不登校の将来は大丈夫?起こり得るリスクや進路選択について紹介

不登校が長期化すると、子どもの将来を心配する親も少なくありません。不登校は対応が遅れれば遅れるほど将来における子どもの選択肢も狭まるので、早めの対応が求められます。ただ、不登校でどのようなリスクが起こり得るのか具体的に想像できていない人も多いはずです。 そこで今回は、将来的に不登校の子どもが陥る可能性があるリスクや進路選択について解説します。

不登校の統計からわかる実態

残念ながら、不登校の児童・生徒数は年々増加傾向にあります。令和元年度に文部科学省が算出したデータをもとに不登校の実態を紐解いていきましょう。

不登校が多くなる時期が「中学生」

小中高すべての過程において不登校になる児童・生徒が増えているのが現状です。ただ、不登校の傾向としては、小学生低学年から高学年まで学年が進むにつれて不登校の生徒は増え、中学生でピークを迎えます。

学年で見ると中学3年生の不登校生が最も多く、その数は48,000人を超えるほどです。ただ一方で、高校生になると不登校の割合は減少します。高校で不登校の生徒が減るのは、中途退学や留年するケースが増えるからです。

学年別不登校児童生徒数

不登校経験者の将来に起こり得るリスク

ここからは、子どもの不登校で将来起こり得るリスクを解説します。最悪の事態を想定できれば、親がすべき対策も見えてくるはずです。現実に目を背けず、しっかり確認していきましょう。

就職が困難な場合がある

小学校や中学校で不登校になった場合、高校への進学を拒否する子も多くいます。なぜなら、高校に進学しない選択をすることで悩みから解放されるからです。ただ、高校に進学しないとなると中卒になってしまうため、就職の選択肢が限られてしまう可能性があります。

また、不登校の状態だと家の中で過ごすことも多くなるので、運動不足になる子も少なくありません。その結果、いざ働き始めても体力が追いついていかず仕事を辞めてしまうことも。そうなると、どんどん働く場所は限られて仕事を見つけることが困難になるケースもあります。

うまく人間関係を築けない

学校は勉強する場所であるとともに、家族以外の人と人間関係を構築する場所でもあります。不登校になると周囲と接する機会が極端に減るため、コミュニケーション能力や社会性が育まれないケースも少なくありません。

仕事は上司や同僚と協力しながら業務を進めていくことがほとんどです。そのため、いざ就職して働き始めても周囲の人とうまくコミュニケーションが取れずに孤立状態になる子も多くいます。長期的な不登校は、就職先での人間関係に悩みやすくなるのです。

ニートになる可能性が高い

不登校になると、将来引きこもりになりやすいことがわかっています。ある調査によると成人後に引きこもりになった人のうち、不登校経験者は約半数を超える結果も発表されました。それだけ不登校と引きこもりは相関関係があるのです。

引きこもりになると、仕事にも行かず自宅の自分の部屋に閉じこもる生活を送る人も少なくありません。その結果、社会との関わりを持とうとしないニートになる可能性があるのです。

不安なら通信制高校の進学もあり

小中高における不登校で改善する見込みが感じられない場合は、通信制高校への進学や転入を検討しましょう。通信制高校は、おもに通信教育で学習する高校のことで、不登校などで通学が難しい場合や働きながら勉強したい場合など、さまざまな事情を抱えた人が多く通っています。

日本では少子化が問題視されていますが、通信制高校の在籍者や学校数は年々増えているのが現状です。高校卒業や大学、専門学校の進学を望むなら、通信高校進学の選択肢があることを覚えておきましょう。

通信制高校に進学するメリット

通信制高校について実態がよく分からないと考える人も多いはずです。そこで、不登校の生徒が通信制高校に進学するメリットを紹介します。

自分のペースで勉強できる

通信制高校の最大の特徴は、自分に合ったペースで勉強ができることです。不登校のときは、精神的に不安定な状態が続くので気分にムラがあるときもあります。全日制高校であれば決まった時間に登校する必要があるため、自分の気分に合わせて通うことはできません。

通信制高校であれば、レポート提出や試験など勉強の条件を満たせば、それ以外の時間は自由に過ごすことができます。勉強場所の環境も大きく変えられるので、不登校生徒にとっては気持ちも楽になるはずです。その結果、心に余裕が生まれて勉強も前向きに頑張れるようになります。

教育費が安く時間の融通が効く

通信制高校は全日制高校に比べて費用が安いのが大きなメリットです。通常、公立の全日制高校では、3年間で約130〜140万円ほどかかります。一方、公立の通信制高校の場合は3年間通っても10万円ほどで卒業することができるのです。

教育費を最小限に抑えられるのは、親にとっても嬉しいことでしょう。また費用面だけでなく、時間の融通が効くところも通信制高校の魅力です。勉強以外で空いた時間にアルバイトや習い事をして家族以外の人と関わりを持つ機会を得れば、社会性も十分に身につけられます。

⇒「通信制高校の学費」について詳しく知りたい方はこちら

柔軟に対応できる仕組みが整っている

通信制高校に通う子どもたちの中には、いじめや勉強の遅れなどさまざまな悩みを抱えた人が多くいます。そんな悩みを抱える生徒に対応すべく、通信制高校によってはカウンセラーがいたりレポートをオンライン上で提出できたりするなど、柔軟な仕組みを整える学校も少なくありません。

また、卒業後に就職を希望する生徒には、資格取得体験学習を積極的に行う学校もあります。全日制高校では生徒一人ひとりに合わせたサポートは受けられないことも多いため、柔軟性を求める子どもには通信制高校がおすすめです。

通信制高校はデメリットもある

多くのメリットを備える通信制高校ですが、実はデメリットも存在します。例えば、通信制高校は基本的に自主学習になるため、自分で勉強を進めなければいけません。

時間や行動をすべて自分で管理する必要があるので、子どもが勉強に対して自主性が欠けている場合は通信制高校の勉強方法が合わない可能性も十分に考えられます。全日制高校の勉強の方法とは大きく異なるため、入学や編入を決める前に子どもとしっかり話し合うことが大切です。

⇒「通信制高校のメリット・デメリット」について詳しく知りたい方はこちら

通信制高校以外の選択肢はあるの?

通信制高校のデメリットを踏まえると、「自分の子どもには合わない」と感じることもあるでしょう。そんなときは、通信制高校以外の選択肢も検討してみましょう。

授業時間が異なる「定時制高校」に通う

定時制高校は、全日制高校と同じく毎日学校に通うことになります。ただ、授業開始の時間帯が全日制高校と異なり、昼・夕方・夜からと遅めの時間から授業が開始されるのが特徴です。

また、全日制高校とは異なり1クラスが20人前後の少人数なので、生徒一人ひとりへのサポートも期待できます。入学はもちろん全日制高校からの編入や転入もしやすいため、不登校改善に向けて環境を変える効果的な方法です。

⇒「定時制高校」について詳しく知りたい方はこちら

受験資格になる「高卒認定」の取得

不登校の理由が「学校に行きたくない」というものであれば、通信制高校や定時制高校も難しい可能性があります。そんなときは、高校卒業と同等程度の認定を得られる高等学校卒業程度認定試験(高認)を検討することがおすすめです。高認に受かれば大学や専門学校の受験資格も得られるため、進学する際にも役立ちます。

高認試験は、8月上旬・11月中旬の年2回実施されます。出題形式は、4つの解答から正解を選ぶマークシート方式です。科目は全部で8科目あり、すべて合格しなければいけません。ただ、試験は1度に合格する必要はなく、2回に分けて受けることも可能です。高校に行かなくても高卒と同等程度の認定を受けられる魅力的な試験だといえます。

⇒「高卒認定」について詳しく知りたい方はこちら

別の「全日制高校」に転校する

不登校の再登校は、今通う高校に固執する必要はありません。そのため、別の全日制高校に転校することも検討しましょう。不登校の理由が友達や先生など人間関係によるものであれば、環境の変化は不登校改善のきっかけになります。

転校先で新しい友達ができれば、人間関係の悩みも解消されてより楽しい高校生活を送れるはずです。実際に高校に通うのは子ども本人なので、一度話し合いの場を設けて別の全日制高校への転校を提案してみましょう。

将来が不安なら通信制高校も検討しよう!

子どもが不登校になったら、将来に不安を感じない親はいません。ただ、無理やり高校に行かせてもいずれまた不登校になる可能性があります。そんなときは、今通う高校への再登校にこだわらず通信制高校を検討してみましょう。

自分のペースで勉強できたり柔軟な対応をしてくれたりなど、多くのメリットがあります。ただし、親の判断だけで通信制高校への入学や編入を決めてはいけません。実際に勉強するのは本人なので、子どもの気持ちも十分に配慮してあげることが大切です。