方を学ばせる
学校に行っていれば友だちや先生との日々のやりとりの中でコミュニケーションの方法を学ぶことができるでしょう。
しかし、不登校では日中1人で過ごす時間が長く、他者とのコミュニケーションの量が圧倒的に少なくなるため、コミュニケーションをとることを避けがちです。
そう考えると、保護者は子供にとって数少ないコミュニケーションの相手だといえます。例えば「おはよう」「おやすみなさい」というあいさつや、帰宅したら必ず「ただいま」と声かけするといったルーティンを設けるなど、積極的に接するよう努めましょう。
身の回りにあった面白いことや変わったことを話すだけでも、子供にとっては貴重な学びになります。子供が嫌がっていないかどうかに気をつけながら、保護者から適度に声かけするのが理想です。
不登校の子供にできる過ごし方の5つの例
日中、家で好きなことをやっているように見えても、子供はどうしても「このままではいけないのではないか」と感じているかもしれません。やはり自分の成長や、自分が役立っていることを感じていなくては、充実感はなかなか得られないものです。
子供が自信を取り戻すために、毎日の過ごし方を少し変えてみるという方法があります。ここでは、勉強以外の5つの例を紹介し、その期待できる効果を考えます。
1.好きなことや得意なことをして過ごす
ただ毎日、その日に思い立ったことを何となくやっていても、充実感や達成感はなかなか得られません。そこでおすすめしたいのは、好きなことや得意なことに目標を立てて取り組んでみることです。具体的には次のような例で表せます。
- ・本を読む:特に好きな本を図書館などを利用し読む計画を立てて読み進め、感想などを記録する
- ・絵を描く:週ごとに描く題材を決めて、期日までに描き上げる(誰かに見せることを目標にするのもおすすめ)
- ・プログラミングを学ぶ:テキストや動画などにあるプログラミングを再現し、自分なりの工夫をしてオリジナルのプログラムを書く
好きや得意なことであれば、やってみたいことや知りたいことはきっとあるはずです。PCや書籍を通して徹底的に調べ、まとめて保護者がわかるように教えてもらうようにすると、まとめ方や説明のやり方を工夫したり、伝え方を考えたりといった勉強にもなります。
2.家の中で決まった役割を果たす
家の中で子供に役割を与えるということも重要です。学校から離れると役割を担うという機会が減少するため、家の中のことで役割を担えるように工夫をしましょう。役割を担うというと難しく感じるかもしれませんが、家事など家のお手伝いも十分な役割です。
お手伝いは下記のような簡単なものから始めるようにしましょう。
- ・昼食に使った食器はすべて自分で洗う
- ・午後3時ごろに洗濯物をとりこんでたたむ
- ・毎日夕方5時までに湯船を洗い、お湯を張る など
決まったことをしっかりこなしていくと、どれほど簡単なことでも「できた」という自信が得られます。保護者は「いつもありがとう」という感謝の言葉で応え、子供の自信が定着するようサポートしましょう。
3.友だちと遊んで過ごす
他者とのコミュニケーションが極端に少ない不登校では、子供が友だちと遊ぶことは歓迎すべきことだといえます。もちろん、子供だけでの夜間の外出や不正行為は避けなくてはなりませんが、そうでなければ子供の「遊びたい」という気持ちを良い機会ととらえ、快く送り出すとよいでしょう。
得意なことがあれば、部活動に参加するのもおすすめします。ただ、授業を受けずに部活動だけ参加するとなると、学校や部活動の顧問、担任の先生の理解が必要です。学校へは参加する前に相談しておくとよいでしょう。
4.ボランティアや習い事に参加して過ごす
学校にはいきたくなくても、それ以外のコミュニティには意外なほど参加のハードルが低い場合があります。例えば地域の清掃活動や廃品回収のボランティア、得意な絵や書道、将棋や囲碁などの習い事を始めるのもおすすめです。
学校以外のコミュニティでは年齢もタイプも異なる人々に多く触れることになります。その中で「学校以外の広い世界」を感じたり、出会ったことのないような人の話を聞いたりといった今までにない刺激を受けることもあるはずです。
参加後は、保護者は根掘り葉掘り聞き出すのではなく、子供が話したいことがまとまるまで待つとよいでしょう。 学校にはいきたくなくても、それ以外のコミュニティには意外なほど参加のハードルが低い場合があります。例えば地域の清掃活動や廃品回収のボランティア、得意な絵や書道、将棋や囲碁などの習い事を始めるのもおすすめです。
学校以外のコミュニティでは年齢もタイプも異なる人々に多く触れることになります。その中で「学校以外の広い世界」を感じたり、出会ったことのないような人の話を聞いたりといった今までにない刺激を受けることもあるはずです。
参加後は、保護者は根掘り葉掘り聞き出すのではなく、子供が話したいことがまとまるまで待つとよいでしょう。
5.キャンプなどで自然に触れる機会をつくる
毎日家の中で過ごし、いつもの環境だけ目にしていると、視野は限られがちです。そんなときは思い切って野外に出て、自然に触れるのも良い刺激になります。
今は夏だけでなく、冬でもキャンプできる施設があり、季節ごとの自然が感じられる場所も豊富です。特に草木や昆虫、動物好きな子供にはたまらない体験になるかもしれません。新しい出会いや体験は、きっと子供の視野を広げてくれるはずです。
勉強をするという過ごし方もある
不登校の子供は、やはり勉強が「できるようになりたい」と思っています。とはいえ、自信を失っていたり、勉強につらい思い出があるとなかなか始められず、またそんな自分に悩むといったループに陥っていれば、勉強を始めたり続けたりするのは簡単ではないでしょう。
しかし、保護者は子供がいつ「勉強したい」と言い出してもいいように、しっかり備えておきたいものです。ここでは、不登校の子供が勉強をして過ごすときの方法を紹介します。
学校からもらったプリントやドリルを使う
学校からもらったプリントやドリルがあれば、簡単なのはそれを使って勉強するという方法です。しかし、授業を受けていないため難しく、理解できない可能性があります。その場合は少し前のプリントやドリルに戻って取り組んでみましょう。
ただし、プリントは特に、わからないときの解答や解説がないものがほとんどです。しっかり理解するには少し高いハードルかもしれません。
塾や家庭教師で勉強を見てもらう
しっかり学力をつけたいなら、やはり教えるプロに頼むのが一番です。家庭教師なら子供と相性のいい先生を選ぶことができ、マンツーマンで子供の理解度に合わせて学ぶことができるため不登校の子供にもおすすめできます。
塾は、近所だと同級生が通っていることで「行きたくなくなる」かもしれません。費用や送り迎えの手間が負担にならない程度で、同級生のいない自宅から少し遠めの塾がおすすめです。中にはマンツーマンで専属の先生に教えてもらえる塾もあります。どのような塾があるか、一度調べてみるとよいでしょう。
フリースクールを利用する
不登校の子供の学校、家の次にあたる「第三の居場所」として、フリースクールを利用するという方法もおすすめです。フリースクールは施設ごとに教育方針がかなり異なるため、勉強したいなら学力重視の施設を選ぶようにしましょう。
ただ、フリースクールはかかる費用もさまざまです。通うための交通費や利用料なども考慮する必要があります。
自学に適した通信教材を使う
自宅にWi-Fi環境があり、子供が使えるタブレットやパソコンがあるなら、通信教材を使うという方法があります。月額料金は安く、動画で授業を閲覧できるため、テキストとはまた違った効果が得られるでしょう。
通信教材には次のようなものがあります。
教材名 | 提供企業 | 税込利用料金 | そのほかの特徴 |
---|---|---|---|
スマイルゼミ | ジャストシステム | 月額3,278円〜 | 小中一貫で学び直しが可能 |
スタディサプリ | リクルート | 月額1,815円〜 | 予習復習から定期テスト対策までカバー |
進研ゼミ中学講座 | ベネッセ | 月額6,570円〜 | 担任制でモチベーションがアップ |
ご覧のとおり、料金も幅広く、教材の内容にもかなり違いがあります。選ぶときは、内容を詳しく確認するようにしましょう。
図書館を利用する
読書が好きだったり、家とは違った環境で勉強をしたのいのであれば、図書館を利用するのも良いでしょう。休館日以外の日中は、空調も効いているので快適に勉強でき、合間には読みたい本を読んで気分を変えることもできます。
ただし、平日の日中に利用する場合は、保護者からあらかじめ職員に事情を伝えておく必要があるでしょう。場合によっては学校へ確認されることも考えられるので、トラブルにならないよう周囲の協力を得る必要があります。
不登校が改善できる過ごし方も盛り込もう
不登校の子供の多くは、日中好きなことをして過ごしていますが、悩んでいないわけでは決してありません。学校に行ったほうがいい、勉強したほうがいいことは十分わかっていても、生活をうまく改善できず、それがさらに悩みとなっていく悩みループに陥っていることがほとんどです。
そんなときは今の過ごし方を、できることから変えてみると改善の可能性が出てきます。好きなことに目標を設けてとことんやりこんだり、野外の自然に触れたりするのもおすすめです。勉強が苦手なら、保護者が得意なことを勉強にうまく誘導する方法もあります。
不登校の子供の多くは、今の状況を「何とかしなくては」と感じているはずです。保護者は、子供がいつ生活習慣の改善や勉強をしたいと言い出してもよいよう、しっかり備えておきましょう。