学校に行きたくないときはどうすればいい?中高生の不登校への向き合い方と対処法
公開日:2017年08月28日 更新日:2023年09月22日
「学校に行きたくない」と言って登校を渋る子供は年々増える傾向にあります。ある日突然、子供が学校に行きたくないと言う可能性は十分にあるでしょう。 そのときに子供への対応や対処法を誤ると、心に傷を残してしまうかもしれないため、正しい向き合い方をしたいものです。 この記事では、学校に行きたくないと思う子供やその保護者へ向けて、学校に行きたくない理由と向き合い方、具体的な対処法を解説します。
学校に行きたくない理由と向き合い方
学校に行きたくない理由は、子供によってさまざまです。しかし、それぞれの理由はいくつかの傾向に分類することができます。
とりわけ中高生に多い理由には、以下のようなものがあります。
- 人間関係のストレス
- 校風に馴染めない
- 学習面でついていけない
- 家庭環境の変化
- 進路の不安
- 体調不良
それぞれについて詳細に解説します。
人間関係のストレス
学校で人間関係のストレスを抱え、学校に行きたくないと感じてしまう子供はたくさんいます。同級生の輪に馴染めない、先輩・後輩と何らかのトラブルがある、あるいは先生との信頼関係がうまく築けないというケースも考えられるでしょう。
文部科学省が発表している2021年(令和3年)度の調査※によると、中学校の不登校の要因で2番目に多いのが「いじめを除く友人関係をめぐる問題」でした。
人間関係のトラブルは先生に理解を求めることで解決できれば一番良いですが、中高生ともなれば先生が介入しても解決しないことがあります。また、子供自身に何があったか話してもらおうとしても、素直に話してくれないことや、人間関係以外の複合的な要因が重なり、子供自身が整理できていない可能性もあるでしょう。
家庭としては先生と連絡を取りつつ、子供に対しては常に味方であるという姿勢を崩さないでいたいものです。学校を休む場合も責めるのではなく、共に寄り添い、本人の力を信じて気持ちの回復を待つと良いでしょう。子供が何かを話してくるようであれば、ゆっくりと聞いてあげる時間を取り、アドバイスや提言、励ましの言葉を掛けないことが理想的です。アドバイスや提言は、場合によっては現在の状況を否定された気持ちになってしまうので、注意が必要です。
※令和3年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について p.83
校風に馴染めない
具体的なトラブルや人間関係の問題を抱えていなかったとしても、学校の雰囲気や教育方針がストレスになってしまうことがあります。
極端な例ですが、自由に振る舞いたい子供がルールを重んじる学校に入学してしまったり、反対に何ごとも品行方正に、静かにこなしたいのに、賑やかで自由な校風だったりすれば、学校に「自分の居場所がない」と感じるのも無理はないでしょう。
少しでも学校を休むことで、子供が「この状況も人生のなかで数年のこと」と納得し、また学校に戻れるようであれば問題はありませんが、状況に応じて転校を検討することも必要になるかもしれません。あるいは、通信教育などで学力を補い、進学のタイミングを待つという手段もあります。大切なのは子供の意志です。さまざまな道を示しながら、子供自身が納得できる道を選びましょう。
学習面でついていけない
学校に行きたくないのは、学習面でついていけていないためかもしれません。成績不振は、子供に大きなストレスを与えます。
学校で過ごす時間のほとんどは授業時間です。ここで先生の言っていることがわからなければ、授業時間はとても長く感じ、子供はつらい気持ちで過ごさなくてはなりません。
周囲との学力差も、子供にとってはストレスです。周囲がわかることを自分はわからないとなると、劣等感にもさいなまれます。そして、こうした感情は友人たちとの間に溝を作ったり、心を閉ざしたりといった人間関係のトラブルに発展することもあるのです。
成績が振るわないタイプの子供であれば、学習面を丁寧にサポートすることで再び登校できることがあります。個別塾などの利用も検討してみましょう。
家庭環境の変化
家庭内の不和や両親の離婚など、家庭環境の変化が心の傷や負担になることがあります。家のなかの空気が緊張していると、本来リラックスできるはずの家での時間においても、子供に精神的ストレスがかかってしまうのです。
学校は他人と交流する場所なので、個人差はありますが疲れが出ます。その疲れを癒す場所であるはずの家でもストレスがかかると、学校へ行くための気力が振り絞れなくなることがあり、学校に行きたくないという気持ちにつながってしまいます。
この場合は、子供が家でリラックスできるよう、家庭環境を整えていくことが大切です。「学校に行きたくない」と話している子供が、学校だけでなく家にも居場所がないと感じているケースがあります。個別の事情や解決の方法はそれぞれの家庭で異なりますが、大人の不機嫌を子供にぶつけることのないよう留意しましょう。子供にとって居心地が良く、安心感の持てる家庭環境づくりを目指してください。
進路の不安
中学校卒業後は高校へ進学する生徒がほとんどですが、進路に不安のある中学生は多く、悩みが大きくなり不登校へつながることがあります。
保護者との意見が合わず悩んでいる子供や、成績や金銭面など何らかの理由で希望の進路をあきらめなくてはならない場合もあるでしょう。そのような悩みは、保護者や学校のサポートで解決できることがあるので、担任や進路指導の先生とよく相談してみましょう。
体調不良
体調不良によって学校へ行けない子供もいるでしょう。精神的な悩みから体にさまざまな症状が出てきてしまいます。厚生労働省では考えられる体の症状を以下のようにあげています。
- 発熱
- 頭痛
- 腹痛
- 吐き気
- 食欲不振
- 全身倦怠感
- めまい
さらに、起立性調節障害も良くみられるケースです。朝に起きられない、起きられても午前中は怠さがあり学校に行けない、という事例があります。
また、体調不良で学校へ行けないことによる、不眠、イライラ、憂うつ感などが出てきてしまうかもしれません。精神的なものだからと片づけてしまわず、病院へ行ったり、相談したりしてみましょう。
不登校は20人に1人
文部科学省の調査※によると、2021年(令和3年)度の中学校の不登校児童生徒は163,442人でした。これは20人に1人の割合です。
不登校生徒数は2013年(平成25年)より毎年増え、2020年(令和2年)から2021年(令和3年)にかけては急増しています。
学校に行きたくないと感じるのは、悪いことや、珍しいことではありません。学校によって、さまざまな環境が用意されていますが、それが自分に合わない場合があり、また合わないと感じている人もたくさんいるということです。子供に無理をさせることなく、柔軟な対応を考える必要があります。
学校に行かないとどうなる?
学校に行きたくないと感じるけれど、学校に行かないと悪いことが起こるのではないかと不安に思っている子供や親は多いでしょう。学校に行かないことで、将来的に以下のようなことが起こる可能性があります。
- 進学・就職で苦労する
- 不安や劣等感を引きずる
このようなケースもありますが、適切な対応を取れば、自分の興味や特技を活かした未来を手に入れることが可能です。それぞれについて詳しく解説します。
それぞれについて詳しく解説します。
進学・就職で苦労する
不登校の場合、進学や就職で苦労をすることがあります。授業を受けていないため学力が低下していたり、履修単位が不足したりで、進級・進学できない、あるいは勉強が遅れてしまう場合があります。
就きたい職業によっては、ある程度の学歴や学力が必要です。今はいいと思っても、数年後になりたいものが見つかったとき、挽回が難しく職業選択の幅が狭まってしまうこともあるでしょう。
中学校は義務教育のため、不登校でも卒業資格を得られますが、自主的に動かなければ高校進学が危ぶまれます。高校の場合は不登校のため卒業資格が得られないこともあり、やはり対策が必要です。また、高校の卒業資格が得られないと、進学だけでなく資格取得にも関わる可能性があります。高校の卒業資格がないと受験できない資格の一例は以下のとおりです。
- 臨床心理士
- 管理栄養士
- 医師
- 獣医師
- 美容師
- 保育士
- 教員資格認定試験 など
しかし通信制高校への転校、高卒認定を取得しての大学進学、専門学校に通うなど、挽回するチャンスもあります。もし今、なりたい職業が漠然とでも思い描けているならば、必要な学歴を調べてみることをおすすめします。
通信制高校の入試に関しては「通信制高校の入学条件と入試の注意点(書類選考と面接)」で詳しく説明しています。
不安や劣等感を引きずる
不登校は、子供本人にとって不安や劣等感といったダメージを感じさせる出来事です。このダメージを将来まで引きずってしまい、社会に出ていくことが怖くなるケースは珍しくありません。学力や学歴とは関係なく就職ができず、そのまま引きこもってしまう場合もあるのです。
不登校の過去を引きずらずに社会生活を送るためには、不登校を経験した自分に自信を持てるようになるのが一番です。
不登校の経験は、同じように不登校を経験した人や、周りとうまくなじめない人など、さまざまな悩みを持つ人に共感できる強みとなります。不登校であった自分を「プラスの経験をした」と受け入れることができれば理想的でしょう。
ほかにも、学校や勉強とは全く関係がなくとも、何らかのスキルを身に付ければ、それが自信へと変わっていくことが多いものです。支援団体などに協力をあおぎ、一歩ずつ焦らずに、自分にできることを見つけていく時間が必要になります。
学校に行きたくないときの対処法
学校に行きたくないときは、まず、なぜ行きたくないのかを考えてみましょう。このとき、本人が話したくない様子を見せたときは、無理に聞き出そうとする必要はありません。親の勝手な判断ではなく、子供自身がどう思っているのかを聞きましょう。あくまで子供の意志を尊重することが第一です。
子供の気持ちや事情を考えたうえで、個々に合った解決方法を模索しましょう。
また、学校に行きたくないときの対処法としては、以下のようなものがあります。
- 周囲に相談する
- 一時的に休む
- 通信制高校へ通うなど環境を変える
- 診察を受ける
- 保健室登校やリモート授業で学ぶ
それぞれについて解説します。
周囲に相談する
まずは学校に行きたくないという気持ちを、親・友達・教師・学校のカウンセラーなどに相談してみてください。とはいえ、周囲に信頼できる人や話したい人がいないときは、不登校の子供を支援してくれる無料の相談先を利用してみましょう。
例えば、厚生労働省では民間と提携して「チャイルドライン」を設置しています。18歳までの人が、16~21時に相談できる窓口で、電話のほかにチャットでも対応してもらえます。まずはホームページを参照してみましょう。
参考:チャイルドライン
また、民間のカウンセリング施設やフリースクールでも、不登校の相談を受け付けているところがたくさんあります。県などの自治体でも、フリースクールと提携して不登校相談会を開催しています。地域のフリースクールや自治体ホームページに案内があるので探してみましょう。
一時的に休む
学校に行きたくないときは、一時的に学校を休むという方法もあります。例えば、学校行事に参加したくない、この授業だけは行きたくないなど、学校に行きたくない原因が短期間で過ぎ去り、解決できる見込みがあるケースで有効です。
しかし、一時的に学校を休んでしまうと、そのあとクラスメイトの視線などが気になって、学校に通いづらくなることもあります。そのまま長期にわたって不登校になってしまう可能性も捨てきれません。
そのような場合、スムーズに復学するには、やはり無理をしないことです。テスト期間など、負担の大きい時期の復学は避けましょう。いきなり学校で一日過ごすのはつらいかもしれません。体調が悪くなったら保健室で過ごすことをあらかじめ先生に話しておくのがおすすめです。
また、復学時に大きな学力の遅れが出ないよう、家庭学習を行っておくことも大切です。通信教育や、市販の問題集などを活用しましょう。
通信制高校へ通うなど環境を変える
学校に行きたくない原因が、部活内など限られた範囲にあるのならば、まずは退部するなど環境を変えてみましょう。ただ部活ではなく、学校やクラス自体が原因であり、今の学校に通うことが困難な場合は、学校を変えるという方法もあります。
通学自体が難しいのであれば、通信制高校という選択肢があります。通信制高校は週何回、年に何回など、決められたときにだけ登校します。卒業に必要な単位はレポートの提出や、定められたテストを受けることで取得し、高校の卒業資格が得られるのです。
通信制高校ではクラスメイトとの交流があまりないように思われがちですが、むしろお互いに不登校などの悩みやつらさを共有できる良き友達となることもあります。
転校は子供にとっても大きな選択です。子供が学校についてどう考えているのか意志を尊重しつつ、将来的な進学や就職も視野に入れながら、柔軟な対応を取りましょう。
診察を受ける
集団生活が苦手である、学校というシステムにどうしても馴染めない、という場合は、何らかの事情が隠れている可能性があります。
例えば、起立性調節障害は自律神経に失調をきたし、循環器系の調節がスムーズにおこなえなくなる病気です。起床時に低血圧、心拍数の異常などがあらわれ、特に朝起きられない、立ちくらみ、疲れやすい、という形で表出しやすくなります。
また、発達障害については近年広く知られるようになってきました。集団生活を送りにくいといったケースだけでなく、発達障害にも複数の種類があり、医師による診断を受けなければ判別はできません。
いずれの場合も、本人の頑張りや気力で解決できる種類のものではありません。一方、投薬で好転する部分もあります。生活のしにくさが医療によって改善する場合があるということを念頭に置き、必要に応じて診察を受けるようにしてください。
保健室登校やリモート授業で学ぶ
教室へ入るのが苦痛だったり、周りの目が気になったりする場合は、保健室登校やリモート授業で学ぶ方法があります。
保健室登校とは、学校には行けるが教室で過ごすことに抵抗がある子供のために、学校にいる時間すべてを保健室で過ごすものです。すべての時間ではなくても、一部の授業を保健室で過ごす方法もあります。
また、最近ではリモートで学べる学校が増えてきました。なるべく学校の授業に遅れをとりたくないという場合は、学校でどのような対応が可能か相談してみましょう。
まとめ
理由はさまざまでも、学校に行きたくないと感じている子供はたくさんいます。今は違っても、いつ、どの子が不登校になってもおかしくない時代に、私たちは生きているのです
不登校の解決方法は、学校に通えるようにすることだけではありません。別の学校に通う、将来を見越して資格の取れる進路を探るなど、さまざまな方法があります。友達、先生、支援団体などを頼りながら、子供自身が自分を尊重できる、柔軟な選択を行いましょう。
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